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快眠に欠かせない重要ホルモン「メラトニン」
メラトニンと言えば、睡眠のリズムを調整する非常に大事なホルモンであります。夜が深くなるにつれて徐々に体内で分泌されて、我々を眠りの淵にいざなってくれる役割があるんですが、ブルーライトを夜に沢山浴びすぎると分泌リズムが狂ってしまいます。寝る前のデバイスはなるべく避けたい..。
といったところで、今回はこの睡眠に超大事なホルモン「メラトニン」についてザックリとしたまとめを書いておこうと思う次第であります。まずメラトニンをザックリ説明すると、睡眠リズムを調整するホルモンのこと。よく幸福ホルモンとして「セロトニン」は聞くかと思いますが、これらは対の関係みたくなっていて、一日の中でこんな変化が起きています。
・夜中..セロトニン分泌が徐々に抑えられ、代わりにメラトニン分泌が盛んになる
*メラトニンは眠気を誘う効果があり、日中に日光をよく浴びることで分泌が盛んになる
簡単に言うと、メラトニンは夜中に眠気を感じるのに欠かせない物質なんですね。そしてここ十数年でメラトニンサプリの研究が多数発表されていて、その多方面での健康効果が期待されていたり。これを踏まえて本題に入ります。
過去最大級のメラトニン研究が発表されている
2018年にシンガポールの南洋理工大学が発表したアンブレラレビュー(#1)では、195件もの系統的レビューとナラティブレビューを集めて、メラトニンサプリが何に効いて、何に効かないのか?をまとめてくれています。
早速当研究を分かり易くまとめてみるとこんな感じです。
- 乳がんリスク低下
- 術前&術後の不安、イライラ、痛み
- 入眠効率、睡眠時間や質の改善
- 夜間の高血圧の改善
- 依存症による禁断症状
- 譫妄(せんもう、高熱や老齢による幻覚症状とか)
- 認知症による認知機能低下、気分障害
- うつや気分障害、反芻(繰り返し)思考
- 不妊症患者の妊娠率
見たところ、睡眠の質と量の改善には間違いなく効果がありそうです。意外なところでは乳がんリスクの低下にも効き目が見られましたが、こちらのメカニズムはよくわかっておりません。
一方効果が見られなかったものは結構ニッチなジャンルが多め。メンタルの病や障害にはあまり効き目がなさそうですね。
ここまでみると「メラトニン最強!」で片が付くんですが、他方で一部副作用も確認されていて、
- 頭痛
- 強い眠気
- 下痢
- 喘息や発作(1件のみ)
などが挙げられております。副作用の報告は全体の5%程だったので比較的安心して使える部類かと思います。また研究の結びにこんな注意書きもありました。
メラトニンサプリの使用は特定の人たちには注意が必要だ。それは関節リウマチ、喘息持ち、臓器移植した人らで、メラトニンは免疫システムを刺激するという報告があるからだ。[筆者訳]
つまり免疫システムを刺激してしまうと致命傷になり兼ねない人はメラトニンの追加摂取は避けたほうがいい(#2)ということ。こちらも併せて気を付けておきたいポイントです。
そして最後に、メラトニンはあくまで睡眠リズムを整えるホルモンですので、睡眠薬のような効能はありません。夜勤なんかで生活リズムが崩れていたり、夜スマホを見すぎていたりで起こる睡眠不足にこそ効くという点だけ把握していただければと。
赤羽(Akabane)
参考文献&引用
#1 Posadzki PP, Bajpai R, Kyaw BM, Roberts NJ, Brzezinski A, Christopoulos GI, Divakar U, Bajpai S, Soljak M, Dunleavy G, Jarbrink K, Nang EEK, Soh CK, Car J,”Melatonin and health: an umbrella review of health outcomes and biological mechanisms of action.“,BMC Med. 2018 Feb 5;16(1):18.
#2 Carrillo-Vico A, Guerrero JM, Lardone PJ, Reiter RJ.”A review of the multiple actions of melatonin on the immune system.“,Endocrine. 2005;27(2):189–200.