赤羽(Akabane)
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犬と触れ合うアニマルセラピーは青少年が抱えるメンタルの問題にどんな効果があるのか?
犬や猫などのペットは一緒に居るだけでとても癒しになるかと思いますが、セラピーの一環としては一体どんな効果があるんでしょう?
犬によるアニマルセラピーは青少年のメンタルにどんな影響を及ぼすのか?
2019年にメルボルン大学が発表した系統的レビュー(#1)では、7件の研究から99名の10代を対象に、犬によるアニマルセラピーはメンタルに問題を抱えた青少年たちにどんな効果をもたらすのか?を調べていました。
参加者の抱える問題には、性的虐待の過去や感情コントロールが難しいケース、PTSDなどの精神疾患で通院の必要があるケースまで様々な事情がありました。
でこうした問題に対して、大体数週間~数か月のアニマルセラピーを総計8.3~36時間ほど行っていったんですが、具体的にはグループの場合や個人でカウンセリングをやりつつ進める場合など、こちらも中身は様々でした。
ではこうしたワンちゃんによるアニマルセラピーはどんな効果があったんでしょう?結果をザっと見ていきましょう。
- PTSDやうつ病の診断スコアが有意に改善した
- 現場のスタッフの判断による適応能力評価の改善、出席率アップなども見られた
- 社会的な繋がりを形成しようとする傾向、犬への愛情、モチベーションの向上なども見られた
結果は、7件という少ない研究数ながらも、ぽつぽつとアニマルセラピーの精神的&社会的なメリットが報告されていました。
ただこうした結果は一貫して表れたわけではなくて、ある研究では見られたものの、こっちの研究では確認されなかった!みたいな感じでまちまちでした。この点は、実験のデザインがそれぞれかなり違っていることを考えると、致し方ない話かとは思いますね。
注意点・まとめ
また注意点も幾つかあって、この辺りは押さえておくと良さそうです。
- サンプルサイズが小さい:7件の研究を合わせても100名に満たない対象者数でデータとしては弱い
- どこまで一般化できるか分からない:研究が行われた国はアメリカやイタリアなどが大半で、対象の年齢層も青少年のみ
- セラピーのデザインに一貫性がない:これは仕方がないものの、研究間でセラピーの内容にバラつきがあったり、犬の種類や性格などの説明が一切ない点もちょっと不親切
とりあえず3つ挙げましたが、この他にも課題が多いテーマで、まだ細かい部分をハッキリさせるにはデータが少なすぎる印象です。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 犬と触れ合いカウンセリングも組み合わせるアニマルセラピー
- 過去の研究をまとめた結果、全体的に精神疾患を改善したり青少年の問題行動を減らす効果が見込めそう
- 細かい部分のデータが決定的に足りないので、まだこのテーマについては大まかな見当しかつけられない
こんな感じでしょうか。ワンちゃんが癒しなのは間違いないですが、犬との触れ合いを取り入れたセラピーの効果は、まだハッキリと確立されていないようです。
赤羽(Akabane)
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#1 Jones MG, Rice SM, Cotton SM. Incorporating animal-assisted therapy in mental health treatments for adolescents: A systematic review of canine assisted psychotherapy. PLoS One. 2019; 14(1): e0210761.