赤羽(Akabane)
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亜鉛トローチに風邪の治りを早める効果はない!という驚きの実験結果
前回にも、亜鉛トローチで風邪の治りが早まった!というメタ分析(#1)を紹介しました。
で最近このテーマについて新しいデータが出て参りましたので、ここでは詳しく中身を覗いていきましょう。
亜鉛トローチで風邪の治りは早まらない!という驚きの実験結果
2020年にヘルシンキ大学が発表したRCT(#2)によると、定評のある亜鉛トローチに風邪の治りを早める効果はなかった!という結果になっていました。
この研究では253名を対象に、そのうち風邪をひいた参加者87名(中央値で49歳)をランダムに2つのグループに分けました。
- 亜鉛トローチ(45名):13mgの亜鉛が含まれる亜鉛酢酸のトローチを舐める
- プラセボグループ(42名):亜鉛トローチに味を似せた偽のトローチを舐める
これを風邪をひいてから一日6回、最大で5日間試してもらったようで、するとこんな結果になったようです。
- 風邪をひいてから10日の追跡期間で、両グループに風邪の回復率の差は見られなかった
- 鼻炎持ちなど、風邪に影響する要素を調整したところ、風邪の持続期間は亜鉛トローチで平均7日、プラセボで5日だった
まとめると、亜鉛トローチを舐めても風邪の回復が早まる効果はなかったどころか、若干プラセボグループの方が風邪が早く治る傾向が見られたんですね。(ただし統計的に有意ではない)
また副作用を見てみると、特に何もなかった人は亜鉛トローチで39%、プラセボで69%だった様子。具体的な副作用は口の渇きや痛みなどが主だったようです。
注意点・まとめ
ただし注意点として、今回の研究で風邪をひいた人の9割が女性で、うち74%が日頃から子どもとの接触があった点は押さえておくと良さそうです。つまりサンプルが偏っていてどこまで一般化できる内容なのか?はハッキリしません、と。
また風邪の治りの基準に関しても、参加者らが「治った」と感じるかどうか?で決めていたようで、主観が混じっている可能性もあります。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 兼ねてから亜鉛トローチで風邪の治りが早まる!と言われている
- だが今回の最新研究ではその効果が確認されず、むしろ亜鉛トローチを舐めたグループで微妙に風邪の治りが遅れていた
- 過去の研究結果と比較すると、現状ではまだ「風邪の治りを早める!」という説が有効かも
こんな感じでしょうか。今回の研究は単体ですが、亜鉛トローチの風邪への効果を実証した過去研究はメタ分析としてまとめられているので、この点ではまだ「効果なし!」と決めつけるには早いかと思います。
赤羽(Akabane)
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#1 Harri Hemilä. Zinc lozenges and the common cold: a meta-analysis comparing zinc acetate and zinc gluconate, and the role of zinc dosage. JRSM Open. 2017 May; 8(5): 2054270417694291.
#2 Harri Hemilä, Jari Haukka, Marianne Alho, Jussi Vahtera, Mika Kivimäki. Zinc acetate lozenges for the treatment of the common cold: a randomised controlled trial. BMJ Open, 2020; 10 (1): e031662.