短編小説を読むと曖昧さ・不確実性への耐性がつくかもしれない

短編ストーリーを読むと曖昧さ・不確実性への耐性がつくかもしれない

赤羽(Akabane)

今回は「不確実性にヤキモキするなら短編小説を読むべし!」というお話です。

短編小説を読むと曖昧さ・不確実性への耐性がつくかもしれない

ポイント
  • 短編小説を読むだけで不確実性にヤキモキする気持ちが薄れるかもしれない
  • 今回の研究では、同じくらいのボリューム&難易度の短編小説とエッセイを読ませて、直後の「認知的完結欲求」度を比べたところ、前者で落ち着く傾向が見られた
  • 長期的な効果は分からないが、答えや結論がハッキリせずに落ち着かないと感じる時は短編小説を読んでみるといいかもしれない

短編小説を読むだけで曖昧さを嫌う「認知的完結欲求」度が落ち着く?

2013年にトロント大学が発表した研究(#1)によると、短編小説はエッセイを読むよりも「認知的完結欲求」を減らしてくれる!ということがわかったみたい。

認知的完結欲求とは、不確実性や曖昧な状況を嫌う性質のことで、何にでもハッキリした結論や答えを欲しがる人は、この性質が強いと言えましょう。

そしてこの研究では、トロント大学に在籍する100名の学生(18〜53歳)を集めて、まず彼らを以下の2つのグループに分けました。

  • エッセイグループ: 8つのエッセイの中から1つを読む(例: ヘンリーバーグソンの『なぜ私たちは笑うのか?』)
  • ショートストーリーグループ: 8つの短編小説の中から1つを読む(例: キャサリンブラッシュの『ナイトクラブ』)

*一冊は6000語前後で、両者で読む本の難易度などは調節された

そして実験前後で、読んだ本に関する感想や理解度などのアンケート調査を行なって、その中に「認知的完結欲求」に関する診断テストを紛れ込ませて、グループ間でどんな違いが見られるのか?を検証したようです。至ってシンプルな実験ですね。

すると結果は、以下のようになりました。

結果
  • エッセイよりも、短編小説を読んだグループの方が、直後の認知的完結欲求度が低くなっていた
  • こうした効果は、参加者の本への興味関心、本の芸術的側面とは関係がなかった
  • 認知的完結欲求の中でも、特に「物事に秩序を求める傾向」と「曖昧さを嫌う傾向」が低下していた

どうやら、エッセイよりも短編小説を読んだ後の方が認知的完結欲求のスコアが落ち着く傾向にあったようですね。

また詳しくみると、普段からノンフィクションをどれだけ読むか?という点で参加者を分類したところ、よく読む人もあまり読まない人も最初の認知的完結欲求に差は見られなかったとのこと。つまり、今回の結果は、より一層実験によるものである可能性が高い、と。

注意点・まとめ

ただし注意点として、今回の結果は一度きりの短期的なモノなので、長期的な効果については今後の追試が必要ですね。また、参加者の大半が若い学生だったので、他の年齢層にどこまで一般化できるかも気になるところです。

では以上を踏まえて、最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 短編小説を読むだけで不確実性にヤキモキする気持ちが薄れるかもしれない
  • 今回の研究では、同じくらいのボリューム&難易度の短編小説とエッセイを読ませて、直後の「認知的完結欲求」度を比べたところ、前者で落ち着く傾向が見られた
  • 長期的な効果は分からないが、答えや結論がハッキリせずに落ち着かないと感じる時は短編小説を読んでみるといいかもしれない

赤羽(Akabane)

自分の認知的完結欲求がどのくらいなのか?気になる方は過去に診断ツールを紹介していますので、こちらも是非。

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参考文献&引用

#1 Maja Djikic, Keith Oatley & Mihnea C. Moldoveanu (2013) Opening the Closed Mind: The Effect of Exposure to Literature on the Need for Closure, Creativity Research Journal, 25:2, 149-154, DOI: 10.1080/10400419.2013.783735