赤羽(Akabane)
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乳製品は赤肉や加工肉ほど体に悪くはないけど…という微妙な研究結果
乳製品の健康効果については未だに議論が続いていますが、この記事では「乳製品の健康面へのメリットは何と入れ替えるかによるんじゃない?」という可能性を示唆するデータを紹介します。
乳製品の健康メリットは過大評価されている…かも?
2019年にハーバード大学公衆衛生学部が発表した研究(#1)によると、乳製品の摂取量を増やすだけでは早死にリスクを抑える効果はない!とのことでした。
この研究は3つの大規模な調査データから168,153名の女性と49,062名の男性を対象に、乳製品の摂取量と早死にリスクの相関を調べています。
追跡期間は最長32年間で、食事の調査データは4年おきに取られたようです。形式は聞き取り調査で、調査年の昨年を振り返って「どのくらいこの食品を食べましたか?」という感じだった様子。
すると追跡期間中に51,438名(12,143件循環器系疾患、15,120件がん)が亡くなって、ここから以下のようなことがわかりました。
- 乳製品の摂取量が最も多い群は最も少ない群に比べて期間内の総死亡リスクが7%高かった
- 循環器疾患による死亡リスクは2%増、がんによる死亡リスクは5%増だった
- これは家族の循環器疾患・がん既往歴や運動習慣、食生活、喫煙・飲酒など色々な要素を調整した上での結果
ちなみに乳製品の摂取量が最も多かった群は一日当たり平均4.2サービングくらいで、逆に最も少なかった群は一日当たり0.8サービングくらいでした。比較するとかなり乳製品を摂っていることになりますが、どうやら乳製品は早死にのリスクを逆にちょっと高めるかもしれない、と。
また詳しく見てみると、他にもこんなことが分かっています。
- 乳製品の中でも全乳の摂取量が一日0.5サービング増えるごとに循環器疾患に因る死亡リスクが11%、がんに因る死亡リスクが9%増加していた
- 一日1サービングの乳製品を豆・ナッツ類、全粒穀物と置き換えることで早死にリスクが11%下がる
- 一日1サービングの乳製品を赤肉や加工肉と置き換えることで早死にリスクが5%増加する
どうやら乳製品の中でも全乳は摂りすぎるとよろしくないとのこと。また乳製品をどんな食品に置き換えるか?も大事みたいで、豆・ナッツ類や全粒穀物などに置き換えたほうが健康長寿のメリットは大きいみたいですね。
注意点・まとめ
今回の研究では食事の調査がまめに行われていたり、対象者が医療従事者だったので、手法はアンケート調査でしたがデータの質は比較的高かったんではないでしょうか。
ただし注意点もあって、ザッと以下は押さえておくとよろしいかと思います。
- 3つの調査データの対象者に偏りがある:ナースを対象にしたデータが大半で女性が多かったり、人種にも偏りが見られるのでどこまで一般化できるか分からない
- 因果関係は特定できない:観察研究の性質上、乳製品の摂取量が早死にリスクに影響を与えている!という証明にはならない
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 全体的に見ると、乳製品は巷で言われているほど健康的ではないようだ
- 特に全乳は多く摂ると早死にリスクの増加と相関が見られ、健康長寿のメリットを得るならば乳製品は豆・ナッツ類や全粒穀物などと置き換えた方がいいかも
- 今回の研究では、乳製品は赤肉や加工肉ほど健康に悪くはないが、豆・ナッツ類や全粒穀物の方が健康効果は高い!という結果になった
こんな感じでしょうか。乳製品という括りで見ると、健康効果はそうでもないのかも?という可能性が出てきました。
赤羽(Akabane)
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#1 Ming Ding, et al. Associations of dairy intake with risk of mortality in women and men: three prospective cohort studies. BMJ 2019;367:l6204.