脳への電気刺激で高齢者の衰えたワーキングメモリが若者レベルで若返る!という研究はどこまで信じていいのか?

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脳への電気刺激で高齢者の衰えたワーキングメモリが若者レベルで若返る!ってどこまで本当なの?

脳への電気刺激で高齢者の衰えたワーキングメモリが若者レベルで若返る!という研究はどこまで信じていいのか?

今回は「脳に電気刺激を与えるだけで高齢者の脳が若者並みに若返る?!」というお話です。
 
 
この件について最新の研究が話題になっているので、早速中身を覗いてみましょう。
 

2019年「Nature」の姉妹雑誌に掲載された研究によると..

これは2019年にボストン大学が発表した研究(#1)で、高齢者42名(60~76歳)と若者42名(20~29歳)を対象に、彼らの脳に電気刺激を与えるというもの。
 
 
具体的には、まず参加者の頭部に電気刺激を与えるパッドを取り付けて電気刺激を25分間与え続けます。でこの前後でワーキングメモリの機能はどう変わるか?を見ていました。
 
 
ワーキングメモリの機能を調べるタスクでは、「今表示されているモノはさっき表示されたモノと同じか?」を問うような問題が秒単位に満たない速さで流れていって、情報の一時記憶や取捨選択の力が試されました。
 
 
こうした実験を、高齢者 vs. 若者や、電気信号を与える前後、といった比較で比べていったところ、次のようなことが分かりました。

 

  • 電気刺激前の高齢者のタスク正答率は80%だった
  • 電気刺激前の若者のタスク正答率は90%だった
  • 電気刺激を受けた高齢者のタスク正答率は若者と同等になった

 

なんと電気刺激を与えるだけで、高齢者のワーキングメモリ機能が20代の若者と同レベルまで復活したんですね。
 
 
しかもこの効果は、刺激から50分ほど継続していて、偽の電気刺激を与えた若者グループではワーキングメモリ機能改善は見られなかったようです。
 
 
更に、今回の結果を応用して、研究チームはワーキングメモリ機能を乱すような電気刺激でも実験していましたが、こちらはしっかりタスクの成績を悪化させたみたい。
 

注意点・まとめ

ただしこの実験には注意点もあって、

 

  • 対象の高齢者が元々ワーキングメモリに問題なさそう:今回選ばれた高齢者たち、元々ワーキングメモリ優秀じゃない?という疑問。電気刺激前から80%の正答率だったので、この10%の改善がどのくらいのメリットになるのか分からない
  • 実験期間は短期:実験自体も一日以内の超短期決戦なので、長期的にどんなメリットがあるか?どのくらいのメリットがあるか?は不明

 

この辺りは押さえておくとよろしいかと思います。確かにワーキングメモリ機能改善は見られたけれど、まだまだ追試は必要そうですね。この点は研究チームもしっかり触れていらっしゃいました。

ポイント
  • 脳の別領域間(前頭前野と側頭葉とか)での神経伝達がスムーズにいかないのが高齢者のワーキングメモリ性能低下に関係していそうだ
  • これを整えてあげる電気信号を脳に与えれば高齢者のワーキングメモリ機能が若返るかもしれない
  • ただ長期的な効果の有無やその程度はまだまだ分からない
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赤羽(Akabane)

この分野はあまりマークしていませんでしたが、話題になっていたので取り上げてみました。もっと研究が進んで、電気刺激の介入で記憶や情報処理能力を若返らせることができたら面白いですね。

参考文献&引用

#1 Reinhart RMG, Nguyen JA. Working memory revived in older adults by synchronizing rhythmic brain circuits. Nat Neurosci. 2019 May;22(5):820-827.