赤羽(Akabane)
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認知バイアス完全版!思い込みで自分自身に騙されないための対策20箇条一覧
認知バイアスとは、そのまま認知の偏りのことで、要は思い込みや勘違いを引き起こして正確な判断の邪魔になるモノです。例えば、自分に都合の良い主張を裏付けるデータばかり集めてしまう「確証バイアス」辺りは有名でしょうか。
こうしたバイアスは、そもそも脳が楽をするために作ったショートカットが原因で起こるものですが、これも効率よく情報処理をするには欠かせない機能ではあります。
「脳がまともに機能するのに必要だからしょうがない..でも気づかないうちに思い込みに振り回されるのも嫌だ…」そこでここからは、認知バイアスにまつわる大事なポイントと、知っ得なガイドをザっと見ていきましょう。
認知バイアスの総まとめ!大事な4つのポイントと心得ておきたい20箇条
今回の出典は、著書『Why Are We Yelling?』で有名なバスター・ベンソン氏が書いたコラム(#1)で、沢山ありすぎて情報がバラバラな認知バイアスについて、かなり分かり易くまとめてくれています。
では早速、認知バイアスに立ち向かううえで大事な4つのポイントを見てみましょう。
- 情報が多すぎる時
- 情報に十分な判断材料がない時
- 素早い行動が迫られる時
- 情報が取捨選択される時
これらは認知バイアスが起こりやすい条件をまとめています。まずは敵の実情をよく知っておこう!ということですね。
では次に、これら4つのポイントごとに押さえておきたい合計20箇条を見てみましょう。
1. 情報が多すぎる時
わたし達は既に記憶に刷り込まれた情報や頻出の情報には気付きやすい
かなり前に見たモノの記憶よりも、最近覚えたモノの方が記憶から取り出しやすいのは何となく分かり易いかと思います。
- 利用可能性ヒューリスティック:人の判断や思考はパッと思いついたアイデアの影響を受けやすい
- 単純接触効果:モノや人に繰り返し接するほど好感度が上がっていく
- 注意バイアス:何度も繰り返し起こったり浮かんだりする物事に気を取られやすくなる
奇妙、面白い、見た目の印象が強い、人の形をしたモノなどはそうでないモノより記憶に残りやすい
私たちの脳は、普通じゃないモノを重要だと判断する傾向があります。一方で、普通のモノや期待通りのモノはスキップされる傾向に..。
- 孤立効果:他と違うモノがあると印象に残りやすい
- ネガティビティ・バイアス:人はネガティブな出来事や感情に反応しやすく印象に残りやすい
- 出版バイアス:科学の研究などで見栄えの良い結果が確認された論文ばかり出版されてしまう偏り
わたし達は何かが変化した時に意識が向きやすい
何かが変化した時…似ているモノを二つ比べている時…このように「違い」を比べる場合のほうが、同じモノを再評価する時よりも印象に残りやすくなります。例えば、酸っぱいモノを食べた後に甘いモノを食べれば、その味の違いが強烈な印象を与えます。
- アンカリング:先に何か情報を与えられることでその後の判断が歪められてしまうこと
- 対比効果:一つより二つのモノが比較された時、その違いが大きいほど印象に残りやすい
- フレーミング効果:私たちの判断は絶対的に行われずに、その場の心境や質問の提示方法などに影響を受ける
わたし達は自分の持つ信念や考えを裏付ける情報に惹きつけられる
私たちは自分の持つ意見や信念に反する物事を無視したり、あまり細かく見ようとしない傾向があります。
- 確証バイアス:自分の持つ意見や信念を裏付ける証拠ばかり集めて、反対意見を支持するデータはあまり細かく見ようとしない傾向
- 選択支持バイアス:自分が選んだ物事を肯定的に捉えようとする心理
- ダチョウ効果:重要なことを先延ばしにして、現実から目を背けようとする心理
わたし達は自分自身の欠点よりも他人の欠点に気付きやすい
- ナイーブ・シニシズム:周りのみんなは自分のことになると都合の良い評価をしているに違いないと思い込む
- バイアス・ブラインドスポット:他人の判断や思考にはバイアスがかかっているとすぐ気づくのに、自分のコトになるとなかなか気づけない
- ナイーブ・リアリズム:自分がこうだ!と思ったことは周りも同意見に違いないと思い込む
2. 情報に十分な判断材料がない時
わたし達は、わずかなデータの中にさえストーリーやパターンを見出そうとする
そもそも、私たちは世界の全ての事象のうちほんのひとかけらしか知りません。にも拘わらずこの世の中について知った気になれるのは、脳が情報を補完しているからです。
- ホットハンドの誤謬:たまたま成功した場合でも、一度成功したらもっとやればまた成功する確率が高まると思い込む心理
- クラスター錯覚:統計でサンプル数が少ない場合に、必然生じるランダムな点や線、塊に何か法則がある!と思い込む
- ギャンブラーの誤謬:確率論的に試行回数が少ないのに、そこから間違った結論を出してしまう
