心理学の定番「ドアインザフェイス」と「フットインザドア」はどちらのほうが営業やデートに効果的なの?

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心理学実験の定番「ドアインザフェイス」と「フットインザドア」はどちらが営業やデートに効果的?

心理学 定番「ドアインザフェイス」と「フットインザドア」はどちらのほうが営業や交渉に効果的

今回は心理学の定番交渉テクニックについてのお話です。
 
 
まずはザっと「ドアインザフェイス」と「フットインザドア」のおさらいをして、そこから両者について現段階で分かっていることを見ていきましょう。
 
 
既にご存知の方は読み飛ばしても構いません。
 

ドアインザフェイスとフットインザドアとは?違いは?

ドアインザフェイス(DITF)

最初に大きな頼み事をして一旦それを断らせてから、次に本来聞いて欲しかったより小さい頼み事をすると、通りやすくなるというテクニック。
 
ドアインザフェイス とは 意味
 
これは1975年に名著『影響力の武器』で有名なロバート・B・チャルディーニ氏ら行った研究(#1)が出元になっています。(ここでは詳細は省きます)

フットインザドア(FITD)

最初に簡単な小さい頼みごとをして、それを引き受けてもらう。そこから続けてより大きな頼みごとをすると、通りやすくなるというテクニック。
 
フットインザドア とは 意味
 
これは1966年にスタンフォード大学のジョナサン・フリードマン教授らが行った研究(#2)が出元ですね。(ここでは詳細は省きます)
 
 
こんな感じで、両者は頼み事の順番が逆になっているのが分かるかと思います。DITFは最初に無理難題をぶっこむのに対して、FITDはその場でできるような簡単な依頼を先にします。
 
 
そして両者に共通しているのは、まず最初に相手が次の頼み事を断りづらい心理状態を作り上げておく、という点です。例えばDITFでは、初めの依頼を断った罪悪感、初めの依頼が無理難題すぎて次の依頼が楽に見える知覚コントラスト、といった心理を生み出しています。
 

ドアインザフェイスとフットインザドアはどちらのほうが頼み事・交渉を有利にしてくれるの?

ではここから本題に入ります。この問題については2005年に大規模な研究が出ているので、これを参考にしていきます。
 
 
この研究はボルドー大学が発表したメタ分析(#3)で、1975~1996年に出た22件の研究からDITFは1611名、FITDは1581名を対象に行われています。
 
 
で早速結論から言うと、こんな結果になっていました。

 

  • 22件を精査した結果、ドアインザフェイス(DITF)とフットインザドア(FITD)では効果に大差なかった(どちらも比較グループよりは頼み事の受諾率が高かった)

 

要は他のことをするグループよりは効果が出たけれど、両者で比べると大きな差はないということですね。
 

注意点・まとめ

ただこの研究にも注意点がありまして、

 

  • 対象研究が古い:2000年入ってからの研究が含まれておらず、研究の質も低くなりがち
  • 研究ごとに中身が全然違う:実験の中身の違いが効果にどう影響するか?は調べられていない(頼み事の内容、頼み方、対象者の特徴etc..)

 

この辺りは押さえておくとよろしいかと思います。データが古いうえに、細かい研究間の違いを押さえられていないので、そもそもこのメタ分析があまり当てにならない可能性が高い、と。
 
 
ちなみに対象の研究で実際に使われた頼み事には、ざっとこんなものがありました。

 

  • 美術館に1ドルの寄付(DITF:5ドル依頼してから、FITD:簡単な署名を求めてから)
  • 交通や車の調査(DITF:交通量の監視作業→近所の人にパンフレットを配る、FITD:車のアンケート数問→近所の人にパンフレットを配る)
  • 電話のアンケート調査(DITF:向こう2週間でどんなTV番組を見たか?を討論する実験に参加→50問のアンケート調査、FITD:数問のアンケート調査→50問のアンケート調査)
  • 動物園への寄付(50~1000ドルの間で好きな額を寄付)

 

ご覧の通り、結構バラバラですよね。割と寄付系、アンケート系が鉄板みたいですが、こうした実験結果が我々のリアルな世界にどこまで落とし込めるのか?が実はそれほど固まっていないんですね。
 
 
そして私の知る限りでは、2010年以降もDITFとFITDをもっと詳細に比較したメタ分析は出ていません。つまり現時点で、この問題については分からないことが多すぎる状態です。
 
 
では今回の内容をまとめます。

 

ポイント
  • 「ドアインザフェイス」と「フットインザドア」どちらが効果的?問題は未決着
  • 最新のメタ分析では両者とも効果に大差はないと出ているが、これは状況によるだろう
  • 研究自体2000年に入ってあまりアップデートされていない感があるし、頼み事の内容、頼み方、対象者の特徴など状況による効果の違いもハッキリしていない
 

こんな感じでしょうか。何だかモヤモヤする結論で申し訳ないですが、この問題についてはこれが現時点で言える限界かな?と思います。
 
 
ただ逆に言えば、この結論から「DITFやFITDってそんなに一般化できるテクニックでもないかもな~」という意外な事実がわかった!とも取れますので、その点では収穫かな、と。

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赤羽(Akabane)

「ドアインザフェイス」も「フットインザドア」もかなり定番の心理テクニックとして、営業や頼み事からデートの場面まで色々なシーンで使われています。ただ、世間ではこうしたテクニックを手放しで一般化しすぎている感も否めないので、今後の研究では「どんな場面どんな方法どんな立場の相手にどんなテーマだったら効果が見込めるのか?」まで追究していただけると有難いですね。

分厚い本ですが事例も込みでとても読みやすい

参考文献&引用

#1 Cialdini, R. B., Vincent, J. E., Lewis, S. K., Catalan, J., Wheeler, D., & Darby, B. L. (1975). Reciprocal concessions procedure for inducing compliance: The door-in-the-face technique. Journal of Personality and Social Psychology, 31(2), 206-215.

#2 Freedman, J. L., & Fraser, S. C. (1966). Compliance without pressure: The foot-in-the-door technique. Journal of Personality and Social Psychology, 4(2), 195-202.

#3 Pascual A, et al. Foot-in-the-door and door-in-the-face: a comparative meta-analytic study. Psychol Rep. 2005.