成功の重要ポイント「限界的練習」は世間が言うほどスキル上達に関係がない件。

2019年4月5日ブログ運営者が考察してみた。, 人生を上手に生き抜くテクニック, 教育&勉強法

一万時間で誰でもその道で成功!「一万時間の法則」は幻

当ブログでは、過去に「一万時間の法則」について取り上げたことがありました。これは簡単に言うと「誰でも一万時間練習すれば達人になれるぞ!」という主張なんですが、まずこの法則の発端をザっとおさらい。

1.アンダース・エリクソン教授らが、バイオリン科のトップクラスのバイオリニスト程長時間練習を積んでいて、彼らは20歳になるまでに約一万時間を練習に費やしていたことを研究で発表。
2.ジャーナリストのマルコム・グラッドウェル氏がこの結果を都合よく解釈して『天才!成功する人々の法則』という本を出版、その中で一万時間の法則を力説。これが大ブームを巻き起こす。
3.しかしエリクソン教授は2016年の著書でこれに真っ向から反論。「一万時間の法則は幻だ」

つまり研究結果を都合よく解釈した人が「一万時間の法則」を作り上げて、それがどんどんひとり歩きしてしまったんですね。その上で前回はエリクソン氏の2016年の著書についてザックリまとめております。

 

「エリクソン教授が言う「限界的練習」もそんなに重要じゃないよ」とのメタ分析が

一万時間の法則 エリクソン 本当 重要

といったところで、今回はこの「一万時間の法則」にまつわるもう一歩踏み込んだお話をば。この法則自体はもう否定されているんですが、エリクソン教授はその上で「限界的練習」こそが成功に大事な要素だ!と主張しています。

限界的練習
  • はっきりと定義された具体的目標がある
  • 集中しておこなう
  • フィードバックが不可欠
  • コンフォートゾーンから飛びだす

つまり闇雲な努力じゃなくて、きちんと目標をもって集中して練習をすること、そして毎回「キツイなぁ..」の一歩先を行くことが大事!だと仰っているんですね。

ここまではかなり納得させられる話ですが、しかし2014年にプリンストン大学の教授らが発表したメタ分析(#1)によると、限界的練習も言うほどパフォーマンスの個人差に関係してなかったぞ!との結論が出たようです。ザックリ内容を並べてみますと、
 

  • 限界的練習に関する88件の研究を集めて精査
  • 参加者総数は11135名
  • ジャンルは音楽、ゲーム、スポーツ、専門職、教育
  • 細かい研究手法*は以下の通り
*研究手法
 

こんな様子。この研究ではずばり「限界的練習はパフォーマンスの個人差をどのくらい説明できるのか?」を調べてくれています。結果はこうなりました。

 

  • 限界的練習だけではパフォーマンスの個人差の3割以下しか説明できなかった
(#1)より引用。
ジャンル別:限界的練習がパフォーマンスの個人差にどのくらい重要か
  • ゲーム..26%
  • 音楽..21%
  • スポーツ..18%
  • 教育..4%
  • 専門職..1%未満
 

なんと限界的練習がパフォーマンスの個人差に影響しているのは全体のたったの3割以下。残り7割強は他の要素じゃないと説明がつかないとの結果になりました。ちなみにもっと詳しく見ていきますと、以下の要素たちは今回の結果にあまり関係がなかった様子。
 

  • チームスポーツかどうか
  • 限界的練習に一人で取り組むか、指導者にみてもらうか

 
つまり個人競技だろうが、練習を誰かに見てもらおうが、その部分は関係がなかったんですね。研究の結びに研究チームはこうまとめていました。

過去20年にわたり、エリクソンは論じていた..「究極的な個人のパフォーマンスの差には、過去と現時点での練習量の差が大きく関係する」と。エリクソンとモクスレーは繰り返し主張していた..「限界的練習のコンセプトは初心者からエキスパートまで幅広く応用できる」と。
しかし今回のメタ分析ではこうした強い主張に賛同する結果は出なかった。ジャンルを問わず、限界的練習だけではパフォーマンス差の大部分を説明しきれないのだ。確かに個人のパフォーマンスの差として重要な要素ではあるのだが、それはエリクソンらが言うほどのものではない。

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赤羽(Akabane)

結論、どんな競技、ジャンルでも意識的な努力だけではどうにもならない部分はありそう。そこには遺伝の問題が絡んでくるんでしょうが、実際どのくらい影響があるのか?は分かりません。ただし、今回の結果は「練習なんて無駄だ!」と言っているわけではないので、その点はご注意ください。

参考文献&引用

#1 Macnamara BN, Hambrick DZ, Oswald FL,”Deliberate practice and performance in music, games, sports, education, and professions: a meta-analysis.“,Psychol Sci. 2014 Aug;25(8):1608-18.