赤羽(Akabane)
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運動中はしっかり水分補給をしないと脳の認知機能が一時的に低下するかも
早速ですが、この件について参考になりそうな研究結果を覗いてみましょう。
運動による熱ストレスは認知機能を一時低下させる?水分補給はしっかりしよう
これは2018年にジョージア工科大学が発表した研究(#1)で、13名の健康な男女(平均23.6歳)を対象に、まず彼らを次の3グループに分けました。
- 運動+水分補給:ランニングマシンで150分運動する(45分歩き15分休むサイクル)+運動中は水分補給あり
- 運動+水分補給なし:ランニングマシンで150分運動する(45分歩き15分休むサイクル)+運動中一切水分補給なし
- 運動なし:何もしない
体内の水分量などを正確に把握するために、事前に浸透圧濃度などを入念にチェックしつつ、運動をするグループでは直前にカロリーバーと水150mlが与えられました。
で運動後45分の休憩をはさんで、fMRIスキャンを開始、その場でリズムに合わせて指をタップする視覚運動のテストをして正確さと反応速度を見ていったようです。
するとこの実験の結果、こんなことが分かりました。
- 視覚運動テストの正確さは運動+水分補給なしグループで最も低かった(何もしない場合が最も高かった)
- 反応速度にはグループ間で大差なし
- 水分補給の有無で脳の構造が変わっていた
まとめると、運動中に水分補給をしていても認知テストの成績は下がったけれど、水分補給をしないともっと下がったんですね。
脳のスキャンによって具体的にわかったことは、水分補給をしなかった場合で逆に脳全体の活動が高まっていたり、タスクとは関係ない部位が活性化していたりといったことでした。
他にも、運動の熱ストレスによって、脳のあらゆる部位のサイズが血漿の浸透圧濃度と相互に関係しあって変化していたようですが、この辺りは認知の低下とは関係がなかった様子。影響を与えていたのは水分補給そのもので、熱ストレスによる認知の低下が水分補給で軽減される、という見解です。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、今回の研究はサンプル数が少ないです。十分な統計的パワーを発揮できていないうえに、fMRIを取った参加者はたった10名でした。
またタスクの結果は個人差もあって、水分補給の有無にほとんど影響を受けない参加者も居たみたい。この辺りは、各人の注意力のリソースなども関係してくるんでは?と考えられます。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 運動の熱ストレスで脳の認知機能(運動パフォーマンスに関わる部分)は一時低下する
- 伴って脳の構造や血漿の浸透圧などが変化していた
- 運動中に水分補給をしていれば、この低下が軽減できるかもしれない
こんな感じでしょうか。運動中のこまめな水分補給は、パフォーマンスを落とさないためにも大事みたいですね。
赤羽(Akabane)
参考文献&引用
# Wittbrodt MT, Sawka MN, Mizelle JC. Exercise-heat stress with and without water replacement alters brain structures and impairs visuomotor performance. Physiol Rep. 2018 Aug;6(16):e13805.