赤羽(Akabane)
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瞑想で起こる超越的な体験「魔境」とは?相次ぐ体験報告で世界的ブームに警鐘!
瞑想といえば近年の世界的なトレンドで、スティーブ・ジョブズをはじめ名だたる企業のCEOたちが実践していたこともあって、瞬く間に世界的な瞑想ブームになりました。
2017年に瞑想の効果を調べたメタ分析(#1)では、瞑想は血圧や心拍数を下げて、自律神経も整えてくれる可能性が高い!という報告が出ていて、個人差は大きいもののやって損はない!というイメージが強くなってきていますね。
熟練者たちも体験する瞑想の副作用「魔境」とは?
ところが最近、そんな瞑想にもデメリットが報告され始めてきました。それは「魔境」とも呼ばれる瞑想中の出来事です。
例えば2017年にブラウン大学が発表した研究(#2)では、瞑想中の不思議な体験を調査してくれていて、瞑想実践者男女60名(平均48.9歳)と瞑想の専門家34名に瞑想のインタビューを行っています。
実践者の85%がアメリカ、8%がヨーロッパ、5%がカナダ、2%がメキシコからで、信仰のルーツはテーラワーダ、チベタン、禅など色々ありました。このように、様々な信仰ルーツを持った瞑想経験者や達人たちに、瞑想中の予期せぬ体験やその時のコンディション、専門家に対しては彼らの生徒や患者さんの瞑想中の出来事を報告してもらったようです。
するとこの研究から、59種類もの魔境体験が報告されました。以下がそれをざっくりまとめたものです。
- 認知..世界観が変わる、妄想思考、メンタルの落ち着き、鮮明なイメージ、実行機能の変化、メタ認知、認知の処理能力アップなど
- 感覚..幻覚、光が見える、体の感覚の変化、敏感、時間と空間がゆがむなど
- 精神..恐れ、不安、パニック、ポジティブ感情、うつ症状、悲しみ、猜疑心、泣き笑い、自殺願望、動揺、共感など
- 肉体..痛み、緊張、緊張のほぐれ、体温の変化、呼吸の変化、頭痛、疲労、消化器官の不調、ふらつきなど
- 意欲..モチベーションの変化、努力、上昇志向、無快感
- 自我..自他の境界の消失、自分の存在が消失など
- 社会..社会性が上昇、仕事への支障など
パッと見てもわかる通り、全部が全部悪いモノではなくて、ポジティブなものもあります。ただ一方でネガティブなモノも少なからず混じっていますね~。また、その他にもこんなことが分かっていました。
- 瞑想実践者たちの3/4が7つの分野全てを体験したことがあると答えた
- 瞑想実践者一人につき平均19~20種類のカテゴリを体験していた
- 瞑想中の困難やネガティブな体験は数日間だけのモノもあれば 10年以上長引くモノもあった
つまり上で挙がった魔境体験は割と普通に起こり得る現象かもしれないということですね。(*今回は瞑想実践者を意図的に選んでるので一般化はできませんが..)
また瞑想の効果には個人差が大きいことも有名な話で、これは魔境体験に対しても同じく言えること。この点については大きく4つの要素が影響していることがわかりまして、
- 個人差:価値観、信仰、性格、トラウマ有無、精神疾患など既往歴
- 瞑想:種類、時間、習熟度(初心~達人)、頻度
- 人間関係:周囲の人間、環境、一緒に瞑想する仲間
- 健康習慣:食事、運動、睡眠
このラインナップ。例えば、瞑想といえば仏教など何がしかの信仰がルーツにあるものですが、最近では科学的な効果を見込んで実践する私のような輩もいるわけです。こうした違い一つとっても、瞑想の効果はかなり違ってくるんですね。
赤羽(Akabane)
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#1 Pascoe MC, Thompson DR, Jenkins ZM, Ski CF,”Mindfulness mediates the physiological markers of stress: Systematic review and meta-analysis“,J Psychiatr Res. 2017 Dec;95:156-178.
#2 Lindahl JR, Fisher NE, Cooper DJ, Rosen RK, Britton WB,”The varieties of contemplative experience: A mixed-methods study of meditation-related challenges in Western Buddhists“,PLoS One. 2017 May 24;12(5):e0176239.