赤羽(Akabane)
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嫌なこともゲームみたいに楽しくする「ゲーミフィケーション」は運動の習慣化に効果があるのか?
ゲーミフィケーション(Gamification)とは、文字通り「ゲーム化すること」で、勉強や運動の習慣化、タバコなどなかなか止められない悪習慣の根絶など、骨の折れる作業も楽しくゲームっぽく進めることで楽しく長続きさせよう!という考え方です。
そして今では、このゲーミフィケーションの概念を取り入れた運動習慣化アプリはごまんとあります。果たしてこうしたやり方には本当に効果があるのでしょうか?
ゲーミフィケーションの運動習慣化効果は種類によっても違う!という実験
この問題について参考になるのが、2019年にペンシルバニア大学が発表したRCT(#1)で、602名の太り気味/肥満な参加者を集めて、ゲーミフィケーションの長期的な効果について実験を行っていました。
まずこの実験では、彼らを次の4つのグループに分けました。
- 競争ゲーミフィケーション:このグループ内で更に3つグループに分かれて、週ごとに他の参加者のポイントやレベルのスコアボードが送られてくる
- 協力ゲーミフィケーション:このグループ内で更に3つグループに分かれて、毎日各グループから代表がランダムに選ばれて、その人の目標達成度に応じてグループにポイントが与えられる
- サポートゲーミフィケーション:参加者の家族や友人に週ごとの進捗を見てもらって、サポートをもらう
- 比較グループ:毎日の歩数の目標を決めて、それに向かってウェアラブルデバイスで計測
ゲーミフィケーションのグループでは、歩数の目標設定にプラスしてゲームに有りがちなポイントやレベル制度が設けられました。ポイントはその日の歩数目標をどのくらい達成できたか?でゲットできて、達成できなかったら10ポイントマイナス!みたいな感じでしたね。でこのポイントに応じて参加者はシルバーメダルからゴールド、プラチナ!みたいにレベルアップが出来るようになっていました。
こうした実験を各グループで36週間行ったんですが、うち24週が実験期間、残り12週が終わった後の追跡期間でした。つまり、追跡期間ではゲーミフィケーションがなくなるので、そうなった後もモチベーションは続くのか?を見ているんですね。
ではこの結果を見ていきましょう。
- 全体的にゲーミフィケーションのグループは比較グループより実験前後の平均歩数が有意に増えていた
- 実験期間中ではゲーミフィケーションのグループ間で有意な差は見られなかった
- しかし追跡期間を見ると、競争ゲーミフィケーションのみが比較グループと比べて有意に歩数を増やしていた
まとめると、ゲーミフィケーションには全体的に運動習慣を定着させる効果が見込めそうです。もっと言えば、種類別に見ると他人と競い合うタイプが最も長続きするみたい。
とはいえ他のゲーミフィケーション研究(#2)では、家族のサポートで有意に運動習慣化効果が見られた!という報告も上がっているので、この辺りはサポート・競争・協力する周りのメンバーとの関係値によっても結果が変わってくると予想されます。
注意点・まとめ
今回の研究はこのテーマでは最長&質も高い内容になっています。が対象になったのはアメリカのコンサル会社の社員のみなので、どこまで一般化できる内容なのかは分かりません。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 気がのらないコトや嫌なコトも楽しく習慣化するライフハック「ゲーミフィケーション」
- 毎日の運動の習慣化にも効果がありそうだ
- 実験が終わった後も習慣が長続きしたのは、他人と競わせたグループだった
こんな感じでしょうか。今回の結果を見ると、どうやら他人と競う系のゲーミフィケーションアプリがよさげですね。
赤羽(Akabane)
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#1 Patel MS, Small DS, Harrison JD. Effectiveness of Behaviorally Designed Gamification Interventions With Social Incentives for Increasing Physical Activity Among Overweight and Obese Adults Across the United States: The STEP UP Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2019 Sep 9:1-9.
#2 Patel MS, Benjamin EJ, Volpp KG, et al. Effect of a Game-Based Intervention Designed to Enhance Social Incentives to Increase Physical Activity Among Families: The BE FIT Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2017 Nov 1;177(11):1586-1593.