赤羽(Akabane)
目次
心理学では超有名な「シロクマ実験」に学ぶメンタルとの向き合い方
早速実験の中身を覗いてみましょう。
「皮肉過程理論(皮肉なリバウンド効果)」の元になったシロクマ研究
これは1987年に心理学教授ダニエル・ウェグナー氏らが発表した研究(#1)が発端になっていて、そのうちの1つはザっと以下のような内容です。
- 34名の学生を対象に5分間で次のような実験をする
- 「シロクマについて考えてください」と指示するか、「シロクマについて決して考えないでください」と指示をする
- その後5分間を指示の通り過ごしてもらう
そして参加者らを、①最初にシロクマについて考え、次に考えないようにする、②最初にシロクマについて考えないようにし、次に考えるようにする、の2グループに分けて比較したんですね。
するとこんなことが分かりました。
- 最初にシロクマについて考えないようにしたグループは、続く“シロクマについて考える”時間に最もたくさんシロクマについて考えた
つまり、最初に「シロクマについて考えないでください」と禁止されることで、かえってシロクマのことが頭に浮かんでしまうようになったんだと。これをウェグナー教授らは「皮肉過程理論(皮肉なリバウンド効果)」と呼んでいます。
- 「シロクマについて考えちゃダメだ..」と言い聞かせる
- この時点で“シロクマ”というワードが意識に刷り込まれてしまう
- 考えまい!とするほど逆に“シロクマ”というワードが返ってくるようになる
- 無限ループ
何が皮肉かって、考えすぎちゃいけない物事がある時に、逆にソコに意識が向いてしまうんですね。
では考えすぎてはいけないものに直面した時、私たちには成す術はないのでしょうか?この答が研究の続きにありまして、実験2では上記のグループにもう1つのグループを足しました。
- シロクマのことが浮かびそうになったら「赤いフォルクスワーゲン」についてだけ考えるように指示されたグループ
すると、なんとこの赤いフォルクスワーゲンのグループでは皮肉なリバウンドが起こらなかったとのこと。これは面白い結果です。
「シロクマ実験」から得られる教訓
以上を踏まえて、最後にシロクマ実験から学ぶ「私たちのメンタルとの向き合い方」をまとめますと、こんな感じになりましょう。
- 考えすぎちゃいけないことがある時、そこから目を逸らすとかえって気になる
- そんな時は“別のターゲット”を作り、そこだけに意識を集中させる
赤羽(Akabane)
- 前者:「考えたくないことから逃げる」という避ける手段としての後ろ向きな面がある
- 後者:「考え過ぎるべきでないことを考えるくらいならもっと集中すべきモノがある!」という前向きな意味がある
微妙なニュアンスの差ではありますが、ここを押さえておくとかなり差がでるかと思います。
参考文献&引用
#1 Wegner DM, Schneider DJ, Carter SR 3rd, White TL,”Paradoxical effects of thought suppression.“,J Pers Soc Psychol. 1987 Jul;53(1):5-13..