系統的レビュー: 子どもの通学用カバンは腰痛の原因になるのか?

子どもの通学用カバンは腰痛の原因になるのか?

赤羽(Akabane)

今回は「子どもの通学用カバンと腰痛の関係」についてのお話です。

子どもの通学用カバンは腰痛の原因になるのか?

重いカバンは腰痛の原因になると言われますが、子どもたちが通学用に背負っているカバンなどはどうなんでしょう?この記事ではそんな素朴な疑問にアプローチしていきましょう。

通学用カバンは子どもの腰痛と関係はあるのか?過去のデータをまとめた結果…

この疑問について、2018年にシドニー大学が発表した系統的レビュー(#1)によると、子どもの通学用カバンなどは腰痛の原因にはならない!とのことでした。

この系統的レビューは69件の研究から72,627名の子供達を対象に、普段使っている通学用カバンの形状や重さ、サイズ、持ち方、持続時間などによって子供たちの腰痛リスクにどんな影響があるのか?を調査したものです。

では早速ですが、この分析からわかったことを見てみましょう。

結果
  • 通学用カバンの形状、重さ、サイズは全体的に子どもの腰痛リスクと相関は見られなかった
  • 一部の研究で、通学用カバンの重さや持ち運び時間と腰痛の関連を報告するものもあったが、ほんの数件のみだった

まとめると、通学用カバンの形状や重さ、サイズなどは子供たちの腰痛リスクに影響がなかった模様。

しかも腰痛のデータは持続期間に関係なく集められていたので、慢性的なものだけはなく、短期間で急に腰が痛むように…みたいなありそうなケースとも関係が無かったということになります。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、ザッと以下の点は押さえておくと良さそうです。

注意
  • 因果関係は特定できない:含まれた研究はほとんどが疫学調査(過去のデータから相関を見つけるデザイン)なので、腰痛と通学用カバンとの間の因果関係を証明するものではない
  • 含まれた研究の大半にバイアスがかかっている可能性が高い:データの集め方や研究のデザインも研究者や参加者の主観が混じるので、データとしての精度は低め
  • 研究の中身にばらつきが大きい:通学用カバンの重さ、持ち運び時間、形状、サイズなどが研究間でバラバラで、ひとつのまとまったデータとしては精度に欠ける

一言でまとめると、系統的レビューと言えどデータの質はまだまだ低いということですね。とはいえこの手の研究手法であれば致し方ありませんが..。

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 子どもの通学用カバンは総じて腰痛の原因にはならなそうだ
  • カバンの重さ、サイズ、形状、持ち方、持続時間でそれぞれ見ても、腰痛との関わりを報告する研究は少なかった
  • ただデータとしての精度は高くないので、細かく条件を見ていくとどうなるか?は今後要検証

こんな感じでしょうか。ひとまずはランドセルやリュックなど、腰痛予防のために通学用のカバンにこだわる必要はなさそうです。

赤羽(Akabane)

個人的には両肩で背負えるタイプのリュックサックなどが好きですね。片側の肩だけで掛けていると両肩のバランスがおかしくなるので..。

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参考文献&引用

#1 Yamato TP, Maher CG, Traeger AC, et al. Do schoolbags cause back pain in children and adolescents? A systematic review. British Journal of Sports Medicine 2018;52:1241-1245.