赤羽(Akabane)
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典型的なナルシストは略奪愛に走りやすいが、パートナーが居る相手に特別惹かれるわけではないらしい
ここで「典型的な」という言葉を使っている理由は、ナルシシズムにも色々な種類があるからです。2015年の研究(#1)でも、少なくとも3種類あるという報告が上がっていて、典型的なイメージから内気なタイプまで居るようです。
でその中で一般的なイメージに近い「オバート・ナルシシズム」の特徴としては、【傲慢、わがまま、自己陶酔】などが挙げられていて、ここから「オバート・ナルシストは他人のパートナーを平気で奪うようなこともしてしまうんでは?」と考えられるわけです。
ナルシストは略奪愛に走りやすいが、そういうシチュエーションに恋焦がれているわけではない
そしてこの問題について、2018年にオハイオ州立大学が発表した研究(#2)では、ナルシストは他人のパートナーを奪いやすいのか?という点を調べていました。
研究内では4つの実験が行われて、①ナルシストは略奪愛を多く報告するのか?、②ナルシシズム以外の他の特性が影響していないか?、③ナルシストは既に他人のものになった人が好きなのか?、この3点をメインに調査していたようです。
早速ですが、全体の実験から分かったことを抜き出すとこんな感じです。
- 男女問わず、他の性格特性の影響を調整しても、オバート・ナルシシズムの度合いが高いと略奪愛を試みる傾向が見られた
- オバート・ナルシストが実際に略奪愛に成功する割合としては、男性よりも女性で有意になる傾向があった
- でもオバート・ナルシストが格別他人のパートナーに惹かれるというわけではなかった
まとめると、男女で微妙な違いはあるものの、オバート・ナルシシズム性向が強いと略奪愛をする傾向が見られたんですね。しかもこうした結果は、「ビッグ5性格特性」など他の特性を考慮しても見られたようで、オバート・ナルシシズムのレベルが強く影響していることが分かります。
また、オバート・ナルシストは略奪愛に走りやすいものの「既に相手が居る」という状態に惹かれやすいということはないらしく、自分自身が独り身なら独り身の相手を、自分にパートナーが居る場合はパートナーが居る相手を求める傾向も見られた様子。つまり、オバート・ナルシシズム傾向が強い人は、自身の置かれた境遇に似た相手を探し求めているんではないか?と。
注意点・まとめ
ただしこの研究でも幾つか注意点があって、ザっと次のような点は押さえておくと良さそうです。
- 調査方法は自己申告とシミュレーションゲーム:略奪愛に走ったこと、成功したこと、などは参加者のセルフレポートだったので主観が混じるし、シミュレーションゲームでの結果がリアルに反映されるとも限らない
- 人種が偏っていて一般化できるか分からない:白人の割合が大半で、他の人種でも同様に当てはまるか?は分からない
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- ナルシシズムの中でも一般的な認識に近い「オバート・ナルシシズム」
- この性向が強い人は略奪愛に走りやすかったが、既に相手が居る人に特別惹かれるというわけではなかった
- この辺りは自分自身がそもそも独り身なのか?という事情も影響してきそう
こんな感じでしょうか。一般的なイメージに近いナルシストは、略奪愛に走りやすいけれど、そういったシチュエーションに恋い焦がれているわけではなさそうだ、と。
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Caligor E, Levy KN, Yeomans FE. Narcissistic personality disorder: diagnostic and clinical challenges. Am J Psychiatry. 2015 May;172(5):415-22.
#2 Amy B. Brunell, et al. Are narcissists more attracted to people in relationships than to people not in relationships? PLoS One. 2018; 13(3): e0194106.
※当記事はメンテナンス済みですが、2019年12月8日に公開された時点での内容となっておりますので、情報が古くなっている場合もあります。