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【プラシーボ効果恐るべし】医者の見た目や肩書きが変わるだけで治療の結果がこんなに違うらしい
今回は「プラシーボ効果恐るべし!」というお話です。
プラシーボは「薬だと思い込めば偽薬でも本当にその効果が得られる!」という不思議な効果で有名ですね。
ここからは、そのプラシーボが医療の現場にもたらす恐るべし影響についてザっと見ていきましょう。
医者の見た目の印象や経歴で治療の効果が変わる!?
これは2019年にシャヘド大学が発表した系統的レビュー(#1)で、34件の研究をまとめて、治療者であるお医者/研究メンバーの特徴によって治療の効果は変わってしまうのか?を調べたものです。
具体的には、次のような特徴で変化があるか?を見ていました。
- 性別(17件):治療者と参加者が同性か異性か
- 非言語コミュニケーション(14件):治療者の身振りや仕草など
- ステータス(7件):治療者の肩書が権威的 or 高いかどうか
そしてこれらの特徴が、①治療による痛み、②プラシーボ/ノセボ効果、にどんな影響を与えるか?をチェックしたんですね。
すると結果、こんなことが分かりました。
- 治療者が異性だった場合、治療による痛みが緩和する傾向が見られた
- 他にも自信ありげや有能に見える場合、痛みが和らぐ傾向が見られた
- ステータスが高い場合にも痛みが和らぐ傾向が見られた
まとめると、治療者の性別、ぱっと見の印象、ステータスなどは肝心の治療の結果に大きく影響を与えていたんですね。これは面白い..。
ちなみに「逆の場合どうなのか?」という点。ステータスが低かったり、自身なさげで有能に見えない場合は、かえって治療の痛みが増したと感じるようです。注射するお医者さんが見るからに緊張してたらそりゃ不安になりますよね..(笑)
では治療者としては一体どんな風に身構えていればいいのでしょう?これについて、次のような結果も出ていました。
- よく微笑む
- ハッキリした口調で喋る
- アイコンタクトを増やす
- 患者さんに体を傾ける
- 身振り手振りをつける
こうした非言語のコミュニケーションの中には、人の魅力を高める仕草として、2018年のメタ分析(#2)でお墨付きのものもあります。やはり喋っていて信頼が置けると思ってもらえる工夫が大事ということですね。
現にこれらの逆をいく行動を取った場合、治療の痛みは強く感じられて、ノセボ効果が報告されるケースもありました。お医者さんは厳格な出立ちよりも魅力的なカリスマっぽさを演出したほうが良いのかも..。
注意点・まとめ
ただし注意点も幾つかあります。
- 実験デザインにはかなりバラつきがある:対象になった研究間で実験方法や中身に差がかなり見られるので、細かい部分はもっと調査が必要
- 性別に関する結果は参考程度に:5件で異性のほうが痛みが弱まる報告があったが、もう5件ではこの効果は見られなかった
- 実験の質が低いものがちらほらある:治療者の性別を明記していなかったり、ステータスと非言語的コミュニケーションの問題をごっちゃにしている研究も少数あった
この辺りは押さえておくと良さそうです。では最後に今回のまとめも見ていきましょう。
- 治療者の特徴(性別、ステータス、非言語コミュニケーション)で治療の効果や痛みが変わった
- 異性、ステータス高い、自信あり&有能そう、魅力的な人当りは治療に良い効果をもたらした
- お医者さんは厳格な印象よりもカリスマっぽさを演出したほうが患者にとって良いのかも
こんな感じでしょうか。肩書や性別はすぐにはどうにもならないにしても、人当りを善くするのは意識して改善していけるんでは?と思います。
赤羽(Akabane)
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#1 Daniali H, Flaten MA. A Qualitative Systematic Review of Effects of Provider Characteristics and Nonverbal Behavior on Pain, and Placebo and Nocebo Effects. Front Psychiatry. 2019 Apr 15;10:242.
#2 Montoya, R. M., Kershaw, C., & Prosser, J. L. (2018). A meta-analytic investigation of the relation between interpersonal attraction and enacted behavior. Psychological Bulletin, 144(7), 673-709.