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γ-アミノ酪酸(GABA)は血液脳関門を通れないから食べても意味なし!はどこまで本当なの?

GABAチョコは意味なし? γ-アミノ酪酸(GABA)は血液脳関門を通れないから食べても効果なし!はどこまで本当なのか?

赤羽(Akabane)

今回はGABAチョコで有名な「神経伝達物質『γ-アミノ酪酸(GABA)』」についてのお話です。

GABAチョコは意味なし?血液脳関門を通れないから食品から摂っても効果ないよ!はどこまで本当なのか?

まずはγ-アミノ酪酸(GABA)についてザックリおさらいしておきましょう。

「γ-アミノ酪酸(GABA)」とは?

今回参考になる2015年のレビュー研究(#1)から一部引用すると、ザっとこんな感じです。

γ-アミノ酪酸(GABA)は人間における主要な抑制系神経伝達物質として機能する。[筆者訳]

抑制系神経伝達物質というのは、簡単に言えば興奮や神経の昂りを鎮めてリラックスさせる役割を持つ神経伝達物質です。実際に最近流行りの「GABAチョコ」でもストレスを軽減!と宣伝していますよね。

でこれが、抑制系と対を成す興奮系という神経伝達回路とバランスを取り合って我々の脳は機能している!といった感じです。

γ-アミノ酪酸(GABA)は血液脳関門を通れない?

しかし問題もあって、「GABAって血液脳関門を通れないから食品から摂っても効果ないよ!」という主張があるんですね。

これはもう結構広まっていて、ご存知の方も多いんではないでしょうか?実際に過去のデータ(#2,#3,#4)を見てみても、GABAは血液脳関門を通過できない、との報告が上がっています。つまり直接食べたところで脳の検問に引っかかって意味がないんだ、と。

この理屈でいくと、GABAチョコは外部からなので意味なし!となりますが、一方で逆の結果を報告する研究(#5,#6,#7)も幾つか出ていて、「いやいや少量なら通過できていたよ!」という結果になっています。これも踏まえると、実は一概に「GABAは血液脳関門を通れない!」とも言い切れないよなぁ..と思ってしまうわけです。

ちなみにこうした結果のバラつきには、以下のような要素が影響している可能性が高いです。

  • 実験の対象にしている動物が研究間で違う(ラット、マウスなど)
  • 実験で「GABA」として使っている物質が研究間で微妙に違う
  • 摂取方法が研究間で違っている(注射、経口など)

また、そもそもこの問題については、ヒトを対象にした研究がないという点も押さえておくとよろしいかと思います。

ではGABAチョコでストレスや気分が改善した!という研究が出ているのは何故?

とここまでで「GABAは血液脳関門を通らないから食品で摂っても意味ないよ!」はまだハッキリと断定できないことが分かりました。

ところが面白いことに、ここ10年ほどの試験では「GABAを外部から摂取したらストレスや気分が善くなった!」という報告が幾つか上がっているんですね。

結果をザっと見てみましょう。

結果
  • 28mgのGABA入りチョコを食べて15分後に数学のタスクをやったところ、比較グループよりも心拍変動の回復が早く、唾液中のストレスホルモン(クロモグラニンA)も有意に減っていた(#8)
  • 50mgのGABA入り飲料を飲んだ参加者は、25mgや0mgの参加者よりも、その後の数学タスクで唾液中のストレスホルモン(コルチゾール、クロモグラニンA) が有意に下がっていて、主観的な疲労度も低かった(#9)

まだまだ研究としては初歩段階であるものの、仮にGABAが血液脳関門を通れないとすると、一体どうやってこのような効果をもたらしているんでしょう?

食品からのGABA摂取で神経抑制効果が得られるメカニズムは?

