赤羽(Akabane)
目次
運動後の冷却がかえって筋たんぱく合成を邪魔する!
運動後に溜まった疲れを取るのにアイシングなど冷却を行うケースは少なくありません。
たしかに体感では体の熱を放出して効いてる感じはしますが、運動後のリカバリーに冷却は本当にいいのでしょうか?
リカバリーのための冷却は筋トレ後の筋たんぱく合成率を下げる?
2019年にマーストリヒト大学病院が発表した研究(#1)によると、運動後に体を冷やすのは筋たんぱく合成にとっては悪影響かもしれないようです。
この研究では12名の健康な若い男性(平均21歳、普段からよく動くが筋トレ初心者)を対象に、ザッとこんな実験を行なっていました。
- 初日に1セッション45分の下半身の筋トレ(レッグプレス、レッグエクステンションを8〜10レップ×4セット)を行ってもらう
- トレーニング後、両脚を20分水に浸すが、片脚は8℃の冷水、もう一方は30℃のぬるま湯に浸して比較した
- その後フェニルアラニンやロイシンが含まれる20gのミルクプロテインを45gの炭水化物とセットで飲む(計400ml)
そしてこの前後で血液や唾液サンプルを採取しつつ、筋トレ後5時間の血中アミノ酸濃度をチェックしました。
その後も2週間は下半身の筋トレ(計7回)を続けてもらって、直後に水に浸すまでは同じ流れです。ただミルクプロテインは初日のみでした。また実験期間を通して重水を摂取したり、初日と2週間経過時点では筋肉の生体検査も行ったようです。
するとこうした実験の結果、以下のようなことが分かりました。
- 初日に冷水で冷却した脚はぬるま湯で浸した脚よりも筋トレ後の筋たんぱく合成率が低かった
- その後2週間でみても、冷水で冷却した脚は筋たんぱく合成率が低かった(冷水: 1.48 ± 0.17 vs. ぬるま湯: 1.67 ± 0.36%/日)
まとめると、トレーニング後冷水に浸した方の脚で筋たんぱく合成が阻害されていたんですね。
こうした結果は他の実験でも確認されていて、筋トレ熟練者などでも確認されているようです。今回は筋トレ初心者が対象でしたが、このテーマに関しては初心者・熟練者問わず冷水はトレーニング後の筋たんぱく合成率を下げると考えて良さそうです。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザッと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- サンプルサイズは小さい:参加者は少ないので、統計的パワーは弱め(データの質は低い)
- 対象者は男性のみ:女性を対象にした関連研究はほとんどないので、どこまで一般化できるかは不明
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 運動後の冷却はリカバリ目的でよく使われるテクニック
- しかし今回の研究結果では、筋トレ後の冷却によって数時間、数週間のスパンで筋たんぱく合成率が下がる結果となった
- リカバリー目的の冷却のメリットを示すエビデンスは少ないように見受けられる
赤羽(Akabane)
関連記事はこちらもどうぞ
運動中はしっかり水分補給をしないと脳の認知機能が一時的に低下するかも参考文献&引用
#1 Cas J. Fuchs, et al. Postexercise cooling impairs muscle protein synthesis rates in recreational athletes. The Journal of PhysiologyVolume 598, Issue 4, 2019.