赤羽(Akabane)
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減塩やその食事指導によって循環器疾患リスク因子はどこまで改善するか?
減塩は血圧を下げるというのは有名な話。そして、血圧の低下は循環器系疾患リスク低下に繋がります。
というわけで、この記事では「減塩を推奨する食事管理で循環器疾患周りの数値はどこまで改善する?」というデータを見ていきます。
4ヶ月の実験結果!減塩を目指す食事管理でどこまで循環器疾患周りは改善するのか?
2020年にフレデリクスバーグ病院が発表したRCT(#1)によると、ちょっとずつ塩分を減らしていくだけでも、循環器疾患周りの数値は十分減る!ということが分かりました。
この研究では、89世帯の家族(309名)を対象に、彼らを以下3つのグループにランダムで振り分けて生活してもらうという実験を行いました。
- 徐々に減塩のパンを食べる(A): 実験開始→終了までに、徐々に塩分が少なくなるようにパンを食べる
- 徐々に減塩のパン+減塩の食事カウンセリングを受ける(B): 上記に加えて、塩分の多い食品を避けたり、調理では塩の代わりにハーブやスパイスを使うといったメッセージを受ける
- 普通のパンを食べる(C): 一貫して実験開始時と同じ塩分のパンを食べ続ける
*パンはライ麦や小麦を使った全粒粉パン
実験期間は4ヶ月で、スタートはどのグループも100g当たり1.2gの塩分を含んだパンを食べ、その後1週間経過ごとに、AとBグループで塩分が0.08gずつカットされていくというものでした。こうした減塩によって、体型やコレステロール、血圧などは改善してくれるのか?という点をチェックしています。
すると結果、以下のようなことがわかったようです。
- AグループはCグループと比べると有意に体脂肪率が減少していた(−1.31% (−2.40; −0.23))
- 血漿の総コレステロールやレニンも有意に減少していた(総コレ: −0.25 mmol/L (−0.51; 0.01); レニン: −0.19 pmol/L (−0.39; 0.00))
- BグループとCグループでは、統計的に有意な数値の差は見られなかった
*結果は、途中で脱落した参加者も含めたもの
まとめると、普通のパンを減塩のものにちょっとずつ置き換えていくだけでも、体脂肪率やコレステロール値などはちゃんと改善した!という感じ。
また、脱落者のデータを除いて実験をやり遂げた人のみで見ても、やはりAのグループで有意な改善が見られます。体脂肪率や総コレ、悪玉コレ、血漿のレニン、アドレナリンなどの数値が改善していました。
一方で、上下の血圧や中性脂肪、善玉コレなどには全グループで有意な改善はみられず。この辺りは、実験期間が短いことも要因として考えられるでしょう。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- 対象になったのはデンマークの家庭のみ: 他の国や文化圏で同様の結果が得られるとは限らない
- 細かい食事のデータは取れていなかった: 支給したパンをしっかり食べているか?という点以外は、食事のデータもない。そのため、今回の結果はパンによる影響が大きいのか?という点は分からない
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 減塩は血圧低下などに効果的で、循環器疾患リスク周りの数値を改善してくれる
- 今回の4ヶ月の実験では、普段食べる普通のパンの塩分を徐々に減塩していくだけでも、コレステロール値や体脂肪率などが減少した
- ただ、他の食事がどうなっていたのか?がわからないので、今回の結果は一概に減塩のおかげとは言い切れない
現に、Aと同じように減塩をしていたBグループでは、Cと大差ない結果であったり、結果にばらつきも見られます。
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Toft, U.; Riis, N.L.; Lassen, A.D.; Trolle, E.; Andreasen, A.H.; Frederiksen, A.K.S.; Joergensen, N.R.; Munk, J.K.; Bjoernsbo, K.S. The Effects of Two Intervention Strategies to Reduce the Intake of Salt and the Sodium-To-Potassium Ratio on Cardiovascular Risk Factors. A 4-Month Randomised Controlled Study among Healthy Families. Nutrients 2020, 12, 1467.