短鎖脂肪酸をひと括りにするのは危険!「プロピオン酸」が肥満や二型糖尿病リスクを高めるかもしれない。

短鎖脂肪酸 プロピオン酸 酪酸 糖尿病

赤羽(Akabane)

今回は「短鎖脂肪酸を一括りにするのは良くないかも!」というお話です。

「短鎖脂肪酸は健康にイイ」と一括りにしがちだが…

ではまず「短鎖脂肪酸って何ぞ?」というところからおさらいしていきましょう。

脂肪酸 種類 短鎖 中鎖 長鎖

簡単に言うと、脂質を構成する成分である「脂肪酸」の一種で、炭素数で分けた時に一番少なくなる(短くなる)ものです。

短鎖脂肪酸といえば「ダイエット効果がある!」みたいな話を聞いたことがあるかと思いますが、これは短鎖脂肪酸の受容体であるGPR41やGPR43などが、満腹ホルモンの分泌を抑えたり、脂肪の蓄積を邪魔するという報告(#1,#2)が元になっています。

でこの短鎖脂肪酸にはメジャーなもので3つの種類があります。

短鎖脂肪酸 種類 酪酸 酢酸 プロピオン酸

今回はこの中の「プロピオン酸」について、最新情報をアップデートしていきましょう。

短鎖脂肪酸「プロピオン酸」は代謝異常を引き起こす?

2019年にハーバードTHチャン公衆衛生大学院が発表した研究(#3)によると、プロピオン酸がマウスと人間の両方で血糖値を高める反応を引き起こしたようです。

ヒトを対象に行われた実験を見てみると、14名の健康な男女を対象に、まず次の2グループに分けました。

  • 1gのプロピオン酸が含まれた食事をする
  • プラセボグループ(プロピオン酸が含まれない食事をする)

そして食前と食後15分、その後30分ごとで血液サンプルを採取して、計4時間のデータを調べたみたいです。

でこれを全参加者が両グループ体験できるように、1週間の期間を空けてグループを入れ替えて同じことを検証しました。(クロスオーバー試験)

すると結果は、

プロピオン酸グループでは食後に…

結果

  • グルカゴンが多く分泌されていた
  • 脂肪酸結合たんぱく質4(FABP4)が多く分泌されていた
  • ノルアドレナリンも多く分泌された

こんなことになりました。簡単に言うと、食後に交感神経が優位になって、血糖値を高める代謝異常が起きたんですね。

今回確認されたホルモンはどれも交感神経を高めたり、糖新生(別の物質から糖を作り出す)を引き起こすもの。結果的に血糖値が高まって、インスリンを多量分泌させることになり兼ねない、と。

実際にマウス実験のほうでは、プロピオン酸を与え続けると、インスリン抵抗性が強まったり、インスリンの分泌が多くなったり、体重増加も見られた様子。これらは間接的に二型糖尿病のリスクを高める要因であります。

プロピオン酸はどうやって取り込まれる?

「プロピオン酸が二型糖尿病リスクを高めるかもなのはわかったけど、どうやって体内に取り込まれるの?」といった点については、

  • 腸内細菌がエサになる食物繊維を発酵させた時に発生するパターン
  • 食品添加物や自然な成分として食品に含まれるパターン

この2つのパターンがあります。食品だとチーズやパン、焼き菓子系が有名で、あの酸っぱい芳醇な風味はプロピオン酸のおかげだったんですね。(#4)

まとめ

では今回の内容をまとめます。

ポイント

  • 短鎖脂肪酸の一種「プロピオン酸」
  • 代謝に異常を起こして二型糖尿病のリスクを高めるかもしれない
  • 一応マウスだけでなくヒトでも確認できた
  • 少なくとも、短鎖脂肪酸を一緒くたにまとめて扱うのはよくない

大体こんな感じでしょうか。マウス実験ではこれまでも傾向は確認できていましたが、今回ヒトでも確認できた点はおおきいかと思います。

ただ最後に注意点を挙げておくと、

注意
  • 今回摂取量は「1g」のみ→これより少ない量、多い量で同じ結果になるか?は不明
  • 実験のサンプル数が少ない→一般化はまだできない
  • 添加物として摂取するのと、腸内細菌によって発生するのでは違う

この辺りは押さえておくとよろしいかと思います。まだまだ追試が必要という事ですね。

ちなみに日本食品化学研究振興財団(#5)によると、食品添加物としてのプロピオン酸の規定量は、チーズ3.0g/kg、洋菓子2.5g/kgまでだそうです。一日に相当食べ過ぎなければ、今回の量にも達しない感じかと。

赤羽(Akabane)

プロピオン酸はパンやチーズ、焼き菓子などに含まれていて、過去数十年の糖尿病患者増加にはこうした食品が主流になりつつあるという点も大いに影響しているんでは?という見方もできますね。超加工食品を毎日食べ過ぎていなければ、ひとまず大丈夫そうではありますが。

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参考文献&引用

#1 Yumei Xiong, Norimasa Miyamoto, Kenji Shibata, Mark A. Valasek, Toshiyuki Motoike, Rafal M. Kedzierski, and Masashi Yanagisawa. Short-chain fatty acids stimulate leptin production in adipocytes through the G protein-coupled receptor GPR41. PNAS January 27, 2004 101 (4) 1045-1050.

#2 Ikuo Kimura, Kentaro Ozawa, Daisuke Inoue, Takeshi Imamura, Kumi Kimura, Takeshi Maeda, Kazuya Terasawa, Daiji Kashihara, Kanako Hirano, Taeko Tani, Tomoyuki Takahashi, Satoshi Miyauchi, Go Shioi, Hiroshi Inoue & Gozoh Tsujimoto. The gut microbiota suppresses insulin-mediated fat accumulation via the short-chain
fatty acid receptor GPR43
. Nature Communications volume 4, Article number: 1829 (2013).

#3 Amir Tirosh, Ediz S. Calay, Gurol Tuncman, Kathryn C. Claiborn, Karen E. Inouye, Kosei Eguchi, Michael Alcala, Moran Rathaus, Kenneth S. Hollander, Idit Ron, Rinat Livne, Yoriko Heianza, Lu Qi, Iris Shai, Rajesh Garg and Gökhan S. Hotamisligil. The short-chain fatty acid propionate increases glucagon and FABP4 production, impairing insulin action in mice and humans. Science Translational Medicine 24 Apr 2019:Vol. 11, Issue 489, eaav0120.

#4 食品添加物|食品添加物の種類 「プロピオン酸」2019年6月27日アクセス。
http://www.mvleisureworld.com/preservative/entry23.html

#5 公益財団法人 日本食品化学研究振興財団「各添加物の使用基準及び保存基準 (平成29年6月23日改正まで記載)」2019年6月27日アクセス。
http://www.ffcr.or.jp/shokuhin/upload/e5fa1c37b97cd7751ae74b0fbc78567833f7c77b.pdf