新型コロナウイルスの陰謀論を真っ向から否定する論文が医学雑誌「Lancet(ランセット)」から発表される

新型コロナウイルスの陰謀論を真っ向から否定する論文が医学雑誌「Lancet(ランセット)」から発表される

赤羽(Akabane)

今回は「新型コロナウイルス陰謀論」についてのお話です。

新型コロナウイルスの陰謀論を真っ向から否定する論文が「Lancet(ランセット)」から発表される

ウイルス感染で怖いのは、人から人へと負のムードやデマ・フェイクニュースが広まってしまうことで、今回の新型コロナウイルスでも御多分に洩れずこうした事態が起こっています。

中でも最近注目されているのが、「新型コロナは人工的につくられた生物兵器である!」という主張です。この記事では上記のテーマについて見てみましょう。

医学雑誌「Lancet(ランセット)」掲載の研究が新型コロナの陰謀論をバッサリ否定する

2020年3月、医学雑誌の権威「Lancet(ランセット)」に掲載された研究(#1)では、新型コロナが人口ウイルス、生物兵器である!とする主張は、全然もっともらしくない!とバッサリ否定されていました。

さてこの研究は複数の関連研究に基づいたレビュー研究ですが、上記の根拠としてざっとこんな反論をしています。

世界各国の科学者たちが、病原体である「SARS-コロナウイルス」をゲノム解析し、その研究結果を出版しているが、そのどれもが、他の病原体同様に今回のコロナウイルスも自然の中で発生したものだと強く結論付けた。

では研究チームが仰っている「研究結果」とは例えばどんなものなのでしょう?こちらもザッと目を通すと、こんなエビデンスがありました。

  • 2020年に科学雑誌「Nature」に掲載された研究では、新型コロナ拡大初期の段階で感染した5名の全ゲノム配列を解析したところ、「SARS-コロナウイルス」とほぼ一致し、79.6%の配列が同じだったといい、またコウモリのコロナウイルスとは96%が一致、この結果から発生源はコウモリではないかと結論づけられている(#2)
  • 2020年に医学雑誌「Lancet」に掲載された研究では、新型コロナの入院患者9名(うち8名は武漢華南海鮮卸売市場へ行っていた)のDNAを気管支肺胞洗浄液で採取、全ゲノム配列を解析したところ、コウモリが発生源のSARS-コロナウイルスに似た2つのウイルスと88%の一致、SARS-コロナとは79%、MARS-コロナとは50%が一致していた。遺伝子構造的にはSARS-コロナとは異なるとの見解だそう(#3)
  • 2020年に医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載された研究では、武漢の重篤な肺炎患者3名のDNAを気管支肺胞洗浄液で採取、全ゲノム配列を解析したところ、コウモリが発生源のSARS-コロナウイルスに似た2つのウイルスと85%が一致していた(#4)

まとめると、どの研究も「コウモリが発生源の可能性が高い」と主張していて、その根拠は「コウモリが持つSARS-コロナに似た病原体と遺伝子レベルでほぼ一致するから」ということです。

注意点・まとめ

今回のデータを見る限り「新型コロナウイルスは人工的につくられた生物兵器である!」という主張はかなり眉唾モノであると言えそうです。

陰謀論は往々にして一聞すると説得力がありそうな語り口で広まっていくので、情報のパンデミックになりやすいですが、今回のようにしっかりと反駁できるエビデンスがあれば、どちらの方が信憑性が高いかが見えてきやすいんではないかと思います。

ポイント
  • 新型コロナは人工的につくられた生物兵器である!という主張はかなり眉唾モノ
  • 今回の研究では、新型コロナ感染者からDNAサンプルを採取、ゲノム配列を解析したところ、コウモリが持つSARSコロナに似たウイルスとほぼ一致したとの研究結果が多数報告されていることを主張している
  • 結論、現段階で新型コロナは少なくとも自然の中で発生し、おそらくコウモリが発生源であると考えるのが自然

新型コロナの基本的な対策やその他情報の真偽については以下でまとめています。今後も逐一新情報があれば共有していくので、興味のある方は引き続きチェックしてみてください。

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参考文献&引用

#1 Charles Calisher et al. Statement in Support of the Scientists, Public Health Professionals, and Medical Professionals of China Combatting COVID-19. Lancet, 395 (10226), e42-e43.

#2 Peng Zhou, et al. A pneumonia outbreak associated with a new coronavirus of probable bat origin. Nature volume 579, pages270–273(2020).

#3 Lu R, et al. Genomic characterisation and epidemiology of 2019 novel coronavirus: implications for virus origins and receptor binding. Lancet, Volume 395, Issue 10224, P565-574, February 22, 2020.

#4 Zhu N, et al. A novel coronavirus from patients with pneumonia in China, 2019. N Engl J Med, 382 (8), 727-733 2020 Feb 20.