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「信頼ゲーム」にみる、人間関係の信頼
チャップマン大学のバーノン・スミス教授らの研究(#1)によると、人は相手から信頼された時、より多くがそれに報いた信頼的な行動を取ることが分かったようです。
研究チームは、被験者として大学生24名を集め、次の2つのゲームにそれぞれ12名ずつ振り分けました。それぞれのゲームは二人一組なので、ゲーム1と2で6ペアずつできることになりますね。被験者一人につき、ゲームは1プレイです。
一言で言うなら、このゲームは「投資ゲーム」でしょうか。二人のプレイヤーがお金を動かしていくゲームで、ウィンウィンで終われることもあれば、どちらかが得をすることもあります。
ちなみに、このゲームで獲得したお金は実験の後、内密に被験者たちに渡されたようです。それぞれが受け取った額はお互いわからないように工夫したと書かれていました。
ゲーム1 自発的信頼ゲーム
プレイヤー1はまず二つの選択肢が与えられます。
▼プレイヤー2に選択権を託す
後者を選ぶと、今度はプレイヤー2のターンです。
▼(15,30)で自分だけガッポリ得て終了
重要なポイントは、プレイヤー1は2に選択権を託せばもっとたくさんお金を稼げる可能性、裏切られてお金が減る可能性、どちらも持ち合わせている点ですね。なんというジレンマ・・。
ゲーム2 非自発的信頼ゲーム
ゲーム2は上記の1と比べると一つだけ違うところがありますね。
つまり、いきなりプレイヤー2のこの選択からスタートです。
▼(15,30)で自分だけガッポリ得て終了
ゲーム2のポイントは、1と違ってプレイヤー1が後者の選択肢を選ぶことで発する「プレイヤー2さん、あなたの事を信頼してます。任せますね。」のシグナルが無い点です。そのため、プレイヤー2は何もないところから独断で決断を下さなくてはならないのです。
プレイヤー2は(15,30)を選べば自分だけガッポガッポです。実験からの帰り道にはガリガリ君じゃなくてハーゲンダッツを買ってルンルン気分で帰っていくことでしょう。
結果発表だドン!
ゲーム2..プレイヤー2の33%しか(25,25)を選ばなかった。
ここから分かることは以下のようになりそうです。
- ペアの相手から選択権を託してもらった場合(ゲーム➀)、被験者の多くがその信頼行動に報いる形でお互いがウィンウィンになれる選択肢を選んだ。
つまり相手を信頼すれば相手もそれに応じるように信頼してくれやすくなる、ということですね。
この研究の課題
以上を踏まえて、研究チームは次のようなことが課題だとしています。
- プレイヤー1が「2さんを信じよう!」と思ったのか、「あえて下手に出る戦略だぜ」と考えたのか、研究チームもプレイヤー2も真意がわからない。
プレイヤー1の意図がはっきりくみ取れる実験が必要だと結論付けられていますね。
参考文献&引用
#1 Kevin A.Mccabe,Mary L.Ringdon,Vernon L.Smith,”Positive Reciprocity and Intentions in Trust Games“,Journal of Economic Behavior and Organization,2002.