赤羽(Akabane)
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交渉・説得には心よりもまず相手の胃袋をつかめ!「胃外交」にみる食事で意思決定が変わる5つの仕組み
政治と食は一見関係ないように見えて、実は密接に関係しています。日本ではあまり浸透していないようですが、「Gastrodiplomacy(胃外交)」なる言葉もある位で、交渉や会議でもよく会食の場がセッティングされることがありますね。
これには理由があって、食事には交渉を有利に進める絶大な効果があるからです。では一体どんなメリット、どんな仕組みで我々の対人関係を動かすんでしょう?これについて、まとめ的な研究を見ていきましょう。
「胃外交」にみる!食事で人の意思決定が変わる5つの仕組みとは?
これは2016年にオックスフォード大学が発表したレビュー研究(#1)で、「胃外交」についてまとめています。具体的には、【食事は説得のツールとして使えるのか?もしそうなら、意思決定に対してどんな仕組みで影響するのか?】をテーマにしていました。
いきなり一つ結論ですが、食事は説得のツールや人と親密度を深めるのに使えそうです。
ではどんな仕組みで食事は我々の意思決定に影響を及ぼすんでしょうか?この部分を大きく5つに分けて見ていきましょう。
1. 食事の内容によって生理学的に気分が変わる
例えば研究内では「トリプトファン」が例に挙がっていて、これは気分の浮き沈みに関係している「セロトニン」という神経伝達物質になる前の物質です。
で交渉や外交関係を優位に進めるには、このトリプトファンが豊富な食事を勧めるのが良い!とされています。実際に、トリプトファンリッチな食べ物で、論争好きな性格の人の協調性が高まったり、社会的な感覚が高まったという研究(#2)も幾つか報告されています。
卵、チーズ、パイナップル、豆腐、エビ、サーモン、七面鳥、ナッツ・種類辺りの食事は、相手の気分を良くしてくれるかもしれません。
2. 「噛むこと」はセロトニン分泌を高めて気分を善くする
次に、食事で避けて通れない「噛むこと(咀嚼)」も我々の気分を調整することが分かっています。
例えば2005年の研究(#3)では、ガムをリズミカルに噛み続けることでその後のセロトニン分泌が30分近く盛んになったという報告があります。ガムを噛むとリラックスできるというのは、この辺りも実は関係しているんですね。
3. 食事をするとエンドルフィンが分泌される
また食事自体が、「エンドルフィン」という快楽物質を盛んに分泌させることがあるということもわかっています。
例えば2017年の研究(#4)では、①ピザか②栄養ドリンクか、③一晩中空腹で過ごした場合の朝や昼に脳をスキャンしたところ、食事をした場合にエンドルフィンの分泌が盛んだったようです。
ただ、何故か栄養ドリンクで最も分泌が盛んになったようで、この辺り味覚的な「美味しさ」はあまり関係ないのかな?という印象ですね。
4. 他人との食事でより親密度や繋がりを深めやすくなる
ここからは一転、会食による心理的な影響です。
2017年の研究(#5)では、他人とよく一緒に食事をする人ほど他人に信頼を寄せやすかったり、一緒に食事をした相手に親近感を抱く傾向が報告されています。
つまり、政治外交では相手と親密度を高めたり、普通の人間関係でも仲良くなりたい人に接近するのに、「食事に誘う」というのはナイスな手段かもしれない、ということですね。
5. 食事中の他人の動きをまねることで親密度が高まる
最後は心理学で「ミラーリング」と呼ばれるテクニックです。食事中、相手がワインを飲むのに合わせてこちらも飲む..みたいな感じですね。
一見意味なさそうこのテクニックですが、状況に応じて自分の説得力をあげるのに効果的(#6)なことが分かっています。
ただ、ミラーリングは使い過ぎたり場違いな時にやると相手にバレたりして逆効果です。自然な感じ、自然なシチュエーションで状況に応じて取り入れるくらいがいいんじゃないかな?と思います。(それが難しいんだけれど..)
まとめ
では最後に今回のダイジェストを見ていきましょう。
- 会食で相手の胃袋を掴んで交渉や関係を優位に進める「胃外交」
- 会食による心理面への影響、食事内容による生理学的な影響の両面から効果がある
- 複数を組み合わせて上手く使えば、交渉だけでなく人間関係にも応用できそう
こんな感じでしょうか。テーマは「政治や外交」でしたが、途中でも書いたように普段の人間関係にも応用できますね。仲良くなりたい人は食事に誘ってみるとよろしいかと思います。
最後に今回のまとめが分かりにくかった方へ、ザックリとしてイメージ図を置いておきますね。
赤羽(Akabane)
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#1 Charles Spence. Gastrodiplomacy: Assessing the role of food in decision-making. Flavour, volume 5, Article number: 4 (2016).
#2 aan het Rot M, Moskowitz DS, Pinard G, Young SN (2006). Social behaviour and mood in everyday life: the effects of tryptophan in quarrelsome individuals. Journal of Psychiatry & Neuroscience, 31, 253–262.
#3 Mohri Y, Fumoto M, Sato-Suzuki I, Umino M, Arita H. Prolonged rhythmic gum chewing suppresses nociceptive response via serotonergic descending inhibitory pathway in humans. Pain. 2005 Nov;118(1-2):35-42. Epub 2005 Oct 3.
#4 Jetro J. Tuulari, Lauri Tuominen, Femke E. de Boer, et al. Feeding Releases Endogenous Opioids in Humans. The Journal of Neuroscience, 2017; 37 (34): 8284.
#5 R Dunbar (2017) Breaking Bread: the Functions of Social Eating. Adaptive Human Behavior and Physiology (2017). 1-14.
#6 Bailenson JN1, Yee N. Digital chameleons: automatic assimilation of nonverbal gestures in immersive virtual environments. Psychol Sci. 2005 Oct;16(10):814-9.