鬼才「サヴァン症候群」は天才ではなかった?!

2019年5月3日人生を上手に生き抜く技術, 人間心理, 考察編

 サヴァン症候群とは

geralt / Pixabay

サヴァン症候群(Savant syndrome)とは、知的障害や発達障害などのある者のうち、ごく特定の分野に限って優れた能力を発揮する者の症状を指す。(#)

サヴァン症候群と言えば「飛びぬけた超能力を持つ」みたいな感じでTVでもたまに取り上げられてるのを見かけます。有名どころではカレンダーの日付記憶や絵描き。こうした特定の分野で飛びぬけた能力をみせてしばしば人々を驚かせます。

西尾維新氏の「戯言シリーズ」でも登場

西尾維新 戯言シリーズ クビキリサイクル サヴァン症候群 玖渚友 いーちゃん
西尾維新小説初期の「戯言シリーズ」の一作目。

厨二心くすぐられる西尾維新氏の初期のシリーズ小説にもやっぱり登場する、サヴァン症候群。この表紙の女の子がそのサヴァン症候群でヒロインの玖渚友(くなぎさとも)。自分のことを「僕様ちゃん」と呼んじゃう不思議な僕っ子、可愛い。

 

案の定、彼女も“天才技術屋”としてパソコン三台を目の前に独自の配列に改造したキーボードをカタカタいわせていたり。この作品には”天才”と称される人間がたくさん登場しますが、やはり”サヴァン症候群”もその例に漏れず、ということなのでしょうね。

数々の”サヴァン症候群”研究論文によると…

研究のイメージ
Pexels / Pixabay

といったところで、今回はサヴァン症候群の人々を対象とした研究を幾つか並べてみたいと思います。

 

まずロンドン大学の教授らのカレンダー計算のメカニズムに関する研究(#1)から。この研究では、
 

  • 2人のサヴァン症候群患者と1人の成人男性を被験者として、
  • 計算テスト、カレンダー計算で両者を比べる

 
このようにシンプルにサヴァン症候群患者の計算力を調べたんですね。その結果分かったことは、

 

  • カレンダー計算では、基本的には遠くの日付になる程、計算→回答までの時間が長くなった。
  • 計算中の脳に異常は見当たらなかった。(成人男性と比較しても違いナシ)
  • 最初の計算テストではみんな正答率が95%以上で、サヴァン症候群の2人より成人男性のほうが回答スピードは速かった。
  • 他の研究でも計算中に脳内で活性化が観測された部位(頭頂葉、前運動皮質、補足運動野、左下側頭皮質など)において同様に活動が観測された。

 

このような内容でした。つまりサヴァン症候群のカレンダー計算能力は脳科学的には異常なしということ。
 
 
計算テストの結果を見ると、通常とそれほど差はなかったり、むしろ回答スピードでは負けていたり。カレンダー計算が速い=普通の計算も速いとは限らないんですね。

 

この研究のまとめとしては、
 

  • サヴァン症候群のカレンダー計算能力は練習と勉強の賜物だと考えられる

 
とのことでした。これを踏まえて次を見ていきます。

お次は自閉症と患者の才能に関する大規模研究(#2)を紹介。この研究では計12852人の双子の中から、その片割れをランダムに選出して最終的に6426人の8歳児を対象としたようです。
 
 
そしてその親に子どもに関するアンケートを取ったんですね。具体的には、子どもが目を見張る特殊な能力を持っているか、持っていれば同年代や年上の子と比べてどの程度か、みたいな質問。すると結果は、

 

  • 自閉症の症状の傾向をみせる子どもの多くが、その親のアンケートによって「特殊な能力を持ち合わせた子です」と評価された子どもだった
  • 更にこうした子どもの多くが社会的なスキル(コミュニケーションなど)に困難を抱えていた。

 

こんな感じに。そしてもっと詳しく調べたところ、

 

  • 特殊な能力を持つとされる子のほうがそうでない子よりも規則的、反復的な行動や深く狭い興味関心を示す傾向にあった

 

こんな結果が。この結果について研究チームは次のように述べています。

特殊な能力(Special Gift)”を見せる子とそうでない子を分ける大きな要因は、詳細部への注目と、少ない程度に同じことへのこだわりや特別な関心のある物事を繰り返しやること

また、面白いことに次のようなことも報告されています。

 

  • 社会的、コミュニケーション能力の欠如は、特殊な能力を持つと評価されたの子の間では、そうでない子と比べて軽減された。

 

つまり、彼らの”特殊な能力”、あるいは”細部への注目、こだわり”が自閉症スペクトラムやその傾向がある人々の社会的適合を助ける役割を担っている可能性が出てきたことになります。どんな因果関係なのかはまだ明らかになっておらず、確証もまだできませんが・・。
 
 
結論として、研究チームは次のようにまとめています。

私たちの見解は、サヴァン症候群のような飛びぬけた才能は、診断上の分類に関係なく、「細部へのこだわり、注目」といった認知スタイルと繋がっているだろうというものだ。

「一万時間の法則」アンダース・エリクソン教授も・・

アンダース・エリクソン 一万時間の法則 超一流になるのは才能か努力か?
邦題のダサさが気になりますが、内容はとても濃いです。

最後にこの本。8章に天才やサヴァン症候群に触れたページがありまして、その中で1960年代に心理学者のバーネット・アディス教授が発表した論文が紹介されています。
 
 
この研究では、カレンダー計算において突出した能力を持つ双子と普通の大学院生を対象に、カレンダー計算で対決させるというもの。ちなみにこの双子のスペックは、
 

  • IQは60~70程度
  • 西暦132470年までのあらゆる日付の曜日を平均6秒ほどで計算できた

 
ザっとこんな感じ。そしてアディス教授は、この双子の計算方法を大学院生に教え込んで習得させようとしたようです。すると結果は驚くことに、

 

  • わずか16回のレッスンで、大学院生は二組の双子と同じくらい速く曜日を計算できるようになった

 

との結末になった様子。一応、上で紹介した論文研究とも一致はしております。とは言え現状でもまだまだ「サヴァン症候群」についてはわからないことが多いので、今後の研究に期待ですね。

参考文献&引用

#アンダース・エリクソン、ロバート・プール著、土方奈美訳『超一流になるのは才能か努力か?』文藝春秋、2016年。

#西尾維新著『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』講談社、2002年。

#1 Richard Cowan,Chris Frith”Do calendrical savants use calculation to answer date questions? A functional magnetic resonance imaging study“,Philosophical Transactions of the Royal Society,Vol.364,pp1417–1424,2009.

#2 Francesca Happe,Pedro Vital,”What aspects of autism predispose to talent?“,Philosophical Transactions of the Royal Society,Vol.364,pp1369-1375,2009.

興味があればこちらも・・
# Wallace GL,Happe F,Giedd JN,A case study of a multiply talented savant with an autism spectrum disorder: neuropsychological functioning and brain morphometry,Philosophical transactions of the Royal Society of London.Series B,Biological sciences,Vol.27,No.1522,pp1425-1432,2009.

#サヴァン症候群の定義については
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4#%E8%91%97%E5%90%8D%E4%BA%BA(2018年2月4日アクセス)