最も総死亡リスクが低くなるアルコール摂取量はなんとゼロ!という驚きのメタ分析

2019年6月9日考察編,

世間一般に広まっている「程々の酒は健康にイイ!」説

酒 アルコール 総死亡率

今回は飲酒量についての新しい知見を紹介します。
 
 
まずは世間一般に浸透している説からザックリおさらいします。実は最近、科学の世界では実しやかにこんな説が浸透しております。

 

  • 少量のお酒は健康にイイ!

 

こうした主張は一応科学的な根拠もありまして、例えばこんな報告を基にしているんですね。
 

  • 34件の研究より1015835名を調査したメタ分析によると、飲まない人と比べて、男性なら1日3杯(18g程度)、女性なら1日2杯(12g程度)までのアルコール摂取で総死亡リスクが低かった!(#1)
  • 84件の研究を精査したメタ分析によると、全く飲まない人と比べて、1日1杯以下(2.5–14.9g)のアルコールを摂取する人は心疾患全般の発症、死亡リスクが最も低かった!(#2)
  • 18の研究を精査したメタ分析の結果、飲まない/たまに飲む人と比べて、少量(≦12.5g)飲む人はがんによる死亡リスクが9%低かった!(#3)

 
こうした根拠に加えて、最近ではお医者さんの中にも酒はじゃんじゃん飲もう!みたいに仰る方がいてビックリです。しかもテレビによく出演されていて、そこで仰るものですから、真に受けて飲酒量を増やしている方も大勢いらっしゃるのではないかと。

 
実際に中身を覗いてみると、著者ご自身でワインを飲んだ後の血糖値上昇が抑えられていた!というように、出典が明記されていない研究をいくつか紹介していました。
 

「ちょっと待て、酒はたった一杯でもアウトかもよ」最新&堅固なメタ分析の結果

以上のような多数のメタ分析(やお医者さんの意見)によると、どうやらお酒は程々なら体によろしいとのこと。普通に聞いていたら鵜呑みにしてしまいそうですが、ここで安心してはいけないのが科学の世界。
 
 
2018年に発表されたメタ分析(#4)によると、なんと「酒(アルコール)は一杯でも死亡リスクが高まるぞ」という結論になっていて仰天。詳しい内容を見ていくと、
 

  • 1990~2016年の195カ国の694ものデータソースを精査
  • 世界中の15~95歳以上までの人々をカバー
  • 飲酒と総死亡リスクをはじめ循環器疾患や糖尿病リスクなどの相関を算出

 
こんな様子。まず「さっきのメタ分析と何が違うの?」という点ですが、今回のメタ分析はこれまでの飲酒研究の問題点を指摘した上で、そこを埋め合わせるデザインだったりします。
 

過去の数々の研究では「少量〜中量のアルコールは総死亡リスクを下げる!」と結論づけていた。しかし、これらの研究はサンプル数が少なかったり、他の影響の与える要素を考慮し切れていなかったりと、リスクを算出するに適したカテゴリを参照していなかった。[筆者訳]

 
特に重要なのが強調部分。過去の研究では、いわゆるアブステイナーバイアスを考慮しきれてなかったんですね。これは簡単に言うと、「お酒を飲んでない人」を分ける際に、「今は飲んでいないけれどかつては結構飲んでいた人」を対象に含めてしまうというもの。
 
 
そして現に2016年に発表されたメタ分析(#5)では、こんな結果になっております。

 

  • アブステイナーバイアスと研究間の質で調整をかけたところ、少量の飲酒による総死亡リスクの低下は見られなくなった{調整前..14%低下 調整済..3%低下(統計的優位差なし)}

 

更に今回の研究の利点としましては、
 

  • 一時的な旅行者による飲酒量が考慮されている
  • 飲酒量に関してより客観性の高い調査データ(×セールスデータ)が使用されている
  • 調査対象にはこれまで観察研究の対象にならなかったような群(若年~高齢)まで含まれている

 
この辺りも強いです。そしてこの強めなメタ分析の結果は、

 

  • 最も健康リスクが低くなるアルコール摂取量はゼロ!

 

という驚きの結果に。もう少し詳しい知見も見ていくと、

 

  • 世界的にみてアルコール消費は2016年の早死にと疾患の7番目の危険因子だった
  • 15~49歳の間で、アルコール消費は女性の3.8%、男性の12.2%もの死亡原因だった(結核、交通事故、自傷行為)
  • 50歳以上の間では、アルコール消費による死は女性の27.1%、男性の18.9%をガンが占めていた
  • 一方で虚血性心疾患や糖尿病に対してはリスク予防の効果が見られたものの、こうしたメリットを相殺するレベルでアルコール摂取はガンのリスクを高める

 

こんなことも分かっております。心疾患や糖尿病リスクは一日一杯くらいで最も低かったんですが、一方で乳がんや口腔がんなどのリスクは飲んだ途端に上昇。つまり厳密に言うと、どの病気のリスクを取るかでベストな飲酒量は微妙に変わってきそう。(どっちにしても0か1杯かくらいですが)

dummy
赤羽(Akabane)

というわけで、飲酒についての是非を問うテーマでしたが、結論から言うと「ちょっとのお酒は体にいいよ!」はまだまだ断定できません。勿論飲みすぎは健康を害しますので少量のほうが良いのは間違いないですが。極力飲まないようにしつつ、健全な人間関係のためにたまの誘いには乗る感じがよろしいかと思います。

参考文献&引用

#1 Di Castelnuovo A, Costanzo S, Bagnardi V, Donati MB, Iacoviello L, de Gaetano G,”Alcohol Dosing and Total Mortality in Men and Women An Updated Meta-analysis of 34 Prospective Studies“,Arch Intern Med. 2006 Dec 11-25;166(22):2437-45.

#2 Paul E Ronksley, Susan E Brien, Barbara J Turner, Kenneth J Mukamal, William A Ghali,”Association of alcohol consumption with selected cardiovascular disease outcomes: a systematic review and meta-analysis“,BMJ 2011; 342.

#3 Jin M, Cai S, Guo J, Zhu Y, Li M, Yu Y, Zhang S, Chen K,”Alcohol drinking and all cancer mortality: a meta-analysis“,Ann Oncol. 2013 Mar;24(3):807-16.

#4 GBD 2016 Alcohol Collaborators,”Alcohol use and burden for 195 countries and territories, 1990–2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016“, VOLUME 392, ISSUE 10152, P1015-1035, SEPTEMBER 22, 2018.

#5 Stockwell, Zhao J, Panwar S, Roemer A, Naimi T, Chikritzhs T,”Do “Moderate” Drinkers Have Reduced Mortality Risk? A Systematic Review and Meta-Analysis of Alcohol Consumption and All-Cause Mortality.“,J Stud Alcohol Drugs. 2016 Mar;77(2):185-98.