ヘビースモーカーでも禁煙すれば肺がんリスクが元通りに!はどこまで正しいのか?

タバコ, 考察編

禁煙すれば肺がんリスクが元通り!はどこまで本当?

禁煙 肺がん リスク 下がる

今回は「禁煙すれば肺がんリスクはどのくらい下がるの?」というお話です。
 
 
まずたばこの害について軽くおさらいしておきますと、

 

  • 数十種類のがんのリスクを確実に高める(#1)
  • 心疾患のリスクを高める(#2)
  • 二型糖尿病のリスクを高める(#3)

 

有名どころでこのような感じ。健康を志すなら真っ先に断つべきモノであります。
 
 
がこうしたリスクが世の中に広まっているにも関わらず、たばこをやめられない方もいます。依存性を考えると仕方がないことですが、その主張の中に、

 

  • タバコは止めて何年かすれば肺がんリスクも元に戻るから大丈夫だよ

 

というものがあります。意外と耳にする説ですが、いったいどこまで本当なんでしょう?
 

フラミンガム心臓研究が解き明かす「禁煙の肺がんリスクへの影響度」

では本題に入ります。ここからは「禁煙ってどこまで肺がんリスクを下げてくれるの?」という疑問について。
 
 
参考になるのが、2018年にヴァンダービルト大学が発表した研究(#4)で、有名なフラミンガム心臓研究という調査データとその子孫を調べたデータから、それぞれ3905名と5002名を対象にしたもの。
 
 
この研究では、対象者の生涯喫煙歴と肺がんの発症数の相関を1954~1958年、1971~1975年の間で調査して、2013年までにどうなったか?を調べてくれています。
 
 
そして喫煙者らは大まかに次のように分けて考えられました。
 

  • 現在喫煙者..今も吸っている
  • 過去喫煙者..昔吸っていたが、今は禁煙している
  • 非喫煙者..吸ったことがない

 
ではまずこの結果ですが、中央値で28.7年間の追跡中に284件の肺がん発症がありました。これらと喫煙歴の関係はこんな感じに。

 

1000人年当たりの肺がん発症リスク
  • 現在喫煙者:1.97(95% CI = 1.66 ~ 2.33)
  • 過去喫煙者:1.61(95% CI = 1.34 ~ 1.93)
  • 非喫煙者:0.26(95% CI = 0.17 ~ 0.39)

※人年は1年間観察された集団全員がリスクにさらされた時間の総計を年数で表したもの

 

簡単に言うと、吸い続けている人は全体と比べて発症リスクが約2倍で、禁煙している人だと約1.5倍だった、と。現に肺がんの発症も9割近くがヘビースモーカー(1日1箱以上を21年以上続けている人)の身に起こっていました。
 
 
でこの調査では更に、禁煙したヘビースモーカーについても詳しく調べてくれてまして、こんなことも分かっています。

 

過去ヘビー喫煙者と現在喫煙者で肺がんリスクを比べると..
  • 禁煙5年経過…0.61(95% CI = 0.40 ~ 0.93)
 
禁煙年数別の過去ヘビー喫煙者と非喫煙者で肺がんリスクを比べると..
  • 禁煙5年未満…12.12(95% CI = 6.94 ~ 21.17)
  • 禁煙5~9年…11.77(95% CI = 6.78 ~ 20.45)
  • 禁煙10~14年…7.81(95% CI = 3.98 ~ 15.33)
  • 禁煙15~24年…5.88(95% CI = 3.19 ~10.83)
  • 禁煙25年以上…3.85(95% CI = 1.80 ~ 8.26)
 

何やらいろいろ数字が出てきましたが、ここから言えるのは、

 

  • ヘビースモーカーでも禁煙5年経過で、現喫煙者よりリスクは39%低下した
  • 禁煙年数が長くなるにつれて肺がんリスクは下がる
  • でも禁煙25年経過してもなお、非喫煙者の4倍ちかく肺がんリスクが高い

 

といった事です。人によってプラスにもマイナスにも解釈できる内容ですね。
 
 
で今回の研究は他の観察研究と比べて幾つか強みがありまして、

 

  • 調査期間が25~34年間と非常に長い
  • 喫煙歴などの調査はフラミンガム心臓研究で2年毎、子孫の調査でも4年毎と定期的

 

この辺りがイイ感じです。割とこの手の長期研究って、調査開始時の1回しか対象者を調べてなかったりして、正確性に欠けるモノが多いんですよね。その点、今回の研究は調査期間もかなり長くて調査もマメ。ナイスなデザインです。
 
 
ただ惜しい点もいくつかありまして、

 

  • アメリカのボストン郊外にあるフラミンガム地域の住民のみが対象
  • 年齢や性別、教育レベルなどは考慮しているが、食事や運動など大事な要素は考慮されてない

 

この辺りは大事なポイントです。要は、この結果が同じレベルで私たちにも当てはまるかは分からず、食事や運動によってはリスクが変わってくる可能性が高い、と。
 
 
では長くなりましたが、今回のまとめです。

 

ポイント
  • 禁煙年数が長くなる程肺がんリスクが低下!は正しいみたい
  • 禁煙5年経過くらいで結構リスクは下がり始める
  • ただ禁煙25年経過しても非喫煙者には到底かなわない
 

嬉しいニュースと悲しいニュースがありましたね..。ただこれが分かっていれば、今からでも止めよう!と思えるのかもしれません。

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赤羽(Akabane)

私は非喫煙者ですが、当ブログでは一応タバコについても色々調べています。禁煙で有名なニコチンパッチの効果を更に上げる方法は以下をご覧ください。

参考文献&引用

#1 厚生労働省「喫煙の健康影響に関する検討会報告書」
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000105624_1.pdf「2019年6月11日アクセス」

#2 A Hackshaw,Joan K Morris,Sadie Boniface,Jin-Ling Tang,Dušan Milenković,”Low cigarette consumption and risk of coronary heart disease and stroke: meta-analysis of 141 cohort studies in 55 study reports“BMJ,Vol.360,2018.

#3 Carole Willi,Patrick Bodenmann, William A. Ghali”Active smoking and the risk of type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis.“,JAMA,Vol.298,No.22,pp2654-2664,2007.

#4 Tindle HA, Stevenson Duncan M, Greevy RA, Vasan RS, Kundu S, Massion PP, Freiberg MS,”Lifetime Smoking History and Risk of Lung Cancer: Results From the Framingham Heart Study“,J Natl Cancer Inst. 2018 Nov 1;110(11):1201-1207.