他人の気持ちを少しでも理解&共感したいならフィクションを読むべし!

他人の気持ちを少しでも理解&共感したいならフィクションを読むべし!

赤羽(Akabane)

今回は「フィクションを読むと他人への共感力が高まる!」というお話です。

他人の気持ちを少しでも理解&共感したいならフィクションを読むべし!

フィクション小説とか読むと、他人の気持ちが理解しやすくなったり、共感能力が高まるっていうけど、ホントなのかな…?

確かに、フィクションをよく読む人ほど共感能力が高いといった研究結果は過去に報告されていますが、これらはあくまで相関関係を表したものでした。つまり、単に共感能力が高い人がフィクションをよく読んでいただけでは?という可能性を拭い切れていなかったんですね。

そこでこの記事では、上記テーマに関する信頼性高めな新しいデータを見ていきます。

フィクションを読むと社会的認知機能が高まる!というメタ分析結果

2018年にハーバードメディカルスクールとプリンストン大学が発表したメタ分析(#1)によると、フィクションを読むことで他人の気持ちを理解したり共感したりする能力が僅かながら高まることが分かりました。

この研究では、14件の過去研究をまとめて、フィクションを読むとどのくらい社会的な認知機能が高まるのか?という点を検証していました。

ちなみに、社会的認知機能というのは具体的に以下のような機能のことを指します。

  • 心の理論(Theory of Mind)…他者の視点に立って気持ちや心を理解したり、共感したりするメンタリティ
  • 体験のシェア…他者の体験や気持ちに寄り添って共感したり、同じ気持ちになれるメンタリティ
  • 社会的振る舞い…好社会的な行いをするメンタリティ

キーワードは「他者」「共感」「理解」あたりでしょうか。ちなみに、今回分析に含まれる研究の条件は、【フィクションを読むグループ vs. ノンフィクションを読むグループ or 何も読まないグループ】という構図で効果を比較しているようでした。

そして上記の分析結果をまとめると、こんな感じになりました。

結果
  • フィクションを読んだグループは比較のグループよりも小程度社会的認知機能が改善していた (g 􏰀=.15, 95% CI [.02, .29], p =􏰀 .029, I2 = 71%)
  • ノンフィクションと比べた場合では【g = .13, 95% CI [-.04, .31]】、何も読まない時と比べた場合では【g = .21, 95% CI [.09, .32]】となり、比較グループによって大きな差はなかった
  • その他、年齢や性別、社会的認知機能の調査方法(セルフレポートか実践テストか)といった細かい違いも、特に結果に影響を及ぼさなかった

まず、フィクションを読む方が何も読まなかったりノンフィクションを読んだりするよりも、僅かですが社会認知機能全般にイイ!ということが分かりました。しかも、こうした結果は、未出版の研究を含めて分析しても変わらなかったようで、出版バイアスの可能性も無さそうでした。
*出版バイアス…研究者らにとって都合の良い結果が出た研究ばかりが発表されてしまうこと

また、社会的認知機能のカテゴリ別に見たところ、こちらも効果に大きな差は見当たらなかった様子。つまり、フィクションを読んで得られる社会的認知機能向上効果は全般的である、と。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、ざっと以下の点は押さえておくと良さそうです。

注意
  • 結果のバラツキは大きい: 含まれた実験ごとというよりは、実験内での参加者ごとに効果がバラついているようだ
  • 効果は短期的である: 今回含まれた実験のほとんどが、短編のストーリーを一度読んだ後の効果を検証しており、長期的な効果は分からない
  • 具体的なメカニズムは分からない: 仮説として、フィクション小説では登場人物の心情にたくさん触れることができ、何度もリアルな対人関係を想定したシミュレーションができるからだ!という考えはあるが、この辺の直接的な検証はできていない

唯一、長編のストーリーを一冊丸々読むように指示をした実験では、特に高い効果があったという事実もありますし、長期的にフィクションを読み続ければもう少し高い効果が出そうな感じはしますね。

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • フィクションを読むと社会的認知機能を高めるのに効果がありそうだ
  • 具体的には、他人の視点に立って物事を考えたり、他人の気持ちや心を汲み取ったり、理解・共感する能力を伸ばすのに役立ちそうだ
  • ただし、こうした効果は短編ストーリーを一度読んだきりの短期的なものなので、長期的に読み続けた時の効果がどうなるのか?はわからない

赤羽(Akabane)

というわけで、対人関係で他人との意思疎通に困ったら、ひとまずフィクションを読んでみると良さそうです。私も最近では、明治〜昭和期の純文学にハマっていまして、夏目漱石や太宰治の作品を中心に読み耽っています。

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参考文献&引用

#1 Dodell-Feder, D., & Tamir, D. I. (2018). Fiction reading has a small positive impact on social cognition: A meta-analysis. Journal of Experimental Psychology: General, 147(11), 1713–1727. https://doi.org/10.1037/xge0000395