赤羽(Akabane)
目次
瞑想中の不思議体験「魔境」が発生しやすくなる5つの条件が判明していた件。
瞑想といえば今では世界的なトレンド。スティーブ・ジョブズをはじめ名だたる企業のCEOらが実践していることでも有名で、心身の健康への効果もかなり報告されてきています。
ただ一方で、前回は「瞑想中に不思議な体験をした!という「魔境体験」の報告が上がってきている(#2)」というお話をしました。中には良い効果を示すものもあったんですが、問題は不安に駆られたり、幻覚を見るといった副作用も少なからず報告されている点。
というわけでこの記事では、魔境が起こりやすい条件を初めて調べてくれた研究を覗いてみましょう。
瞑想中の不思議な体験「魔境」の発生条件が判明?
参考になるのが2019年にユニバーシティ・カレッジ・ロンドン教授らが発表した研究(#3)で、1232名の瞑想経験者(中央値で歴6年、平均44.8歳)を対象にオンライン調査を行ったものです。
アンケートは20分程度のもので、
- 瞑想歴はどのくらい?
- 瞑想の1セッションあたり時間、頻度、種類は?
- 瞑想によって起きた喜ばしくない体験はある?
こういった質問に答えてもらうものだったみたい。他にも、対象者の反芻思考(くよくよ考えるやつ)、セルフコンパッション、マインドフルネス度も測定したようです。
するとアンケートの結果、参加者の25.6%が過去に瞑想による良くない体験をしていたという事実が判明しました。どうやら瞑想経験者の1/4が魔境体験をしていたようですね。
そしてもう少し詳しく見てみると、魔境が起こりやすい/起こりにくい条件が5つ浮上しました。
- 宗教信仰がある瞑想経験者は魔境に陥るリスクが36%低かった
- 女性は魔境に陥るリスクが25%低かった
- 反芻思考度が高いと魔境に陥るリスクが2%高まった
- 解脱系の瞑想のみ実践している場合はそうでない瞑想よりも魔境に陥るリスクが65%高まった
- 瞑想のリトリートに参加したことがあると魔境に陥るリスクが68%高まった
「解脱系」というのは、ヴィパッサナー瞑想のような「観察系」の瞑想のこと。リトリートは施設かどこかに篭って瞑想修行するプログラムみたいなやつですね。ちなみに瞑想の経験年数や時間、頻度は関係なかったようです。
注意点・まとめ
ただし今回の内容には幾つか課題もあって、
- 魔境体験の有無は聞いたが、具体的な中身や深刻度は聞いてない
- 対象者の精神疾患などの既往歴は聞いていない
- アンケートはオンラインで有志から募集している
この辺りは押さえておいた方がよろしいかと。要は今回出た数字は見積もりが甘いので、あくまで大まかな目安として見たほうが良い、と。
ということで以上の結果をまとめると、
- 無信仰だがメリットを狙って瞑想をしている
- 普段からクヨクヨ悩むことが多い気質
- 心身の変化を観察するタイプの瞑想を実践している
- 瞑想プログラムに参加したことがある
これらがひとまず、魔境が発生しやすい条件だと言えそう。いやはや、1つ目なんて特に耳の痛い話です..(笑)
赤羽(Akabane)
関連記事はこちらもどうぞ


参考文献&引用
#1 Pascoe MC, Thompson DR, Jenkins ZM, Ski CF,”Mindfulness mediates the physiological markers of stress: Systematic review and meta-analysis“,J Psychiatr Res. 2017 Dec;95:156-178.
#2 Lindahl JR, Fisher NE, Cooper DJ, Rosen RK, Britton WB,”The varieties of contemplative experience: A mixed-methods study of meditation-related challenges in Western Buddhists“,PLoS One. 2017 May 24;12(5):e0176239.
#3 Marco Schlosser , Terje Sparby, Sebastjan Vörös, Rebecca Jones, Natalie L. Marchant,”Unpleasant meditation-related experiences in regular meditators: Prevalence, predictors, and conceptual considerations“,PLOS ONE,Published: May 9, 2019.