赤羽(Akabane)
目次
下級生に勉強のアドバイスをすることで自分の学業成績もアップするよ!という実地調査結果
学校や職場、大抵の場合私たちは周りの人と助け合いながら生きています。何かアドバイスをすることもありますし、逆に教えてもらうことも。
しかし周りの人の為に時間を割くのがしんどいと思ってしまう事もあるでしょう。そこでこの記事では、周りの人の為に時間を割いてアドバイスをしてあげることのメリットについて見ていきます。
約2000人の高校生を対象にした実地調査の結果…
2019年にカリフォルニア大学が発表した研究(#1)によると、たった8分間他の生徒に学習のアドバイスをしただけで、その生徒のその後の学業成績がアップしたことが分かりました。
この研究では、アメリカの7つの学校から1,982名の高校生を対象に、彼らを以下の2グループにランダムで分類する実験を行いました。
- アドバイスグループ(985名):8分間で下級生に勉強のアドバイスを手紙で送る
- コントロールグループ(997名):何もしない
アドバイスの具体的な内容は、「先延ばしを防ぐには..?」「お勧めの学習スポットは..?」みたいな感じで、勉強の中身に関するものではなくて勉強を最適化するアドバイスでした。
そして各生徒らが最も力を入れている教科と数学の学業成績を追跡、グループ間で何か差は見られるか?という点をチェックしました。
するとこの結果、以下のようなことが分かりました。
- アドバイスをしたグループはそうでないグループよりもその学期の力を入れている教科の学業成績が高かった(β = 1.14, 標準誤差 = 0.43, 95% CI = 0.29 ~ 1.99, p = 0.009, d = 0.12)
- 数学に関しても同様の結果が確認された(β = 0.91, 標準誤差 = 0.44, 95% CI = 0.05 ~ 1.76, p = 0.038, d = 0.10)
- こうした結果は生徒の性別や人種、社会経済的ステータス、元の成績に関係なく一貫して見られた
まとめると、実験の冒頭でたった8分下級生にアドバイスをしただけでもその学期の学業成績が有意にアップしていたんですね。「d =」で表される効果量の値を見るとやや小さく見えますが、たった8分の介入でこれだけの効果が得られたと解釈すると、十分良い結果なのかなと思います。(*効果量は ≦ .20くらいだと小さいと判断される)
ではどうしてこうした結果になったのでしょうか?考えられる心理的メカニズムとしては以下が挙げられています。
- アドバイスを通して自分の意見や信念を他人に公言にすることで、その通りに動こうという心理が働く(認知的不協和)
- アドバイスに伴って、自分自身の具体的な学習プランも定まる
- アドバイスを受け取るのでなく与えるという行為が自信を増長させた
どれもままあり得そうな内容ですね。しかもたった8分で学習のモチベーションを高めてくれるとすれば、コスパも相当なものです。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- 学業の成績以外でどのくらい効果があるかは不明:数学ともう1教科の成績しかチェックしていないので、テストのスコアや職場での仕事効率など他の指標でどのくらい効果があるか?はわからない
- どこまで一般化できるか?問題:アメリカの高校生しか対象にしていない分、他の年齢や文化圏の人にどこまで適用できるのか?は分からない
- 実際に勉強に対する姿勢がどのように変わったのか?は調べていない:勉強時間や本人たちの主観的な学習効率など、モチベーションに関する直接的な項目はチェックしていない
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 他人へのアドバイスは自分自身の自信に繋がったり、「アドバイスをした手前自分もしっかりしなきゃ..」という心理が働いてモチベーションがアップする
- 今回の調査結果では、たった8分間だけ下級生の為に勉強のアドバイスをしてあげるだけでもその期の学業成績がアップしていた
- 細かい部分ははっきりしていないが、他人へのアドバイスが自分の心理面にメリットをもたらしてくれることは間違いなさそう
赤羽(Akabane)
関連記事はこちらもどうぞ
「人に教えることは自分自身の勉強にもなる!」のメカニズムには検索練習が大事みたいだ参考文献&引用
#1 Lauren Eskreis-Winkler, et al. A large-scale field experiment shows giving advice improves academic outcomes for the advisor. PNAS July 23, 2019 116 (30) 14808-14810.