ブドウ糖で口をすすぐだけでやる気が回復する?! 糖分を摂らずにすり減った意志力を取り戻せるかも。

赤羽(Akabane)

今回は「意志力と糖分」のちょっと面白いお話です。

意志力(ウィルパワー)の消耗には糖質だ!とは言いますが..

まず意志力(ウィルパワー)」についてですが、人間の自制心は筋肉のようなもので、一日の中で使えば使うほどすり減っていくんだという考え方ですね。こうした意志力の研究は世界中で盛んにおこなわれていて、代表的なものでは、「WILLPOWER 意志力の科学」(#2)

「やってのける~意志力を使わずに自分を動かす~」(#1)

という本があります。例えば「やってのける」の中では次のように言われています。

最近の研究で、自制心が体内の血糖量に影響されることがわかっています。意志の力は血液内の糖分量によって変わることがあるのです。自制心を消耗する行動を取った後、血糖値が有意なレベルで減少することを多くの実験が示しています。
(中略)
ある実験では、砂糖の入ったレモネード味のクールエイドを飲むと、前の課題で自制心を消耗した人が、正確さと粘り強さが求められる課題で、自制心をまったく消耗していない人と同等の結果を出しました。

こんな風に意志力は糖分で回復するんだぞ、という研究は数多いのですが、だからと言って摂りすぎてしまっては健康によろしくありません。何とも悩ましいですね。

糖分で口をすすぐだけで意志力は回復するのか?

そんな中、2012年に面白い論文(#3)が発表されていました。これは糖分で口をすすぐだけで意志力は回復するのか?を調べた研究でして、つまり砂糖は一切摂取しないのですね。研究の大まかな内容は以下の通りです。

  • 51人を対象に、以下のグループに分ける
  1. ブドウ糖をしっかり混ぜたレモネードで口をすすぐ
  2. ノンカロリーの甘味料を混ぜたレモネードを口をすすぐ
  • まず意志力を要するタスクに取り組んでもらって意志力をすり減らす
  • 口をすすぎながら意志力を要するテストをやってもらう

と大体こんな流れになります。ここでやったタスクというのは、スクリーンに表示される色んな単語の文字色を答えていくという、なんとも不毛なやつです。さぞかし退屈でしょう…

そして結果は次のようになりました。

結果
  • ブドウ糖レモネードグループのほうがタスクを解くスピードが速かった
  • 全体での回答時間やミス数は大差なし

結果的にブドウ糖で口をすすいだグループでタスクに取り組むスピードが上がりました。口をすすぐだけ(=体内に吸収してない)にも関わらず、どうしてこうなるのでしょう?

ブドウ糖は脳の報酬系に働きかけ、セルフコントロールの消耗を回復させてくれる。と説明されてはいますが、ただのプラシーボ効果である可能性はぬぐい切れず。ただ実際には摂取しなくてよいので、意志力のため!と砂糖を摂りすぎてしまうのを防ぐのにはいい方法かもしれません。

赤羽(Akabane)

今度試してみようかな…(笑) プラシーボ効果も手伝って本当に集中力がアップするかもですね!

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参考文献&引用

#1 ハイディ・グラント・ハルバーソン著、児島修訳『やってのける』大和書房、2013年。

#2 ロイ・バウマイスター、ジョン・ティアニー著、度会圭子訳『WILL POWER 意志力の科学』インターシフト、2013年。

#3 Matthew A. Sanders, Steve D. Shirk, Chris J. Burgin, .,”The Gargle Effect Rinsing the Mouth With Glucose Enhances Self-Control“,Psychological Science,Vol.23,No.12,pp1470-1472,2012.