赤羽(Akabane)
目次
確証バイアスの恐怖!人は自分に都合が良いデータが集まるとすぐ証拠集めを止めてしまう?
まずは確証バイアスについてザッとおさらいしておきましょう。
自分の意見を裏付ける証拠ばかり集めてしまう「確証バイアス」
確証バイアスとは、自分が信じる説や主張をバックアップする証拠ばかり集めてしまう認知バイアスのこと。
これは科学者や警察など、裏を取ることを生業の一つにしている立場の人間にとっては天敵で、意識していないと公平な証拠集めが出来なくなる恐れもあります。
当サイトでも過去に触れていますので、詳しくは以下をご覧ください。
エビデンスベースドの大敵「確証バイアス」に注意!【心理学・データ分析】我々は確証バイアスのせいで証拠集めやデータ調査を早い段階で止めてしまう?!
ではここから本題へ。最近、改めて確証バイアスの脅威を物語る研究が発表されてしました。
これは2019年にユニバーシティカレッジ・ロンドンが発表した研究(#1)で、人は都合のいいデータが揃ったら証拠集めを早めに切り上げてしまう!という結論になっていました。
この実験は84名を対象に、「ファクトリーゲーム」なるタスクを行ってもらったもので、ゲームの中身はザックリと、スクリーン上にベルトコンベア式に流れていくスマホやTVを眺めながら、
- このベルトコンベア上の製品は携帯電話会社の工場で製造されているものか?それともTV会社の工場内か?
を判断するという流れでした。ジャッジのタイミングは参加者各自で好きに決めて良かった様子。当然、スマホが沢山流れてくれば携帯会社だろうし、逆ならTV会社だろうと考えられますね。
そしてプラスの大事な要素として、参加者らはどちらかの会社に投資をしている設定であることを聞かされます。
でこのゲームには報酬と罰があって、自分が投資した設定になっている方の会社の工場に居ることが分かれば報酬、もう一方の会社工場に居てしまった場合はペナルティを受けます。
でも自分が居る会社は参加者には決められなくて、参加者ができるのは、ただ目の前のベルトコンベアーから流れてくる製品を見て、「これはどちらの会社の工場なのか?」を当てるだけだ、と。
- 参加者Aは携帯会社に投資をした設定
- Aにとっては目の前のベルトコンベアーは「携帯会社」のものである方が都合が良い
- でもAにできるのは目の前のベルトコンベアーを手掛かりに、自分が今どちらの工場に居るのか?を判断することだけ
こうした状況で、各自に好きなだけ考える余地が与えられながらゲームをやってもらったんですね。
するとこの結果、こんなことがわかりました。
- 「自分は今、自分が投資した工場に居る(都合が良い方)」と答えた参加者は実際にそうだったケースより多かった
- 彼らは、「投資していない工場に居る」と答えた場合よりも判断材料にするサンプルが少なかった
つまり、自分にとって都合が良い投資した方の工場に居る!と都合よく判断した人が多くて、その場合彼らは早い段階でベルトコンベアを眺めるの(判断材料集め)を止めてしまった、と。
話がややこしいので例を挙げると、
- 参加者AとBがいる
- Aは携帯会社に投資、BはTV会社に投資した設定
- 目の前のベルトコンベアーから同じペース&割合で携帯が流れてくる
- この場合、Aのほうが早い段階でベルトコンベアを眺める作業を切り上げやすい
こんな感じです。でいい加減に切り上げてしまうからか、結局その判断すら間違っていることが多かったようです。
まとめ
ではどうしてこんなことが起きるんでしょう?最後に研究チームの例えを参照してみると、
- 人は十分な証拠を調べもせずに自分の既に持っている感覚で都合の良い判断をする:天気予報や空の様子も確認せずに「明日はきっといい天気だ」と思う
- 人は自分にとって都合の良い情報を証拠として優先的に集める:雨音が聞こえた時(自分の主張の反証になるもの)よりも、一筋の日光が差した時にそれを証拠として持ち上げて「明日はきっといい天気だ」と確信する
こんな感じです。これは最初におさらいした確証バイアスの効果そのものですね。
赤羽(Akabane)
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#1 Filip Gesiarz, Donal Cahill, Tali Sharot. Evidence accumulation is biased by motivation: A computational account. PLoS Comput Biol 15(6): e1007089.