赤羽(Akabane)
目次
ベンチプレスの重りを振り子状にすると…?という斬新な実験
ベンチプレスで重りの一部を振り子に変えて不安定にするとどうなる?
2020年に西ノルウェー応用科学大学が発表した研究(#1)によると、ベンチプレスの際に両側に振り子状の重りをつけると胸やお腹の筋肉活動が活発になることが分かりました。
この研究では、筋トレ経験者の17名の男性(平均27歳)を対象にベンチプレスをやってもらう実験を行っています。参加者は以下3つのパターンをランダムにこなすよう指示されました。
- フラットベンチでの普通のベンチプレスを1RM70%の強度で行う
- 前後に揺れる5kgの振り子を両側につけてベンチプレス
- 左右に揺れる5kgの振り子を両側につけてベンチプレス
*それぞれ5レップずつこなす。
そしてトレーニング中に、筋電図で胸や肩、腕、お腹の筋肉の活動を測定して、ベンチプレスのバリエーション毎にどんな差が出るのだろうか?という点をチェックしていました。
すると実験の結果、こんなことが分かりました。
- 大胸筋の活動は振り子を重りにした場合で通常よりも有意に高かった(前後・左右で差はなし)
- 外腹斜筋の活動は左右に揺れる振り子を重りにした場合で通常よりも有意に高かった(前後では有意差なし)
- 上腕二頭筋、三頭筋、三角筋前部・後部の活動にはグループ間で有意な差は見られず
まとめると、全体的に振り子状の重りをセットした方が筋肉は活発になるのではないか?という感じです。この結果は予想に反していまして、本来であれば不安定性が増すことで主働筋の力発揮はうまくできなくなると考えられ、今回も大胸筋の活動は減ってしまうと予想されたのです。
考えられるのは、肩関節を安定させるのに他の肩甲骨周りの筋肉がしっかり稼働していた可能性です。前後左右に揺れる振り子に対して、肩関節の安定性を高めるためにいつも以上に肩甲骨周りの筋肉が活動し、結果的に大胸筋を思う存分動かせたのではないか?と。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- サンプルサイズは小さい: 参加者数が少ないので、統計的なパワーは弱くなる
- サンプルは限定的: 若い筋トレ経験者の男性のみを対象としているので、女性や高齢者、初心者でどこまで一般化できるかはわからない
- 強度設定が振り子のパターンで大きかったかもしれない: 参加者の1RM測定は普通のベンチプレスでの結果を振り子状のものにも適用していた。振り子状の重りだと通常よりも重量は挙がらないので、必然的に振り子のパターンの方がキツいトレーニングになった可能性が高い
振り子状の重りをつければかなり不安定な状態になるので、本番セットの重量に振り子を足せば難易度はかなり上がります。ある程度体幹や肩甲骨周りのコアがしっかりしていないとお勧めはできないですね。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- ベンチプレスの際に両側に振り子状の重りをつけると胸やお腹の筋活動が高まるかもしれない
- 実験では、左右・前後に揺れる場合の両方を試したところ、割とどちらでも通常のベンチプレスより高い筋活動が見られた
- 大胸筋の発達はもちろん、肩甲骨周りの筋肉の安定性を高めたい場合や、胸トレにバリエーションが欲しい場合にも試してみるといいかも
赤羽(Akabane)
関連記事はこちらもどうぞ
【インクライン&デクラインベンチ論争】ベンチプレスは部位毎に角度を分ける必要があるのか?ジムでよく見かける「足上げベンチプレス」って胸トレとして効果あるの?大胸筋の筋トレに効果的なメニューを科学的に考察!浮上した4つのトレーニングとは?参考文献&引用
#1 Saeterbakken AH, Solstad TEJ, Stien N, Shaw MP, Pedersen H, Andersen V (2020) Muscle activation with swinging loads in bench press. PLoS ONE 15(9): e0239202. doi:10.1371/journal.pone.0239202