赤羽(Akabane)
目次
畏敬の念が強い人はどうして幸せなのか?
まず「畏敬の念って何?」というところをおさらいしておきましょう。
畏敬の念とは?
簡単に言うと、「すごい…」と言葉を失うくらい敬意と感動を覚える感覚です。これから見ていく研究では次のように定義されています。
畏敬の念は驚きや歓喜、悟り、高まり、尊敬、感謝といった気持ちを伴う。[筆者訳](#1)
そして、この「畏敬の念」が強い人ほど幸福度が高い!(#2) という傾向がこれまで確認されています。この点を押さえて本題に入りましょう。
畏敬の念が強い人はどうして幸せなのか?カギは「人生の意味」と「物質主義」
ではどうして畏敬の念が強い人は幸福度が高いんでしょうか?
この問題で参考になるのが、2019年に上海師範大学が発表した研究(#1)で、中国人563名(平均29.14歳、18~61歳)を対象にアンケート調査を行ったもの。
具体的には、彼らに「畏敬の念」「人生の意味」「物質主義度」「主観的な幸福度」を測るアンケートを25分程度で、各々匿名で記入してもらって、これらがお互いどのくらい関係しているのか?を調べたんですね。
するとここから分かったのは、次のような傾向でした。
畏敬の念が強い人ほど…
- やはり主観的幸福度が高かった
- 人生の意味をしっかり見出していた
- 物質主義度が低かった
どうやら畏敬の念が強い人が幸せなのは、「人生の意味」「物質主義度」が関わっていそうだ、と。
ちなみにここでいう「人生の意味」と「物質主義」というのは、どちらも「人生のゴールをどこに追求するか?」という問いに繋がります。ザっと比較すると、
- 人生の意味:心の充足感など、自分の内側に幸せを見出す
- 物質主義:モノやお金など、自分とは外側にある何かに幸せを見出す
こんな感じです。畏敬の念が強いと、人生の意味や幸せは内側、つまり心の充足感などに求めることが多いんだということですね。
「物質主義者は幸福度が低くなっちゃう!」という傾向は過去にも取り上げましたが、これはヘドニックトレッドミル(#3)という現象の仕業でしたね。モノやお金に幸せを見出すと、もっともっと!といつまでも現状に満足できないから、という理由です。
注意点・まとめ
ただし注意点を挙げておくと、
- 本人のみのアンケート調査なので主観が混じる可能性が高い
- 今回の対象は中国の人たちのみ
この辺りは押さえておくとよろしいかと思います。
一応、畏敬の念で時間感覚が長く感じられて幸福度も上がった!みたいな報告(#4)は幾つか上がってはいるものの、人種や年齢等でどのくらい影響が違うのか?まではハッキリ分かっていません。
また今回調べた「幸福度」には、他人に親切にしたりすることで得られる幸福度は含まれなかったみたい。この辺り、幸福度の種類によって結果は変わってくるかもしれませんね。
では以上を踏まえて最後に今回の内容をまとめます。
- 畏敬の念は驚きや歓喜、悟り、高まり、尊敬、感謝が混ざり合ったもの
- 畏敬の念が強いと幸福度が高い傾向にあった
- これには①人生の意味を心の満足度に見出すこと、②物質主義度が低いことが関係していた
こんな感じでしょうか。日頃から「畏敬の念」を意識して暮らしてみると、慌ただしい心もスッと落ち着くかもしれません。
赤羽(Akabane)
関連記事はこちらをどうぞ
物質主義の落とし穴!物を買っても幸せが続かないのは何故?【ヘドニック・トレッドミル】参考文献&引用
#1 Huanhuan Zhao, Heyun Zhang, Yan Xu, Wen He, and Jiamei Lu. Why Are People High in Dispositional Awe Happier? The Roles of Meaning in Life and Materialism. Front Psychol. 2019; 10: 1208.
#2 Lyubomirsky, S. (2001). Why are some people happier than others? The role of cognitive and motivational processes in well-being. Am. Psychol. 56, 239–249.
#3 Jo-AnnTsang,Thomas P.Carpenter,James A.Roberts,Michael B.Frisch,Robert D.Carlisle, Why are materialists less happy? The role of gratitude and need satisfaction in the relationship between materialism and life satisfaction. Personality and Individual Differences,Vol.64,pp62-66,2014.
#4 Rudd M., Vohs K. D., Aaker J. (2012). Awe expands people’s perception of time, alters decision making, and enhances well-being. Psychol. Sci. 23 1130–1136.