では最後に、GABAの食品からの摂取でストレス軽減などのリラックス効果が得られるメカニズムについて見ていきましょう。

2015年のレビュー研究(#1)に立ち返ると、GABAが血液脳関門を通れないと仮定するなら次のようなメカニズムが考えられるみたいです。

  • 腸にはGABAの受容体(結びついて効果を発揮させる物質)もたくさんあって、乳酸菌やビフィズス菌などGABAを増やしてくれる腸内細菌も居る。
  • 更に腸は脳と迷走神経で繋がっていて、この回路を通して神経伝達物質などのやり取りができる
  • 腸に届いたGABAが、この回路を通して間接的にリラックス効果をもたらしたのではないか

要は、血液脳関門を通れなくても、GABAが腸の神経システムを介して間接的に抑制神経系に働きかけている可能性がある、と。

実際に、近年ではこの腸と脳の神経の繋がりを指す「腸-脳神経軸(#10)」の存在が明らかになっていて、腸内環境とメンタルヘルスの関わりを報告する研究もちょっとずつ出てきています。

まとめ

では最後に今回の結論をまとめます。

ポイント
  • 脳の抑制系神経伝達物質として働く「γ-アミノ酪酸(GABA)」
  • 脳のバリア「血液脳関門」を通れない!説が強いが逆の報告もある
  • でも実際の試験でGABAの経口摂取でストレス軽減・リラックス効果が確認されている
  • 血液脳関門を通れないとすれば、間接的に腸と脳の神経軸から効いている可能性が高い

こんな感じでしょうか。どっちつかずで申し訳ないですが、GABAチョコなどでどのくらい効果があるのか?はまだハッキリ言えない状況かと思います。

赤羽(Akabane)

結論は、GABAの食品からの摂取についてはまだまだ追加研究が必要そう。ただ「血液脳関門を通れないから意味ない云々…」といったよく見かける主張もそれ程堅い説ではないことが分かりましたね。科学的な確証はまだありませんが、お手軽なので試してみてもいいとは思いますよ。(砂糖の摂りすぎにはご注意を!)

参考文献&引用

#1 Boonstra E, de Kleijn R, Colzato LS, Alkemade A, Forstmann BU, Nieuwenhuis S. Neurotransmitters as food supplements: the effects of GABA on brain and behavior. Front Psychol. 2015 Oct 6;6:1520.

#2 Roberts E., Lowe I. P., Guth L., Jelinek B. (1958). Distribution of γ-aminobutyric acid and other amino acids in nervous tissue of various species. J. Exp. Zool. 138, 313–328.

#3 Knudsen GM, Poulsen HE, Paulson OB. Blood-brain barrier permeability in galactosamine-induced hepatic encephalopathy. No evidence for increased GABA-transport. J Hepatol. 1988 Apr; 6(2):187-92.

#4 Kuriyama K, Sze PY. Blood-brain barrier to H3-gamma-aminobutyric acid in normal and amino oxyacetic acid-treated animals. Neuropharmacology. 1971 Jan; 10(1):103-8.

#5 Frey HH, Löscher W. Cetyl GABA: effect on convulsant thresholds in mice and acute toxicity. Neuropharmacology. 1980 Feb; 19(2):217-20.

#6 Löscher W. Effect of inhibitors of GABA aminotransferase on the metabolism of GABA in brain tissue and synaptosomal fractions. J Neurochem. 1981 Apr; 36(4):1521-7.

#7 Löscher W, Frey HH. Transport of GABA at the blood-CSF interface. J Neurochem. 1982 Apr; 38(4):1072-9.

#8 Nakamura H, Takishima T, Kometani T, Yokogoshi H. Psychological stress-reducing effect of chocolate enriched with gamma-aminobutyric acid (GABA) in humans: assessment of stress using heart rate variability and salivary chromogranin A. Int J Food Sci Nutr. 2009; 60 Suppl 5():106-13.

#9 Kanehira T, Nakamura Y, Nakamura K, Horie K, Horie N, Furugori K, Sauchi Y, Yokogoshi H. Relieving occupational fatigue by consumption of a beverage containing γ-amino butyric acid. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2011; 57(1):9-15.

#10 Megan Clapp, Nadia Aurora, Lindsey Herrera, Manisha Bhatia, Emily Wilen, and Sarah Wakefield. Gut microbiota’s effect on mental health: The gut-brain axis. Clin Pract. 2017 Sep 15; 7(4): 987.