目次
「類似性の法則」
今回紹介する論文と関連した内容で、「類似性の法則」という有名なものがありますね。これは、1961年にテキサス大学のドン・バーン教授らが発表した論文(#1)が元になっています。ざっくりとこういったテーマになります。
これは感覚的にも共感しやすいのではないでしょうか?地方から上京してきて同じ出身の仲間がいたらすぐに意気投合できたり、趣味が合う人とバチバチに語り合ったり。海外に行ってみると”ラテンパーティ”みたいに母国の人間だけの集まりなんかもありましたね。日本でいうところの”県人会”みたいなやつでしょうか。
一応これは”法則”ということで浸透していますが、法則になるまで普遍的な説でもないかと。確かに多くの研究で同じような結論が出ていますが、「相補性」みたいに恋人はお互いを補い合える関係性が良い!という話もあったりするんですね。
詳しくは関西学院大学の教授らの研究(#3)なんかを見てみると”類似性VS相補性”の構図が分かり易いかと思います。
ハーバード大教授らの研究によると・・
ということで本題。参考はハーバード大学が発表した研究(#2)で、同じイベントを一緒に経験すると人は他人に同情しやすくなるのか?を調べたもの。ザっと中身を覗いてみると、
- 69人の被験者を対象にランダムに2つのグループに分けた
- 実験は被験者+サクラ2名の計3名で行われる
- そのうち1名は開始直後に別室へ、もう1名と一緒に音ゲーをプレイする
- 被験者がサクラのうちどちらかにタスクを課すという仕事を与えられる
同期行動グループ…音ゲーを一緒にプレイしたサクラにタスクを課す(35人)
非同期行動グループ…最初に別室へ消えたサクラにタスクを課す(34人)
こんな感じです。要はグループ間での違いは、タスクを与える相手が一緒に音ゲーをプレイしたサクラか、最初に別室へ消えたサクラか?という点のみ。そして被験者らはこの時、
- 別の被験者(サクラ)のタスクは手伝っても大丈夫ですよ。そうすれば彼のタスクは軽くなりますが、そのことは被験者には内緒です
と告げられます。こうして各グループの被験者がサクラのタスクをどれくらい手伝うのかを観察したんですね。すると結果は、
- 被験者は一緒に音ゲーをプレイしたサクラにより「類似性」を感じた。
- 被験者は一緒に音ゲーもどきをプレイしたサクラのほうを多く、長く手伝った(35人中17人 vs 34人中6人)
こんな感じに。まとめると、イベントやアクティビティなどを通じて、同じことを一緒にやった人間に対しては、より類似性を感じて、窮地にいたら同情して助けたくなったんですね。これは面白い。
赤羽(Akabane)
関連記事はこちらをどうぞ
子どもの頃に友達が多いかどうかは関係ない?大人になってからメンタルが安定する人にはこんな特徴があったみたいSNS依存は「ファビング」への第一歩?論文研究から読み解くユーザーの人間心理説得の心理学「スリーパー効果」とは?大規模研究でわかった発動条件や効果が高まるパターン参考文献&引用
#1 ドン・バーン教授の研究は
Byrne D,”Interpersonal attraction and attitude similarity“,Journal of Abnormal Psychology,Vol.62,No.3,pp713-715,1961.
#2 この記事の大元は
Piercarlo Valdesolo,David Desteno,”Synchrony and the Social Tuning of Compassion“Emotion,Vol.11,No.2,pp262-266,2011.
#3 関西学院大学教授らの論文は
中里浩明、井上徹、田中国夫「人格類似性と対人魅力-向性と欲求の次元-」日本心理学雑誌、1975年。