赤羽(Akabane)
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哲学家セネカの名言「人は教えることによって、もっともよく学ぶ」は科学的にも正しかったみたい。
早速ですが、この件について面白い研究を覗いてみましょう。
ペンシルバニア大学の研究で判明!たった8分のアドバイスでも学業の成績が上がるらしい
これは2019年にペンシルバニア大学が発表したRCT(#1)で、アメリカの7つの高校から1982名の学生を対象に、まず彼らを次のような群に分けました。
- アドバイザー:8分を一度きり、オンライン上で下級生からの質問にアドバイスをする機会が与えられ、その後励ましのレターも書く
- 比較グループ:共通のタスクをやるが、アドバイスの件はやらない
シンプルですね。で具体的には、「先延ばし癖はどうしたら治る?」「勉強するのに最適な場所は?」みたいな悩みに対してアドバイスをしてあげたようです。
そして判断基準としては、彼らが各自選択していたクラスと数学のクラスの成績を見ていったようで、これは学生たちの頑張りがテストよりも成績に反映されやすいと考えたからみたい。
そしてこの実験の結果、彼らの成績はこんな感じになりました。
- アドバイザーは選択クラス、数学のどちらの成績も高かった
- この効果は第3期の成績だったが、第4期でもまだ続いていた(数学のみ有意な効果)
まとめると、下級生に色々アドバイスしてあげたほうがその後の成績がしばらく高くなったんですね。しかもこうした傾向は、性別や経済状況、人種、前回の成績に関係なく一貫して見られたようです。
ではどうしてこんなことが起こったのでしょう?恐らく要因の一つに「認知的不協和」があると思われます。認知的不協和は、自分の一貫性を保とうとする心理的な動きで、今回で言えば無意識にこんな心境の変化があったんだと考えられます。
後輩にアドバイスをしている人間が、勉強もせずにぐーたらしていたらオカシイ!こんな不協和を落ち着かせるために、勉強を頑張る方向で協和を保とうとする、と。
注意点・まとめ
全体的にサンプル数も十分でデザインも良さげですが、注意点としてメカニズムはまだハッキリしていません。
上では「認知的不協和」を挙げましたが、他にもアドバイスで自信がつく!とか、教えながら自分自身の学習の見通しが立つ!とか色々可能性はあります。この部分を深堀りできていないのは当研究の課題でしょうか。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- アドバイスは何かしらの力で自身の成績をも高める
- たった8分下級生にアドバイスするだけでも、その後成績が有意に高まった
- 哲学家セネカの名言「人は教えることによって、最もよく学ぶ」は正しかった
こんな感じでしょうか。個人的に、セネカの名言はどれも的を射た内容で好きですね。
赤羽(Akabane)
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#1 Lauren Eskreis-Winkler, Katherine L. Milkman, Dena M. Gromet, and Angela L. Duckworth. A large-scale field experiment shows giving advice improves academic outcomes for the advisor. PNAS July 23, 2019 116 (30) 14808-14810.