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日本食のメインディッシュ「お米」にはヒ素が多いから危険?
日本人が愛してやまない食品と言えば真っ先に「お米」が頭に浮かびます。和食の中心的な役割も果たしていて、おかずのスペックがしばしば「ご飯がすすむかどうか」で決まったりするあたり、米好きの傾向がくみ取れます。
そんなお米ですが、近年では熱狂的な糖質制限ですっかり目の敵になってまして、「米(白米)は砂糖と同じだ!」みたいな主張すらちらほら見られるわけです。
そして今回のテーマですが、もう一つお米には黒い噂がありまして、
- お米にはヒ素がたくさん入っていて危険!
なんていう問題も挙がっていたり。今回はこの問題について実際はどうなの?という点をあれこれ見ていこうと思います。
お米はヒ素が多い?なるべく減らす工夫とは?玄米と白米で違いは?
まずヒ素とは何ぞや?というところから見ていくと、
ヒ素は、地球上に広く存在する元素です。自然環境中にあるヒ素を完全に避けることは難しく、飲料水や農畜水産物に移行するため、様々な食品には微量のヒ素が含まれています。(#1)
そもそもほとんどの食品にはヒ素が微量に含まれているんですね。例えば野菜や海産物なんかもそれぞれ土、海水の影響でこうした重金属が多少は入ってしまいます。
そしてヒ素が体に溜まると危ない!と言われる理由としては、
この辺りが有名どころ。どれも相関関係ながら、なかなかの信頼度の研究から報告されているんですね。
とはいえ、ほとんどの食品は普通に食べているくらいでは耐容上限量を超えることはない、として「食べても問題ない」とされています。ではお米はどうなのか?というと、2003年に農林水産省が行った調査(#5)では、
こんな感じで、玄米など精製していない種類のほうが多い傾向。これを野菜類と比べると、
この差。どうやらお米は育った土と水の影響を受けやすくて、そこからヒ素など重金属が混じってしまうみたい。恐ろしい..。
ここまでで見ると「お米はヒ素が多く含まれるから危険!」と考えられるんですが、実際はどうなんでしょう?結論から言うと、「ここまでなら食べてもOK!」みたいなハッキリした答えは出せていません。というのも、実際に食べるお米のヒ素を測るのもラボに行かないと難しいですし、種類によってまちまちだから。
一応食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で行った会議(#6)では、
人が一生涯にわたって摂り続けても健康に支障が出ないヒ素の摂取量は週当たり0.015mg/体重kgであると決定された[筆者訳]
このような暫定の結論は出ておりまして、これに沿うとお米も相当食べない限りは普通に問題無さそう。
ただ安心はできないので、現状我々にできるのはなるべく量を減らすことかと。この点で言えばいくらか対処法がありまして、
この辺りは押さえておくとよろしいかと思います。最後の項目は正直、炊飯器を使う場合は難しいかと..。ただ上の二つだけでもある程度ヒ素は落とせるようなので、ここはしっかりやっておいた方が良いですね。
ちなみに恐いもので、
- 洗ったり調理したりする水にヒ素が多く含まれていた場合、これらは逆効果だった!(#8)
なんて報告も上がっておりました。がこの点については、日本の水道水は比較的安全で、ヒ素の混入にも厳しいチェックが入ってるみたい。(#10)ですので調理に使うお水自体が汚染されていた場合は想定しなくてもOKかと思います。
まとめ
- 玄米も重金属の観点から、“食べ過ぎ”はよくないかも、白米とバランスよく散らすとGOOD
- お米のヒ素を減らすにはしっかり炊飯前に洗米しよう
- 他の栄養の事も考えてバランスよく色んな食品を摂ろう(定番)
赤羽(Akabane)
参考文献&引用
#1 農林水産省「食品中のヒ素に関するQ&A」2019年5月4日アクセス。
#2 ,Tapio S1, Grosche B,”Arsenic in the aetiology of cancer.“,Mutat Res. 2006 Jun;612(3):215-46.
#3 Moon KA, Oberoi S, Barchowsky A, Chen Y, Guallar E, Nachman KE, Rahman M, Sohel N, D’Ippoliti D, Wade TJ, James KA, Farzan SF, Karagas MR, Ahsan H, Navas-Acien A,”A dose-response meta-analysis of chronic arsenic exposure and incident cardiovascular disease.“,Int J Epidemiol. 2017 Dec 1;46(6):1924-1939.
#4 Rodríguez-Barranco M, Lacasaña M, Aguilar-Garduño C, Alguacil J, Gil F, González-Alzaga B, Rojas-García A.,”Association of arsenic, cadmium and manganese exposure with neurodevelopment and behavioural disorders in children: a systematic review and meta-analysis.“,Sci Total Environ. 2013 Jun 1;454-455:562-77.
#5 農林水産省「食品に含まれるヒ素の実態調査」2019年5月4日アクセス。
#6 WHO,”Evaluations of the Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives (JECFA)“,accessed on 4th May 2019.
#7 Sun GX, Williams PN, Carey AM, Zhu YG, Deacon C, Raab A, Feldmann J, Islam RM, Meharg AA.,”Inorganic arsenic in rice bran and its products are an order of magnitude higher than in bulk grain.“,Environ Sci Technol. 2008 Oct 1;42(19):7542-6.
#8 Sengupta MK, Hossain MA, Mukherjee A, Ahamed S, Das B, Nayak B, Pal A, Chakraborti D.,”Arsenic burden of cooked rice: Traditional and modern methods.“,Food Chem Toxicol. 2006 Nov;44(11):1823-9. Epub 2006 Jun 28.
#9 ,Naito S, Matsumoto E, Shindoh K, Nishimura T.”Effects of polishing, cooking, and storing on total arsenic and arsenic species concentrations in rice cultivated in Japan.“,Food Chem. 2015 Feb 1;168:294-301.
#10 厚生労働省「水質基準項目と基準値(51項目)」2019年5月4日アクセス。