赤羽(Akabane)
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肥満のパラドックス:ちょっと太ってるほうが長生き!は本当なのか?
巷では「ある程度太ってた方が長生きだぞ」という説がかなり浸透していて、これを肥満のパラドックスといいます。
この説は確かに色々な研究で報告されてはいるんですが、問題はおデブのボーダーラインを各自で勝手に解釈してしまうこと。そこで今回は、①体型で早死にリスクはどう変わるのか?、②どのくらいの体型が長生きにはベストなのか?といった問題を詳しく見ていきましょう。
「ちょっとデブな方が長生き」説は本当?近年の質高めな研究によると..
この問題について参考になるのが、2018年にロンドンスクールオブハイジーン&トロピカルメディシンが発表した研究(#1)で、イギリスのプライマリケアのデータベースから3,632,674名を対象に、彼らの早死にリスクとBMIの相関を調べたものです。
この研究が優れているのは、ザッとこんなところです。
- 喫煙歴でリスクを切り分けている:喫煙は早死にリスクと体型に大きな影響を及ぼすが、過去の研究ではこの辺りを細かく分けて分析しているものがあまりなかった
- 死因まで細かくみている:例えば交通事故などによる死も考慮して分けて分析している
- 最初の5年は分析の対象外としている:BMIを測定しはじめてから最初の5年くらいは、元々抱えていた疾患などによる死の影響を除くために分析から外している
でこの分析の結果、全体では367,512名が調査期間中に亡くなって、非喫煙者1,969,648名では188,057名が亡くなりました。そしてここからわかったのは、次のようなことでした。
- BMI21~25kg/㎡で最も死亡リスクが低かった
- このラインより下のBMIでは、5kg/㎡増加するごとに死亡リスクは19%下がっていった
- このラインより上のBMIでは、5kg/㎡増加するごとに死亡リスクは21%上がっていった
まとめると、BMIで見ると標準体型で最も早死にリスクが低かったんですね。グラフにすると、Jカーブを描く感じで、真ん中の標準BMIでリスクが一番底にくるイメージです。(※BMIは30超えると肥満体型扱い)
また死因別にみると、がんや呼吸器系疾患、循環器系疾患による死はBMIとJカーブの相関が見られましたが、交通事故による死とは関係がありませんでした。
ここまでを振り返ると、BMIでみて標準体型くらいが長生きにベストで、痩せもおデブも極端になるほど死亡リスクは高まるとの結果が出ました。
ただ、痩せによる死亡リスク増加は、分析で完全に取り除ききれなかった喫煙による影響が残っているかも..?ということでした。というのも、喫煙者はタバコで食欲が減退して、結果的に痩せ型になることも多いので、痩せ型で死亡リスクが上がるのにはこの影響も関係してくるんですね。
他には、死因として自傷や暴力沙汰による死というのもあって、コレはBMIとは逆の相関が見られたようです。つまり痩せ型になるほどこうした要因による死亡リスクは高まる、と。
でこうした研究結果をまとめて、研究チームは具体的な寿命まで出してくれていました。
- 痩せ型(<18.5kg/㎡)は寿命が4.3年縮まる
- 太り気味(25~29.9kg/㎡)は寿命が1年縮まる
- 肥満体型(≧30.0kg/㎡)は寿命が4.2年縮まる
こうしてみると肥満のリスクが一目瞭然ですね。痩せ型もタバコの影響が若干残っているものの、寿命はかなり縮まる様子。どうやら標準体型が安パイというのは間違いなさそうですね。
注意点・まとめ
ただしこの研究にも注意点はあって、ザッとこの辺りは押さえておくとよろしいかと思います。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- ちょっと太ってる方が長生き!説はよくみるとそうでもなかった
- むしろ質の高いデータでは、太り気味~肥満体型はあらゆる生活習慣病による死亡リスクと相関が見られていた
- 結局長生きにベストなのは標準体型でした
こんな感じでしょうか。結局は標準体型が一番!という何とも普通な結論に落ち着きますね。
赤羽(Akabane)
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#1 Krishnan Bhaskaran, Isabel dos-Santos-Silva, David A Leon, et al. Association of BMI with overall and cause-specific mortality: a population-based cohort study of 3·6 million adults in the UK. THE LANCET Diabetes & Endocrinology, VOLUME 6, ISSUE 12, P944-953, DECEMBER 01, 2018.