わたし達は情報のギャップや新事実に出くわすと、その特徴をステレオタイプや一般化、過去の前例で埋めようとする
私たちの脳は、既に頭にインプットされた情報に似ていると感じたモノやそのグループに分類できる情報は何なく推測で処理してしまいます。
- ステレオタイプ化:新しいモノまで自分の中にある既存の枠組みの中に押し込もうとする過度な一般化
- 集団帰属エラー:集団の各メンバーはその集団の特性と同じ、あるいは集団の決定は各メンバーの総意であるという勘違い
- プラシーボ効果:過去の経験や知識を基に思い込むことで、本当に同じ効果が表れることがある
わたし達は、身近だったり好きなモノや人のほうがイメージしやすい
上の項目と似ていますが、私たちは自分にとって身近だったり、好きなモノの情報を取り出し易くなっていて、これを使って目の前の情報のギャップや少なさを埋め合わせる傾向があります。
- ハロー効果:人やモノの何か突出した面が一つ見つかると、他の分野でも同じように優れているに違いないに思いこむ
- 内集団バイアス:自分と共通点がたくさんある人や同じ集団のメンバーに肩入れする心理
- チアリーダー効果:個人はグループの中に居るとより魅力的に映る
わたし達は見積もりや数字を見やすくするために単純化しようとする
私たちの脳は、ちょっとでも正確なデータが欠けるとひどい見積もりを出してしまうことがあります。
- メンタルアカウンティング:お金に関して判断をするときに総合的にではなく一時の狭い枠組みで決めてしまうこと
- 正常性バイアス:「自分は大丈夫だろう」と災害などの危険性を低く見積もってしまう心理
- マーフィーの法則:「失敗する可能性のあるものは失敗する」のように確率論を度外視したシンプルな法則を導き出してしまう。(他、泣きっ面に蜂など)
わたし達は他人が考えていることを分かっていると思いこんでいる
私たちは、周りが自分の思うことをよく知っていて、自分も周りが思っていることは分かっていると思い込むことがあります。
- 知識の呪い:自分の持つ知識を基準に、相手も同等のレベルで知っている前提で話してしまう心理
- スポットライト効果:自分の存在は周りに気づかれていると実際以上に思い込む
- 透明性の幻想:自分の抱えている悩みや思っていることは皆分かってくれてるよね?という幻想
わたし達は過去や未来の情報を基に今の方針を打ち出そうとする
私たちの脳は、物事がどう動いていくか?進んでいくか?の予測も苦手です。これを補うために今の情報を引っ張り出すんですが、この時にバイアスが生じやすくなります。
- 後知恵バイアス:物事が実際起こってから「予測できた」と思い込む心理
- デクライニズム:社会や機関は衰退の一途をたどっていると思い込む
- バラ色の回顧:「昔はよかった..」と過去を今よりも好意的に捉える心理
3. 素早い行動が迫られる時
行動するためには、わたし達は自分の影響力に自信を持ったり、していることの重要性を感じる必要がある
- 自信過剰:主観的に見て「自分ならできる!」と強く思いこむ心理
- 自己中心性バイアス:自分は周りの誰より頑張っている!みたいに自分が一番、自分が中心だと思い込む心理
- 偽の合意効果:自分の考えや嗜好、価値観と同じものを周りも持っていると思い込む心理「みんなもそうだよね?」
集中するのに、わたし達は時間がかかるものや関連が薄いものよりも、すぐ解って関連も濃いものを好む
私たちの脳は、未来よりも今のモノ、よくわからないモノよりもハッキリと分かり易いモノにより高い価値を置く傾向があります。
- 新奇性へのアピール:新しいから、現代的だから、という理由で何かが優れている、正しいと主張する
- 双曲割引:遠い未来のモノを軽く見たり、近い未来や今の気持ちや物事に大きな価値を感じる心理
- 身元のわかる犠牲者効果:例えばアフリカの子どもたちへの寄付を募る時は、「何千人の子どもが苦しんでいます」よりも「2歳のダニー君が水不足で苦しんでいます」のほうが寄付に漕ぎつける割合が高い
何かを成し遂げるのに、わたし達は既に時間や労力を投資したモノを優先的にやり遂げようとする
- 授かり効果:人は自分の所有物により価値を置いて失うのを恐れる
- サンクコスト効果(埋没費用):人は何かに労力やお金を投資するほど、それを失うことを恐れて、ムダと分かっていても投資を続けてしまう
- 立場固定:最初の一手がもう既に合理的ではなくなった場合に、合理的な方向へ舵を切るよりも、そのまま最初の決断を正当化してしまう心理
失敗を避けるために、わたし達は集団での自治や地位を保ったり、取り返しがつかない決断は避けようとする
何か選択を迫られた時、私たちは最もリスクが小さい選択肢を選ぶ傾向にあるようです。
- 心理的リアクタンス:何かグループの調和や行動の自由を脅かす提案や人、ルールに対して反発したり否定的になったりする
- おとり効果:二つの甲乙つけがたい選択肢の中に一つ、明らかに劣っている第三の選択肢を組み込むことで狙った選択肢を買ってもらえやすくなる
