オフィスワーカーは本当に運動不足なのか?世界各国132件の研究からわかった意外な傾向

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赤羽(Akabane)

今回は「オフィスワーカーって本当に運動不足なの?」というお話です。

運動なくして健康は始まらない

運動が健康にとって非常に大切なのは最早世間一般にも知れ渡っている事実。実際に過去に紹介した報告をザっとまとめてみても、

  • 11億6719万1000人を調査した結果、一日3時間以上の座りっぱなしが3.8%の死(43万3000件)と関係していた(#1)
  • たった20分の運動でも体内の炎症レベルが低下した!(#2)
  • 座りっぱなしの健康被害は一日60~75分の中強度運動でかなり低下した!(#3)

このように運動の重要性は明らかであります。下手な新しい健康法を試すよりも、運動がメンタルにもフィジカルにも効く一番手軽な健康法かと。詳しくは記事終盤リンクをご覧ください。

・運動は大事!アンチエイジング効果もあるしあらゆる慢性病の予防になる
・一日座ってることが多くても一日1時間くらいの早歩き、サイクリングでダメージをかなり減らせる
・アンチエイジングにも効果あり!まずは早歩きから。

世界各国のあらゆる職種を調べてわかった「各職業の運動、座り時間傾向」とは?

といったところで、今回は職業別に普段皆どのくらい座ったり動いたりしてるの?という疑問について参考になる研究を紹介。これは2019年にオタワ大学が発表したメタ分析(#4)でして、職業別の運動時間と座り時間についてまとめてくれています。ザっと中身を覗いてみると、

  • 132件の研究から15619名を対象に、
  • 色々な職種のワーカーたちが普段どのくらい座って、運動しているか?を調べた
  • 座り、軽度の運動、中~高強度の運動の時間を装置で測定。体脂肪やBWIなどの体型の数字も測定した

とこんな感じ。含まれている研究の数は莫大ですが、中身の参加者数がその割には少なめ。研究の舞台は主にオーストラリアやアメリカでしたが、世界各国色々な国の研究が混じっているのでこの点はいいところですかね。(日本は1件のみでしたが)

ちなみに今回対象になる職種は、

・運転手
・肉体労働職(農業、清掃員、建設現場作業員など)
・護衛職(軍隊、消防士、警察など)
・工場作業員
・コールセンターオペレーター
・教育職(研究者、科学者、講師)
・学校の教師
・ヘルスケア関連(診断医、看護師、内科医など)
・オフィスワーカー(管理職、市役所員、秘書、ソフトウェア開発者など)
・顧客サービス(コック、小売、店員など)
・郵便配達員

この辺りの職業。ブルー/ホワイトカラーみたいな大ざっぱな分類ではなくしっかり分けられているのが良きですね。

ではまず全体的な結果から見てみますと、

結果
  • 平均してワーカーたちは仕事の時間の60%、起きている時間の58.8%を座って過ごしていた
  • 一日当たり仕事の時間の24.1%、起きている時間の30.9%を軽度の運動をして過ごしていた
  • 一日当たり仕事の時間の4.5%、起きている時間の4.0%を中~高強度の運動をして過ごしていた
  • 一日当たり仕事の時間で5698歩歩いていた

こんな結果に。ここは割と予想通りといったところで、皆さん起きている時間の6割近くを座ってすごしております。これは単純計算で、8時間睡眠だった場合、一日当たり9.6時間くらいは座って過ごしていることになりますね。

と全体のレベルがつかめたところで、もっと詳しく見ていくと、

  • オフィスワーカーやコールセンター業務は座り時間が長め
  • オフィスワーカーやコールセンター業務は歩数や軽度の運動も少ない
  • オフィスワーカーは仕事中の中~高強度の運動は少なかったが、一日を通して費やす時間は他職業よりも多かった

どうやらオフィスワーカーはかなり分が悪い模様。その他にもデスクワーク系の職業はどうしても起きている間座り時間が長くて、逆に肉体労働系など仕事で多少動く場合は一日を通して座り時間が短い、軽度の運動が多いという傾向が見られました。

ただ一点面白いのが、一日を通しての中~高強度の運動をみるとオフィスワーカーが最も多い件。これはすなわち、

  • オフィスワーカーたちは仕事中座りっぱなしな分、オフや課外ではしっかり動こうと心がけている

ということを表していると考えられます。こうした結果は過去にも大きな研究(#5)でまとめられてまして、どうやら仕事中机に縛られっぱなしな分、それ以外で運動の時間を確保しているみたいなんですね。

注意点・まとめ

ただし今回の結果には結構な注意点もありまして、

注意
  • 含まれた研究数は多いものの、各々のサンプル数は少なくて質は低い
  • 研究の対象者の大半がオフィスワーカーだった
  • 各研究で対象者の選び方に偏りがあった(選択バイアス)

この辺りは押さえておくとよろしいかと思います。つまりデータの正確性と信頼性は弱いから、あくまで大まかな傾向として捉えよう、と。ちなみにオフィスワーカーの数字ばかり紹介していたのは、他の職業のデータが少なかったのも理由であります。

赤羽(Akabane)

まとめると、座り仕事が長い人も意外とオフで運動をする傾向があることが分かりました。今回の結果を目安に、職種柄座り時間が長い方は、運動を意識してみると良さげ。現に座りっぱなしの健康被害は中強度の運動60~75分で減らせる!(#3)なんて報告もあったりするんで、まずは「1時間やったら5分オフィスを歩く」みたいに少しずつ取り入れていくのが吉ですね。

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参考文献&引用

#1 Rezende LFM, Sá TH, Mielke GI, Viscondi JYK, Rey-López JP, Garcia LMT,”All-Cause Mortality Attributable to Sitting Time: Analysis of 54 Countries Worldwide.“,Am J Prev Med,51(2):253-263,2016.

#2 Dimitrov S, Hulteng E, Hong S,”Inflammation and exercise: Inhibition of monocytic intracellular TNF production by acute exercise via β2-adrenergic activation.“,Brain Behav Immun. 2017 Mar;61:60-68.

#3 Ekelund U, Steene-Johannessen J, Brown WJ, Fagerland MW, Owen N, Powell KE, Bauman A, Lee IM; Lancet Physical Activity Series 2 Executive Committe; Lancet Sedentary Behaviour Working Group,”Does physical activity attenuate, or even eliminate, the detrimental association of sitting time with mortality? A harmonised meta-analysis of data from more than 1 million men and women.“,Lancet. 2016 Sep 24;388(10051):1302-10.

#4 Prince SA, Elliott CG, Scott K, Visintini S, Reed JL,”Device-measured physical activity, sedentary behaviour and cardiometabolic health and fitness across occupational groups: a systematic review and meta-analysis“,Int J Behav Nutr Phys Act. 2019 Apr 2;16(1):30.

#5 Kirk MA, Rhodes RE. “Occupation correlates of adults’ participation in leisure-time physical activity: a systematic review.” Am J Prev Med. 2011;40(4):476–485.