赤羽(Akabane)
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フェイクニュースの恐怖!人は信じていた情報が間違っていても考えや主張を変えられない?
フェイクニュースは後から「フェイク(偽モノ)」だと分かればあまり問題無さそうですが、実際のところどうなんでしょう?
過去52件の「誤った情報の訂正」に関する研究を精査したメタ分析によると…
この問題について参考になるのが、2017年にイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の教授らが発表したメタ分析(#1)で、過去52件の研究から6878名を対象にしています。
調査のテーマは、「人は最初に信じた情報が間違っていたと分かったら、それをすんなり受け入れられるのか?」といった感じで、大まかには参加者に誤情報を信じさせたうえで後から情報を訂正する流れです。
具体例を覗いてみると、
倉庫の火事
- まず冊子を読ませて、揮発性の材料が倉庫にあることが火事の原因だ。と偽の情報を刷り込ませる
- 実験グループの参加者の半分には後で「その情報は間違っていた」と訂正、もう半分には訂正はナシで進める
- 一旦実験と関係のないタスクを10分行ってもらう
- その後「火事や爆発」に関する問題に答えてもらう(「この爆発の原因は?」「この場合、結局何回火事が起きることになる?」など)
こんな感じ。全体的に政治や社会関連のフェイクニュースを信じ込ませる実験が多くて、倉庫の火事や強盗、交通事故、政治の候補者の献金問題など色々ありました。
でこうした様々な実験を一通りまとめて見たところ、次のようなことが分かりました。
- 最初に誤情報を受け取ったグループは、何も事前情報を受け取らないグループよりもその後の正しい新情報を受け入れるのが難しかった
- 最初の誤情報を信じていて、それを支持する説明や弁解をする人は、特に正しい新情報の受け入れが難しかった
- 単に「間違っていました」と訂正するのでは正しい新情報を信じてもらうには効果が弱かった
なにやら複雑ですが、まず人は最初に正しいと信じた情報が間違っていたと分かっても簡単には乗り換えられない、と。
でこういった心理に働きかけるためには、しっかりと「間違っていました。あれは実は〇〇ということで云々..」と詳細な説明をすべきみたいです。ただこの訂正が誤情報支持派の反論を煽るようなものだと逆効果だった様子。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、今回の分析では未出版の研究も平等に含まれていて、どうやら未出版の研究では効果が高く出る傾向があった様子。
実際に、今回出た効果量は全体的にかなり大きめだったので、これらは正式に掲載された信頼性が高い研究ではもう少し小さくなるかも、と。
以上を踏まえて、研究チームは間違った情報を信じ込んだり、信じ込ませたりしないように、以下のような3つの推奨をしていました。
- 誤った情報を支持する議論をしない・させないこと:誤った情報について掘り下げて議論しすぎると、かえってその情報に固執する傾向が見られたという。政府やメディアなどは間違いを広めてしまった場合、「誤情報の方が正しい!」という議論を想起させるような細かい訂正は避けて単なる訂正文に留めておいたほうがいいかもしれない。
- 情報が浸透する前に、念入りに下調べする時間や、反論の余地を作ること:情報の間違いを真摯に受け止めて、くら替えする気概を持つには、間違った情報が浸透する前に十分に下調べの時間をとったり、反論の余地を作ることが大切。これによって、間違いだと分かった後でも考えの修正が効きやすくなる。
- 情報の誤りを指摘する際は、新しい詳細な訂正情報も共に公表すること(ただしあまり期待はしないほうがいい):これは最初の1つ目と矛盾する感じもするが、情報の間違いは単に「間違ってました」と伝えるより、具体的に「間違ってました。あれは実は〇〇ということで云々…」と新しい事実もセットのほうが良いこともあった。ただ、これが「誤情報の方が〇〇だから正しいんだ!」みたいな議論を煽る内容だと逆効果で、正直どうなるか悩ましいところ。
最初から情報を盲信しないで、しっかり吟味することが大事ですね。全面的に正しい!と鵜呑みにすれば、後々間違いが分かってもなかなかくら替えできないみたいですし…。
赤羽(Akabane)
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「SNSの情報はウソばっかり!」フェイクニュースが蔓延するネット社会の闇参考文献&引用
#1 Chan MS, Jones CR, Hall Jamieson K, Albarracín D. Debunking: A Meta-Analysis of the Psychological Efficacy of Messages Countering Misinformation. Psychol Sci. 2017 Nov;28(11):1531-1546.