赤羽(Akabane)
目次
ネガティブな反芻思考はメンタルの病すべてに通ずる症状
ではまずは前提から。2008年の研究(#1)によると、どうやらメンタルの病には病名に拘わらず共通の特徴があるらしいんですが、それがコレ。
様々なメンタルの病を比較した結果、違いというよりもある共通点が見つかった-それが“ネガティブな反芻思考”である-[筆者訳]
つまりネガティブな反芻思考はあらゆるメンタルの問題に関わる重大な要素なんですね。これを踏まえて本題に入ります。
ネガティブ反芻思考が止まらないのは脳のあの機能低下が原因かも
ではネガティブな反芻思考が止まらないのは何が悪さをしているのか?といったところで、参考になるのが2018年にベルリン自由大学が発表したメタ分析(#2)。
これは94件の研究から6698名(平均25.32歳、1件あたり平均45名)を対象に、反芻思考の原因について調べてくれたものです。
では具体的にどんな要因を調べたかと言うと、
- 75件反芻思考
- 19件が心配性
- 16件が不要になった記憶をワーキングメモリから処理する力
- 13件が記憶の更新
- 31件が思考の遮断
- 19件がその他の認知能力
この辺り。心配性や反芻思考のようなメンタルの問題と、色々な認知能力との相関を調べてくれております。研究当たりのサンプル数が若干少ない点が気になりますが、とりあえず結果は次のようになっていました。
- 全体的に認知能力は反芻思考と関係がなかった
- ただし、不要な記憶をワーキングメモリから処理する認知能力とのみ相関が見られた(効果量:r = -0.20)
- 性別、年齢、精神的病の治療有無、対象者のタイプ、診断内容といった他の要素は結果に影響を与えず
つまり、ネガティブな反芻思考をしてしまう人はある一点、不要な記憶を処理する力が弱かったということですね。確かに、反芻思考というのは本来ならそれ程重大でない記憶を掘り起こしてグルグル頭の中で回し続けるようなものですからね。
そして当研究者らはこんな風にまとめていました。
もしもしつこい反芻思考が要らない記憶の処理能力の欠落に因るモノだとしたら、長い目で見たときに、単に言葉による介入で反芻思考を止めようとするのでは不十分だ。代わりに、コンピュータを使ったトレーニングで情報処理能力アップを狙うほうが重要である。[筆者訳]
どうやらこの手の実証研究は進んでいるようですが、ワーキングメモリーの情報処理に特化した調査はまだ実施されていない様子。このあたりの実際の効果は今後に期待ですね。
赤羽(Akabane)
参考文献&引用
#1 Ehring, T., & Watkins, E. R. (2008).”Repetitive negative thinking as a transdiagnostic process.” International Journal of Cognitive Therapy, 1(3), 192-205.
#2 Zetsche U, Bürkner PC, Schulze L,”Shedding light on the association between repetitive negative thinking and deficits in cognitive control – A meta-analysis.“,Clin Psychol Rev. 2018 Jul;63:56-65.