赤羽(Akabane)
目次
コレステロール値や中性脂肪が気になるあなたへ「脂質改善に最強の油」とは?
早速ですが、この件について参考になる研究を覗いてみましょう。
体の脂質改善に最強な油は?過去研究を総まとめした結果..
これは2018年にドイツ人間栄養研究所が発表したメタ分析(#1)で、54件のRCTから2065名を対象に、【体内の脂質改善に最強な油はどれか?】問題を総まとめしたものです。
まず、今回のラインナップはこんな感じでした。
エントリーした13の油
- サフラワー油(紅花油)
- ひまわり油
- 菜種油
- ヘンプオイル
- 亜麻仁油
- コーン油
- オリーブオイル
- 大豆油
- パーム油
- ココナッツオイル
- ラード
- 牛脂
- バター
割と普段使われる油は網羅されていますね。で各研究での効果の調べ方はザっと以下のようになっていました。
- 実験では上のラインナップから2種類の油を比較していて、【一日の食事摂取カロリーの10%をその油に置き換えたら効果にどのくらい差が出るのか?】を調べている
- 測定対象は「総コレステロール」「善玉コレ(HDL)」「悪玉コレ(LDL)」「中性脂肪」
- 測定した数値全体の改善幅から、油をランクづけしている
そして、こうした実験を3~27週間の期間で行ったところ、次のような結果になりました。
*バターと比べた改善幅 | 総コレ | 善玉コレ | 悪玉コレ | 中性脂肪 |
サフラワー油(紅花油) | −0.49 (−0.71, −0.27) | −0.05 (−0.10, 0.01) | −0.42 (−0.65, −0.18) | −0.05 (−0.12, 0.01) |
ひまわり油 | −0.37 (−0.49, −0.25) | 0.01 (−0.02, 0.04) | −0.34 (−0.46, −0.23) | −0.04 (−0.08, −0.01) |
菜種油 | −0.43 (−0.59, −0.27) | 0.01 (−0.03, 0.05) | −0.36 (−0.52, −0.21) | −0.04 (−0.09, 0.01) |
ヘンプオイル | −0.35 (−0.80, 0.09) | 0.03 (−0.18, 0.24) | −0.40 (−0.88, 0.08) | −0.06 (−0.24, 0.11) |
亜麻仁油 | −0.33 (−0.58, −0.08) | 0.01 (−0.05, 0.06) | −0.37 (−0.60, −0.13) | −0.04 (−0.13, 0.05) |
コーン油 | −0.37 (−0.49, −0.25) | −0.01 (−0.03, 0.02) | −0.33 (−0.45, −0.21) | −0.05 (−0.10, 0.00) |
オリーブオイル | −0.28 (−0.38, −0.17) | 0.01 (−0.01, 0.04) | −0.25 (−0.36, −0.15) | −0.02 (−0.04, 0.01) |
大豆油 | −0.33 (−0.44, −0.22) | −0.02 (−0.05, 0.00) | −0.29 (−0.39, −0.18) | −0.06 (−0.08, −0.03) |
パーム油 | −0.25 (−0.36, −0.13) | 0.03 (0.00, 0.06) | −0.24 (−0.36, −0.12) | −0.06 (−0.10, −0.01) |
ココナッツオイル | −0.18 (−0.34, −0.02) | 0.04 (0.01, 0.08) | −0.23 (−0.40, −0.07) | −0.01 (−0.05, 0.03) |
ラード | −0.08 (−0.31, 0.15) | 0.01 (−0.03, 0.06) | −0.08 (−0.29, 0.13) | −0.04 (−0.13, 0.06) |
牛脂 | −0.26 (−0.46, −0.05) | 0.03 (−0.02, 0.08) | −0.28 (−0.50, −0.06) | 0.03 (−0.03, 0.09) |
バター | – | – | – | – |
太字は「統計的に有意な効果があった」ことを表していて、このデータから言えることをまとめると、こんな感じになりましょう。
- 全体で最もランクが高かったのは「サフラワー油(紅花油)」
- バターに比べると、割とどの油でも「TC」「LDL」を改善する効果がある
- 「HDL」「中性脂肪」の改善効果はどれもあまりパッとしない
全体を見渡した印象は、「どれも似たり寄ったりだなぁ」でした。TCやLDL改善ではサフラワー油が頭一つ飛びぬけていますが、この辺りの差には含まれた研究の数も影響しているんじゃなかろうか?と思われます。
例を挙げると、オリーブオイルを調べた研究はダントツで多かったんですが、数値を見てみると改善幅がやや控えめですね。一方でサフラワー油はかなり少ない部類で、改善幅はデカいです。こうした傾向が全体に見られます。
注意点・まとめ
また注意点として、今回の結果はあくまで脂質改善をターゲットにしていて、それぞれの油の酸化しやすさは考慮に入れていない点は把握しておいた方がよろしいかと。
例えばオメガ3やオメガ6といった「多価不飽和脂肪酸」は、その構造が不安定で酸化しやすいことが分かっています。つまりこれらが豊富な油は加熱に弱くて、料理油にはめっぽう向いていないということ。
亜麻仁油は「かける油」として売り出されていたり、フタが密閉しやすいタイプがありますが、これには加熱や空気に触れるのを避けて酸化を防ぐ意味合いがあったんですね。
ということで最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 一応脂質改善に最強のオイルは「サフラワー油」だった
- ただ割とどの油も、バターに比べると総コレ、悪玉コレを減らす効果が同じ位ありそう
- 善玉コレ、中性脂肪への効果は全体的にパッとしなかった
- 結論、油選びに重要なのはどちらかというと「酸化しにくさ」かも
こんな感じでしょうか。全般的に種や豆由来の油はオメガ6が多くて調理油に向かないのと、使うならやっぱりオリーブオイルということになりましょう。ココナッツオイルや、今回は含まれていませんがMCTオイルなんかも良いかもしれません。
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Schwingshackl L, Bogensberger B, Benčič A, et al. Effects of oils and solid fats on blood lipids: a systematic review and network meta-analysis. J Lipid Res. 2018 Sep;59(9):1771-1782.