38種類のハーブ・スパイスを調べて分かった「うつや不安の解消効果がある6つの生薬」

38種類のハーブ・スパイスを調べて分かった「うつや不安の解消効果がある6つの生薬」

38種類のハーブ・スパイスを調べて分かった「うつや不安の解消効果がある6つの生薬」

今回は「うつや不安の解消効果があるハーブ・スパイス」のお話です。

こういったメンタルに効く!とされる生薬はあちこちにサプリなどで出回っていますが、一体どれがどのくらい効くのか?と混乱してしまいますね。

ここでは、最近出た大規模な研究を参考に、現時点で効果が見込めそうなおススメのハーブ・スパイスを見ていきましょう。

過去100件の関連研究をレビューしてわかった「うつや不安の解消効果がある6つの生薬」

差し当たって参考になるのが、2018年にメモリアルスローンケタリングがんセンターが発表した系統的レビュー(#1)です。

これは1996~2016年に発表された100件ものRCT(質が高い研究手法)を集めて、38種類の植物を対象にハーブの生薬としてのメンタル改善効果を調べたもの。

具体的には、うつや不安への改善効果に絞ってみていて、少なくとも2件以上のRCTで効果が検証されている種類のみが選ばれた様子。

その中で、特に実証実験が多かったのは以下の植物6種類だったようです。

最も実証実験が多かったハーブ
  • サフラン:アヤメ科の多年草「サフランクロッカス」のめしべから抽出したスパイスで、香辛料として使われる。不安やうつの改善効果が多く報告されていて、一般的な抗うつ剤と同等の効果があるとの報告も多数。
  • カヴァ:コショウ科の低木の根っこから抽出したハーブで、不安解消効果の実証例の多さはトップクラス。ただ使用量やサプリの質によっては、肝機能障害の副作用が幾つか報告されている。
  • イチョウ:イチョウ科の裸子植物で、街路樹でよく見かけるあれ。意外にも葉から抽出された成分はハーブとしても使われていて、血流を善くするので有名。不安やうつに効くという報告が幾つか上がっている。
  • ラベンダー:シソ科ラヴァンドラ属の植物から抽出したハーブで、アロマとしてだけでなくハーブとしても鎮静作用を発揮する。
  • ブラフミー(オトメアゼナ):オオバコ科の一種で、ツボ草などが含まれる。アーユルヴェーダの医薬として使われていて、認知機能の改善が多数報告されている。不安の改善に関しては実験によってまちまち。
  • パッションフラワー:トケイソウ科の「チャボトケイソウ」から抽出したハーブで、鎮静作用があって不安に効くハーブとして有名。睡眠の質を改善したり、不安解消の効果も幾つか報告されている。

これらは最低でも6件以上のRCTで検証されていて、なかなかのエビデンスです。

そして一方、以下のラインナップは、研究チームも「うつや不安対策に検討してもいいんじゃないか?」と考えるハーブたちなようです。

研究チームが検討してもいいんじゃないか?と考えるハーブ
  • ブラックコホシュ:キンポウゲ科の植物で、古くから女性の更年期症状対策に使われてきたハーブ。一般的な抗うつ剤と比べると効果が薄かったという報告もあるが、不安やうつを改善したという報告もある。
  • カモミール:キク科の一年草で、「カミツレ」とも呼ばれる。鎮静作用が有名で、不安障害を抱える患者らにも抗不安作用を発揮したり、割と長期にわたって効果が持続するとの報告もある。
  • チェストベリー(セイヨウニンジンボク):シソ科の植物で、月経前症候群への効果が認められているハーブ。一般的な抗うつ剤と比べても引けを取らないという報告もあるが、件数は少なめ。
  • ラベンダー:シソ科ラヴァンドラ属の植物から抽出したハーブで、アロマとしてだけでなくハーブとしても鎮静作用を発揮する。
  • パッションフラワー:トケイソウ科の「チャボトケイソウ」から抽出したハーブで、鎮静作用があって不安に効くハーブとして有名。睡眠の質を改善したり、不安解消の効果も幾つか報告されている。
  • サフラン:アヤメ科の多年草「サフランクロッカス」のめしべから抽出したスパイスで、香辛料として使われる。不安やうつの改善効果が多く報告されていて、一般的な抗うつ剤と同等の効果があるとの報告も多数。

基準は、①副作用が最小限であること②うつや不安への効果もしっかり確認されているもの、だったみたいで、特に実証実験も多い「サフラン」「ラベンダー」「パッションフラワー」辺りは有用ではないかと思います。

個人的には、「ブラックコホシュ」辺りは微妙かな?と思いました。というのも、基本は更年期女性を対象にしたものが多いうえに結果もバラつきがあったからです。女性の閉経後の更年期対策としては優秀そうですが..。

注意点・まとめ

ただし今回の内容には注意点もあって、

注意
  • 企業やサプリ製造主から出資を受けている研究が結構あった:そのスポンサーのサプリを使っているケースもあって、出版バイアスなど、その企業やラボに都合の良いデータだけが出ている可能性がある
  • メカニズムがハッキリ分かっていないハーブもある:安全性の面でも、まだ確信をもってOKサインは出せないものもある(例:パッションフラワーは目立った副作用は報告されていないが、メカニズムがまだよくわかっていない)
  • 実験の期間が短い:中には22~25週間というものも数件あったが、大体は数日~16週間くらいの短期的な効果しか調べられていない

この辺りは押さえておくとよろしいかと思います。実証研究が多い植物もあるものの、研究は短期だし、結果が盛られている可能性があるモノも含まれているから、データの質は軒並み高くないぞ、と。

以上を踏まえて今回の内容をまとめると、

ポイント
  • 最も実証実験が多かったのは「カヴァ」「サフラン」「パッションフラワー」「ラベンダー」「イチョウ」「ブラフミー」
  • 研究チームのお墨付きが出たのは「サフラン」「パッションフラワー」「ラベンダー」「ブラックコホシュ」「カモミール」「チェストベリー」
  • ただしどれも長期での効果や副作用はまだよくわかっていない

こんな感じでしょうか。やはり個人的にも、現時点では「サフラン」「ラベンダー」「パッションフラワー」辺りが比較的安全で効果も見込める部類かなと思います。

赤羽(Akabane)

この手のハーブやスパイスのご使用を検討される場合は、疾患を抱えている方や妊婦さんなどは特に、お医者さんにご相談の上で試してみてください。

パッションフラワー

ラベンダー

サフラン

参考文献&引用

#1 Yeung KS, Hernandez M, Mao JJ, Haviland I, Gubili J. Herbal medicine for depression and anxiety: A systematic review with assessment of potential psycho-oncologic relevance. Phytother Res. 2018 May;32(5):865-891.