赤羽(Akabane)
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慈悲の瞑想をしながら歩く、その名も「慈悲の歩行瞑想」?!
本題の前に、まず慈悲の瞑想についてザっとおさらいしておきましょう。
- 慈悲の瞑想..自分や他人、生きとし生けるものの幸福を願いながら行う瞑想
字面だけ見るとかなり怪しげな様子ですが、一応メンタルの改善をはじめあらゆる効果が確認されています。
実際に2015年に発表されたメタ分析(#1)でも、慈悲の瞑想トレーニングの直後からでもポジティブ感情が増したとの報告が上がっていたり。詳しい内容については以下をザっとご覧ください。
仏教の教えに習う『慈悲の瞑想』がメンタルに効いてポジティブ思考を育む!
皆の幸福を祈りながら歩いたらどうなるの?
では以上を踏まえて本題へ。ここからは「慈悲の瞑想をしながら歩いたらどんな効果があるの?」という疑問についてです。
参考になるのが、2019年にアイオワ州立大学が発表した研究(#2)。これは496名の学生を対象に行われた実験で、まず彼らを次の4グループに分けました。
- 慈悲の瞑想グループ..すれ違う人の幸福を願う
- 他者との繋がりグループ..すれ違う人との共通点、似ている点を考える
- 社会的見下しグループ..すれ違う人のことを見下す
- アクティブ比較グループ..すれ違う人の見た目(服とか)について考える
そして、各グループの内容をこなしながらキャンパスの回りを12分間歩き回ってもらったようです。
でこのウォーキングの前後に、彼らの不安感、主観的な幸福度、社会的な繋がり、共感レベルなどのアンケートに答えてもらって、結果にどんな変化があったか?を調べたんですね。
するとこの結果は、
- 慈悲の瞑想グループは、比較グループよりも有意に不安感が下がり、幸福度や共感レベル、社会的繋がりを感じる度合いがアップした
- 他者との繋がりグループでも、社会的繋がりを感じる度合いのみアップした
- 社会的見下しグループは、測定した項目の改善度が全体的にかなり低かった
このようになりました。どうやら、ウォーキング+慈悲の瞑想であらゆるメンタル面のスコアが改善したみたい。
一方で、社会的見下しは一時的な気分解消には効果があると過去には言われていたんですが、最近では「逆効果なんじゃないか?」との見方が強くなっている模様。
では今回の結果をまとめます。
- 慈悲の瞑想+ウォーキングの「慈悲の歩行瞑想」はメンタルの改善にバッチリ効いた
- 社会的に他人を見下すことで気持ちを落ち着かせようとするのは意味がないかも
- 気分が沈んだらとりあえず外に出て歩こう。そしてすれ違う人の幸せを願ってみよう。
この辺りがポイントでしょうか。ただ、今回の実験は12分だけの超短期間なので、長期的な効果がどうなるかはまだわかりません。そこだけはおひとつ。
赤羽(Akabane)
参考文献&引用
#1 Xianglong Zeng,Cleo P. K. Chiu,Rong Wang,Tian P. S. Oei,Freedom Y. K. Leung,”The effect of loving-kindness meditation on positive emotions: a meta-analytic review“,Front Psychol. 2015; 6: 1693.
#2 Douglas A. Gentile,Dawn M. Sweet,Lanmiao He (2019)”Caring for Others Cares for the Self: An Experimental Test of Brief Downward Social Comparison, Loving-Kindness, and Interconnectedness Contemplations“,Journal of Happiness Studies,pp 1–14.