「ポジティブ思考」や「引き寄せの法則」の落とし穴!願っていれば夢は叶うのか?

ポジティブ思考!夢は願い続ければ引き寄せられる!のオンパレード

今回は自己啓発業界について少々。自己啓発といえば!の「ポジティブ思考」や「引き寄せの法則」なんかは未だに自己啓発セミナーやその手の本に書かれていたりしますが、これらは本当に正しいのでしょうか?

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例えばその代表格がこの本。自己啓発本好きならきっと誰もが知っているナポレオン・ヒル。『思考は現実化する』は世界的大ヒットを記録した一冊ですね。この本自体は悪くないのですが、内容を都合よく解釈した人が今の「引き寄せの法則」を形づくってしまったのかもしれませんね。

ここまでで、「流石に『引き寄せの法則』はあり得ないけど、『ポジティブ思考』なら別に問題ないんじゃない?」と思う方もいるかもしれません。ですがここ数年の研究では、こちらも時と場合によってむしろ悪影響かもしれない説が濃厚です。

手術後をポジティブに考えた患者ほど回復が遅れた

例えば、ニューヨーク大学のガブリエルエッティンゲン博士らの研究(#1)によると、ポジティブ思考が場合によっては目標達成の邪魔になることが分かりました。研究は大きく4つの実験に分かれて、以下のような参加者を対象にしています。

ガブリエルエッティンゲン WOOP 目標達成

全部紹介すると長いので、今回は4つ目だけ紹介します。お尻の手術をこれから行う患者たちに術後の将来について思い描いてもらう実験です。

  • 51人の患者、平均65.7歳
  • 「術後にどのくらい歩けるようになってる?」など将来へのポジティブ度を測定
  • 未完成のシナリオ(患者と似た境遇)の主人公を自分に当てはめて考えて完成させてもらう
  • そのシナリオがポジティブ/ネガティブなものかを点数をつけてもらう

簡単に言うと患者のポジティブ度を色々な方法で測定したということですね。例えば「友達と散歩に出かける患者」というシナリオに対して、次のように完成させた患者はポジティブ度が高いという扱いみたいです。

あぁ、なんて幸せなの。歩きながらでも友達に追いつくのも楽になったし、みんなも私の回復ぶりには驚いているわ…[筆者訳]

お尻の手術後で普通なら歩くのもままならない姿がイメージできますが、この患者は怒涛の、畳みかけるようなスーパーポジティブです(笑) こんな風に術後の回復を楽観的に見る人、その逆で慎重に捉える人、でその後を比べたようです。

すると結果としては、次のようになりました。

結果
  • ポジティブに楽観視していた人は術後の回復がよくなかった
  • 現実的に捉えていた人のほうが術後の回復も早かった

これは、ポジティブになりすぎるあまり術後の自分の状態も「すぐ回復するだろう」と楽観視してしまうからなのだとか。結果、輝かしい未来を先に堪能して満足していまい、努力を怠るんだと考えられています。一方で現実的に考えていた患者は、術後もしっかりリハビリなどに励んだことで、回復も早まったようです。

今回は4つ目の実験だけの紹介でしたが、実は全体を通して、空想派ポジティブ思考の人たちは目標に向けて努力を怠る傾向が見られました。

例えば「就活中の学生」ではもらえた内定数が少なかったり、調査時の収入が低い傾向にあったり。「異性に恋をしている学生」では、結局大してアタックしてなかったり、デートに持ち込めてなかったり。

他にはダイエットを目指す女性を対象にした実験(#2)でも、同様に空想派ポジティブ思考の女性は顕著にダイエットに失敗したという報告もあったり。

赤羽(Akabane)

まとめると、ポジティブ思考で「大した努力をしなくても明るい未来が待ってる」といった考え方は虚しいものになってしまうかも。論文内の表現を借りればそれは将来への”期待”ではなくただの”空想”。一方で、ポジティブであろうと、その過程でどんな努力が必要なのかをしっかり把握してるタイプは術後もしっかりリハビリをしてすぐに回復できました。ポジティブもさじ加減が必要だということですね。

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参考文献&引用

#1 Gabriele Oettingen,Doris Mayer,”The Motivating Function of Thinking About the Future:Expectations Versus Fantasies“,Journal of Personality and Social Psychology Copyright,Vol.83,No.5,pp1198–1212,2002.

#2 Gabriele Oettingen ,Thomas A. Wadden,”Expectation, fantasy, and weight loss: Is the impact of positive thinking always positive?“,Cognitive Therapy and Research,Vol.15,No.2,pp 167–175,1991.