赤羽(Akabane)
目次
印象の悪い笑顔を見るとかえってストレスになる
早速ですが、参考になるのが2018年にウィスコンシン大学マジソン校が発表した研究(#1)で、そもそも笑顔にも色んな種類があるよね!という面白い内容でした。
2018年発表論文「プレゼンに対する評価として3種類の笑顔を向けてみる」
これは90名の男子学生を対象に行われた実験で、心理学の世界では定番の「社会的ストレステスト」を行ったもの。
具体的には、彼らに事前準備なしで3つのトピックについてプレゼンをしてもらって、それを評価者として研究チームの仲間がSkype(スカイプ)を通して見ている、といった設定です。(当然内通者であることは内緒)
がしかし、実際にはカメラの向こうの評価者は事前に録りためていたただの録画。バレないようにちょこちょこ動きを入れたり、時間になったらビデオを止める仕草を見せていたみたいですね。
でプレゼンを終えると、参加者は評価者によるリアクションを見たんですが、ここで3パターンの笑顔が用意されていました。
- 「報酬的」笑顔:プレゼンに対する高評価としての笑顔
- 「交友的」笑顔:脅威ではなく親しみや共通点を感じてますよという友好的な笑顔
- 「優越的」笑顔:どこか認めていない、見下したような笑顔
これに加えて、顔を掻いたり瞬きをするといった「笑わない」パターンも用意して、1トピックにつき笑顔と笑わないパターンで2つの反応を見せたようです。つまり3トピックで計6パターンのリアクションがあった、と。
で実験前後や終了20~30分後に、唾液中のストレスホルモンや心拍変動などストレスにまつわる数値を測定したところ、、次のようなことがわかりました。
- 「優越的」笑顔を見た参加者は他の笑顔より唾液中のコルチゾール濃度が高かった
- 「報酬的」と「交友的」笑顔の場合はプレゼンの30分後にはコルチゾール濃度が元に戻っていたが、「優越的」笑顔の場合は高いままだった
どうやら「優越的」な笑顔、つまり見ていて感じの悪い笑顔はかえって相手のストレスを高める(コルチゾール濃度が上昇する)ことが分かりました。
そして更に詳しく見ていくと、笑顔のパターンによって正確なストレス反応をしているかどうか?が参加者によって違っていたみたいで、ここには彼らの高周波心拍変動が関係していたようです。
高周波心拍変動は体のストレス耐性や回復度などを正確に示す数値で、これが高いと笑顔に対する反応もより正確だったみたい。(例:「優越的」笑顔に対してしっかり強いストレスを感じた)
注意点・まとめ
では最後に今回の内容をまとめます。
- 笑顔にも「報酬」「交友」「優越」など意味合いで種類がある
- 評価者が「優越的」な感じの悪い笑顔を見せた場合はかえって参加者のストレス反応が高まった
- 高周波心拍変動が高いと笑顔の意味をより正確に読み取れていた
こんな感じでしょうか。ただ今回の研究は男性限定だったり、参加人数も少ないので、まだまだ追試が必要な段階。今後のもっと強力な研究を待ちましょう。
赤羽(Akabane)
参考文献&引用
#1 Jared D. Martin, Heather C. Abercrombie, Eva Gilboa-Schechtman & Paula M. Niedenthal . Functionally distinct smiles elicit different physiological responses in an evaluative context. Scientific Reportsvolume 8, Article number: 3558 (2018).