- 社会的比較バイアス:何かの面で自分より優れた存在を嫌ったり競争心をむき出しにしたりする心理
わたし達はシンプルな選択肢を好み、より複雑だったり曖昧な選択肢よりも完全な選択肢を好む
私たちの脳には、楽を求める性質があることは冒頭で触れました。脳にとって「楽なこと」とは具体的に、すぐ出来ること、シンプルなことなどです。
- 信念バイアス:世の中の物事について考える時に、実際の証拠や信憑性よりも自分の信念や価値観に基づいて、もっともらしい結論を導き出してしまう
- 合接の誤謬:一般的であるより特殊な物事のほうが起こりやすいと感じてしまう心理
- パーキンソンの凡俗法則:些細なことを大げさに捉えすぎる
4. 情報が取捨選択される時
わたし達は事後に記憶の一部を改変したり強化したりする
情報処理のプロセスにおいて、私たちが得た記憶は強化されたり、細かい部分が抜け落ちたりします。また新しい記憶に結び付けるために、もとあった場所から情報が移動することもあります。
- 潜在記憶:無意識のうちに忘れ去られていた記憶が戻ってきて、それを新しい記憶だと思い違いすることがある
- 分散効果:学習は一度にまとめてやるより一定の期間内で分散させてやった方が記憶に残りやすい
- ソースの混同:頭の中で情報の出どころがごちゃ混ぜになってしまう
わたし達は共通ルールのために細部を犠牲にする
私たちの脳は必要ではなくても一般化を行います。これが時に、よくない結果になることもあります。
- 暗黙のステレオタイプ:無意識のうちに性別や人種、体型などで一般化された集団に対して偏見や思い込みをもってしまう
- 偏見:性別や人種などの違いによって、差別や敵視をしてしまう
- フェイディング・アフェクトバイアス:ネガティブな物事に結び付いた記憶は都合よくすぐに忘れ去られて、ポジティブなモノは残りやすい
わたし達は出来事やリストをキーになるいくつかの重要な要素まで絞り込む
私たちの脳は物事を一般化するために、候補になる出来事や大事な要素から幾つかをピックアップして、それを一般化グループの代表的な例とする傾向があります。
- ピークエンドの法則:物事やストーリーの最高潮と終わりが最も記憶に残りやすい
- シリアルポジション効果:連続した情報では最初と最後が最も記憶に残りやすい
- リセンシー効果:最新の情報に基づいて物事を判断しようとする傾向
わたし達はどのように体験したか?によって違った記憶を形成する
- 画像優位性効果:言葉や文字よりも実際の画像見たほうが記憶に残りやすい
- テスト効果:模試などで覚えたい記憶をテストしたほうが長期的な記憶として定着しやすい
- 自己参照効果:情報に何らかの共通点や関わりがあった場合のほうが、その記憶が定着しやすい
まとめ
では最後に今回のダイジェストを見ていきましょう。
- わたし達は既に記憶に刷り込まれた情報やよく出てくる情報には気付きやすい
- 奇妙、面白い、見た目の印象が強い、人の形をしたモノなどはそうでないモノより記憶に残りやすい
- わたし達は何かが変化した時に意識が向きやすい
- わたし達は自分の持つ信念や考えを裏付ける情報に惹きつけられる
- わたし達は自分自身の欠点よりも他人の欠点に気付きやすい
- わたし達は、わずかなデータの中にさえストーリーやパターンを見出そうとする
- わたし達は情報のギャップや新事実に出くわすと、その特徴をステレオタイプや一般化、過去の前例で埋めようとする
- わたし達は、身近だったり好きなモノや人のほうがイメージしやすい
- わたし達は見積もりや数字を見やすくするために単純化しようとする
- わたし達は他人が考えていることを分かっていると思いこんでいる
- わたし達は過去や未来の情報を基に今の方針を打ち出そうとする
- 行動するためには、わたし達は自分の影響力に自信を持ったり、していることの重要性を感じる必要がある
- 集中するのに、わたし達は時間がかかるものや関連が薄いものよりも、すぐ解って関連も濃いものを好む
- 何かを成し遂げるのに、わたし達は既に時間や労力を投資したモノを優先的にやり遂げようとする
- 失敗を避けるために、わたし達は集団での自治や地位を保ったり、取り返しがつかない決断は避けようとする
- わたし達はシンプルな選択肢を好み、より複雑だったり曖昧な選択肢よりも完全な選択肢を好む
- わたし達は事後に記憶の一部を改変したり強化したりする
- わたし達は共通ルールのために細部を犠牲にする
- わたし達は出来事やリストをキーになるいくつかの重要な要素まで絞り込む
- わたし達はどのように体験したか?によって違った記憶を形成する
こんな感じでしょうか。認知バイアスは災害時やセンシティブな話題の時など、場合によっては致命的な問題を引き起こしてしまうので是非とも気をつけたいですね。
赤羽(Akabane)
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