愛情ホルモン「オキシトシン」の働きで自民族中心主義が加速するかも

愛情ホルモン「オキシトシン」の働きで自民族中心主義が加速するかも

赤羽(Akabane)

今回は「オキシトシンで自民族中心的になるかも」というお話です。

愛情ホルモン「オキシトシン」の働きで自民族中心主義が加速するかも

オキシトシンはよく「愛情ホルモン」と呼ばれている、他人との絆を感じた時やスキンシップ中などに分泌される物質です。

そんな呼び名からか、オキシトシンは「良い物質」との認識が強いように感じますが、実は諸刃の剣な一面もあるようです。

愛情ホルモン「オキシトシン」で自民族中心主義(エスノセントリズム)が強まる!?

例えば2011年にアムステルダム大学が発表した研究(#1)では、オキシトシンで自民族中心主義(エスノセントリズム)は高まるか?を5つの実験で調べています。

例えば実験1では、63名の男女を対象に、まず彼らを①オキシトシンを注入するグループと②プラセボ(偽薬)グループに分けて、IATタスクというものを実施しています。

IATとは「Implicit Association Task」の略で、暗黙的に人が感じているか、公には言いたくない社会的な評価や主張を炙り出すタスクです。

詳しくは非営利組織「プロジェクト・インプリシット(#2)」でテストを受けてみると分かりますが、人種や年齢、同性愛、太っている、といったあらゆる差別の対象についてあなたの隠れた考えが分かります。ちなみに実験1では「人種(国籍)」について調べた様子。

では本題に戻って、結果はどうだったのでしょう?分かったことは次のようなことでした。

結果
  • オキシトシンで内的集団意識が強まっていた
  • オキシトシンで外集団に対してネガティブな考えが増していた

まとめると、オキシトシンで自分が所属する集団への愛着が強まったり、反対にそれ以外の集団への評価が悪くなったんですね。

こうした結果は他の実験でも得られていて、やはりオキシトシンで自分が所属する集団に好意的な判断を下す傾向が見られました。

ではどうしてオキシトシンで自民族中心主義が強まったのでしょう?これには社会的な繋がりが関係していて、自分が居る集団の調和を保つためには、自然と集団に愛着を持って協力しつつ、よそ者に警戒するようになります。そしてオキシトシンによって集団への愛情が強まった結果、他集団に対する敵意や警戒心にも繋がってしまうのかも..という感じです。まさに今回の結果は、この二律背反なイメージを象徴していますね。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、今回分かった「外集団に対してネガティブな考えが増す」という部分は一貫した結果ではありませんでした。つまり、この部分についてはまだオキシトシンの作用としてハッキリ断言できない!ということです。

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • オキシトシンは人との繋がりやスキンシップで分泌が盛んになるホルモン
  • オキシトシンで自分の所属集団への愛着が増した
  • 反対に外集団への評価も悪くなる傾向が見られたが、こちらはまだ一貫した結果ではない

こんな感じでしょうか。オキシトシンは所属集団への愛情を高めるのに不可欠ですが、これが自民族中心的・排他的になったりする恐れもあるぞ!と。

赤羽(Akabane)

オキシトシンは愛情や親子、スキンシップなどポジティブなイメージが強いですが、実は諸刃の剣かもしれないんだ!という点は押さえておきたいですね。他にも以下のような記事があるので、興味がある方は続きをご覧ください。

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参考文献&引用

#1 Carsten K. W. De Dreu, Lindred L. Greer, et al. Oxytocin promotes human ethnocentrism. PNAS January 25, 2011 108 (4) 1262-1266.

#2 Project Implicit. IAT Test. accessed on 29th Sep 2019.