赤羽(Akabane)
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【図解・具体例付き】思い込みによる不思議な現象「ノセボ効果」とは?プラシーボ効果との違いも解説
ではまず「ノセボ効果って何?」というところから図と一緒に見ていきましょう。
ノセボ効果はプラセボ効果の反対?図で見てみよう
「ノセボ効果(nocebo effect)」は、有名なプラシーボ(プラセボ)効果とは反対の効果を表すモノです。具体的なイメージはこんな感じ。
つまり、プラセボでは「効き目があると思い込むと偽の薬でも本物のメリットが得られる」のに対して、ノセボでは「効き目があると思い込んで偽の薬を飲むと本物の副作用が出てきちゃう」んですね。
では次に、この例を調べた面白い研究を覗いてみましょう。
「高そうだし患部が熱いし..これは効いてるッ!」アトピー用クリームでノセボ効果が確認された
これは2017年に「Nature(ネイチャー)」誌に掲載された研究(#1)で、49名を対象に、まず彼らを次のようなグループにランダム分けしました。
- 安いクリームグループ(24名):オレンジの安っぽいパッケージのクリームを「安いクリームです」と言って塗布する
- 高いクリームグループ(25名):ブルーの高級そうなパッケージのクリームを「高いクリームです」と言って塗布する
ちなみに「クリームが安そうか高そうかの判断ってパッケージの色だけで大丈夫なの?」という点は、別で集めた66名を対象に行った調査で「そう見える」とのお墨付きが出ているみたいなので問題なさそうです。
そしてクリームを塗った後、本来ならスキンパッチで肌が熱痛を感じる段階に入るんですが、ここでも仕掛けがあります。高いクリームのグループだけ、ひそかに塗った患部に熱が帯びるように設定したんですね。こうすることで「高いクリームだから効き目がすごいんだ!」と先に思い込ませておく、と。
で次にまた同じようにクリームを塗るんですが、今度は熱を使わずに比較対象と同じ温度にして、この時に脳やせき髄のfMRIをスキャンして脳神経レベルで何が起こっているのか?を測定しました。
すると結果、こんなことが分かったようです。
- 高いクリームグループでノセボ効果が見られた
- 具体的には、より患部の熱痛が強くて長時間続くと感じていた
- この時、脳やせき髄の痛みに関する部位が変化していた
まとめると、「高いし効き目がありそうだ」と先入観を刷り込まれた場合、その分副作用に対する予感も強まって、実際にノセボ効果が起こったんですね。
ちなみに脳やせき髄の反応は、腕辺りにある脊髄の「C6」や脳の水道周囲灰白質、前運動野、右の偏桃体などが活性化、一方で前帯状皮質の活動は抑えられていたようです。これらの変化は、どれも痛みに関係するものです。
まとめ
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- ノセボ効果はプラセボ効果の反対で、薬などの良い効果ではなく副作用が本当に起こること
- 高くて効き目があると思い込んだクリームは、安いクリームよりもノセボ効果が表れた
- 脳やせき髄レベルでも「痛み」にまつわる部位が変化していた
こんな感じでしょうか。今回観測された脳やせき髄の変化はプラセボ効果のものとも似ているところがあって、共通の部位がノセボ/プラセボ効果の両方に関与している可能性がありますね。
赤羽(Akabane)
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#1 Tinnermann A, Geuter S, Sprenger C, et al. Interactions between brain and spinal cord mediate value effects in nocebo hyperalgesia. Science. 2017 Oct 6;358(6359):105-108.