赤羽(Akabane)
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「TVや電気をつけっぱなしで寝てると太る」という話題の研究
早速ですが、参考は2019年にアメリカ国立衛生研究所が発表した研究(#1)で、どうやら人工の光を就寝中に浴びている人は太る傾向が確認されたみたいです。
アメリカ全土とプエルトリコの女性を調べてわかった「電気のつけっぱなしと肥満」の意外な関係
この研究は「シスター研究」と呼ばれる、アメリカとプエルトリコの女性のみを対象に乳がんリスクなどを記録した調査データを使って、最終的に44000名(35~74歳)を平均5.7年も追いかけたもの。
具体的には、参加者の女性らに「普段部屋の明かりを消して寝てる?」「明かりはつけっぱなし?」「どんな明かりがついている?」といった睡眠時の光に関するアンケートを行いました。
でこのアンケート結果を、彼女らの体重、BMI、ウエスト、ウエスト/ヒップ比などと照らし合わせて人工光と体型の相関関係を見ていったんですね。
すると結果は、
- 明かりをつけっぱなしで寝ていると答えたは追跡開始時点ですでに「肥満」体型である傾向が強かった
- 明かりをつけっぱなしで寝ていると答えた人は、そうでない人に比べてその後肥満になるリスクが19%高かった
- 部屋の人工光やTVをつけっぱなしで寝ていると答えた人は、そうでない人に比べて5kg以上体重増加するリスクが17%、「肥満」体型になるリスクが33%高かった
なんと普段何かしら人工光を浴びながら寝ている女性は、元々肥満傾向が強くて、そうでなくてもその後かなり太っていく傾向にありました。
しかもこうした結果は、家庭や経済状況、カフェインやアルコール摂取、うつ病、睡眠時間・質や食事、運動習慣といった他の大事な要素も調整したものだったみたい。
ちなみにここで言う「肥満」の定義は、
こんな感じになります。ここまでくると、見た目のイメージはぽっちゃりを通り越して「太ってる」といった様子かと思います。
考えられるメカニズムは…?
ではどうしてこんなことが起きたのか?考えられるメカニズムとしては、次のようなモノが挙げられます。
就寝中の明かりで太るメカニズム
- 睡眠環境に何らかの「光」がある
- 睡眠リズムを調整するホルモン「メラトニン」分泌が邪魔される
- サーカディアンリズム(睡眠リズム)が崩れる
- 睡眠の質や効率が下がる
- 食欲のコントロールが効かなくなる
- 食べ過ぎる(カロリーの過剰摂取)
- 太る
そもそも太古から、人間は自然な一日のリズムの中で活動と休息を繰り返してきました。日中は獲物を求めて活動して、日が暮れたらゆっくり眠る準備に入る、みたいな感じです。
が現代ではこれが人工の光によって狂わされています。TVの光、部屋の照明、スマホの液晶画面などなど。こうした光は睡眠リズムを作るホルモンのバランスを壊してしまうんですね。
で睡眠リズムを調整している脳の視床下部というパーツは、食欲のコントロールも担っています。この部分の調整が狂うと、食欲にも影響して結果食べ過ぎてしまう、と。
まとめ・注意点
ただし今回の研究にも注意点がありまして、
- 「就寝中の明かり→太る」という因果関係が証明されたわけではない
- 対象は女性のみ→男性やその他性別にも同じことが言えるかはわからない
- アンケート調査には主観が混じる→データが正確とは言えない
- 具体的にどのくらい光を浴びているか?は分からない
この辺りは押さえておくとよろしいかと思います。就寝中の明かりが肥満に繋がりそうなメカニズムはありますが、まだまだ他の要素の影響も捨てきれないぞ、と。またデータの調査方法もあまり質が高いとは言えず、この辺りも改善点でしょうか。
では以上も踏まえて今回の内容をまとめます。
- 睡眠時に部屋の明かりやTVの光がつけっぱなしだと太るかもしれない
- 一応それらしいメカニズムもあるが、因果関係はまだ確定していない
- 結果はどうあれ睡眠時の明かりは睡眠の質・効率を激しく落とすので消して寝るべし
こんな感じでしょうか。太るリスクとの関係を置いておいても、そもそも睡眠に悪影響なので止めましょう、と。この点は今後も変わらないかと思います。
赤羽(Akabane)

参考文献&引用
#1 Yong-Moon Mark Park, ; Alexandra J. White ; Chandra L. Jackson; et al. Association of Exposure to Artificial Light at Night While Sleeping With Risk of Obesity in Women. JAMA Intern Med. Published online June 10, 2019.
#2 Al Khatib HK, Harding SV, Darzi J, Pot GK. The effects of partial sleep deprivation on energy balance: a systematic review and meta-analysis. Eur J Clin Nutr. 2017 May;71(5):614-624.