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他人に優しく!の利他主義は単なるきれいごとなのか?親切のメリットとは?
今回のテーマは「他人への親切」についてのお話です。
曖昧なテーマではありますが、まず前提として親切な行動の4つの源泉について触れておこうと思います。
- 身内への親切..家族への無条件の愛。
- コミュニティ内の親切..同じ目的や興味を持つ者同士協力し合う関係。
- 互恵的親切..お互いに親切にし合う関係。次会うことが決まっていたり、何かしてもらった時に返す親切だったり。
- 競争的親切..主に自分のステータスを高める目的。この親切には大抵オーディエンスが居る。
親切もざっくりこんなタイプに分けられます。例えば「困ってる知らない人を助ける」という行動でも、
・周りで見ている人から「あの人親切ね」と感心されたい→競争的親切
こんな風に、突き詰めるとタイプが違うなんてことも。親切も奥が深いものです..。
他人への親切はただのきれいごとなのか?科学的に見た見解は..
以上を踏まえて本題ですが、この問題については2018年にオックスフォード大学の教授らが発表した系統的レビュー&メタ分析(#1)が参考になりそうです。
この研究では他人への親切で人は幸せになれるのか?を調べてくれていて、27件の関連する研究から総勢4045名を対象に(平均年齢25歳、男性35%)、彼らが親切な行動を取ったら日ごとに報告しつつ、同時に幸福度を測るアンケートも実施するという内容です。
ちなみにここでいう「親切」は主に2種類に分かれていて、①他人に親切にする、②他人のためにお金を使うというパターンがありました。大半の研究では「誰に親切にするか?」は特に決まってなかったようで、他には友達や見知らぬ人、同僚に対して行ったものもありました。
そしてこうした実験の結果、こんなことが分かったようです。
- 対象の実験の効果を測定してまとめると、他人への親切で自分の幸福度が小~中くらい高まった(δ= 0.28, 95%CI [0.16-0.41], Z= 4.36, p<.001 )
- 性別や年齢、参加者、実験手法、比較対象の条件などは結果に影響してなかった
どうやら他人への親切はある程度人を幸せにしてくれるみたい。0.28という数字がいかほどかと言うと、単純な比較ですがマインドフルネスの幸福度アップ効果に近いレベル。
注意点・まとめ
一方で今回の研究の課題を挙げるとすると、
- 親切の種類がまだ大まかで、細かく調べる必要がある
- 親切にする対象の人の立場に応じた効果の差がわかっていない(知らない人、友達、家族、恋人etc..)
- 各研究の参加者数がちょっと少ない
この辺りは今後の追加研究でアップデートしたいところ。実際にこれらについては研究チームも言及していて、今後はもっと細かい研究が必要だ、とのこと。
赤羽(Akabane)
参考文献&引用
#1 Oliver Scott Curry,Lee A.Rowland,Caspar J.Van Lissa,Sally Zlotowitz ,John McAlaney,Harvey Whitehouse,”Happy to help? A systematic review and meta-analysis of the effects of performing acts of kindness on the well-being of the actor“,Journal of Experimental Social Psychology,Volume 76, May 2018, Pages 320-329.