赤羽(Akabane)
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老後の幸せや心身の健康は「自分の人生に意味を感じているか」に大きく左右されるかもよ
早速ですが、このテーマについて面白い研究が発表されていたので、中身を覗いてみましょう。
イギリスに住む高齢者7000名を調べて分かった「人生に置く価値と意味」の重要性
これは2019年にユニバーシティカレッジ・ロンドンが発表した研究(#1)で、イギリス在住の7304名の高齢男女(平均67.2歳)を対象にしたもの。
具体的には、「自分のこれまでの人生にどのくらい価値や意味を感じているか?」を11段階で評価してもらったり、その他社会、経済、健康面でのアンケートや実際の数値測定を実施したようです。
でこうした追跡調査を4年間行って、その間に上で書いたような結果がどう変化していくか?も見ていきました。
すると、こんなことがわかったようです。
「人生の意味」11段階評価が高いほど…
- 強固な人間関係:結婚やパートナーを持つ割合が多くて、より多くの友達と連絡を取っている
- 広い社会貢献:社会貢献や文化的活動、ボランティアにも積極的に参加する
- 少ない孤独感:心身の健康によろしくない孤独度が低い
- 健康的な生活:野菜や果物を食べる割合が多くて日頃からよく動くし、座っている時間も少ない
- 健やかな心身:主観的な健康だけでなく、慢性病やうつ症状レベル、体型や体内の脂質、炎症サインといった数値など客観的な部分でも健康な傾向
- 少ない慢性痛や身体の障害:痛みや障害も少なく、上半身の強度が高くて歩くスピードも速い
どうやら、自分の人生に価値や意味を見出している高齢者は社会・経済・健康面どれをとってもすこぶる快調だったみたい。かなりハッキリ結果が出ましたね。しかも年齢、性別、学歴、その他社会経済的なステータスを考慮しても、結果は変わらなかった様子。
ちなみに健康面のバイオマーカー(体内の指標・数値)については、
- 握力が強い
- 肥満体型が少なく、中性脂肪や脂質数値も良い
- 体内のビタミンD濃度が高い
- 体内の炎症性サイトカインが少ない(C反応性たんぱく質、フィブリノゲンなど)
例えばこういった結果が出ていて、どれも早死にや慢性病リスクに関わってくる大事な要素です。この辺りを見ても、やはり自分の人生に価値や意味を見出している高齢者はすこぶる快調と言えましょう。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、
- 4年間追いかけていないメジャーもある:例えば握力は調査開始時の一度だけしか測定していないし、時間の使い方は4年経過時ではなく2年経過時にもう一度調査されている
- 舞台はイギリスのみ:他の国や地域でも同様・同レベルの結果が出るか?は分からない
- 結果は因果関係ではない:自分の人生に意味を見出せば経済・社会・健康面が快調に!という話ではない。
この辺りは押さえておくとよろしいかと思います。3つ目については、人生の意味や価値を感じていることで、より自分の人生に積極的になったり健康への意識が高まったり、と間接的に影響しているのかなとは思います。
実際、そういった人ほど時間を有効に使えていたり、野菜や果物を食べるなど高い意識をもって暮らしていることが今回の研究で分かっています。
- 自分の人生に意味や価値を見出している人は老後の人生も快調かも
- 大きく社会・経済・健康面で良い人生を歩んでいた
- こうした精神は間接的に我々を人生に積極的にさせたり健康の意識を高める方向に影響しているのかもしれない
赤羽(Akabane)
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「生きる意味」を持っているかどうかは老後の早死にリスクにも関わってくるらしい参考文献&引用
#1 Andrew Steptoe and Daisy Fancourt. Leading a meaningful life at older ages and its relationship with social engagement, prosperity, health, biology, and time use. PNAS January 22, 2019 116 (4) 1207-1212.
#2 Aliya Alimujiang, MPH; Ashley Wiensch, MPH; Jonathan Boss, MS; et al. Association Between Life Purpose and Mortality Among US Adults Older Than 50 Years. JAMA Netw Open. 2019;2(5):e194270.